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『ザ・スーサイド・スクワッド』の興行が失敗に終わった理由と、それでもお薦めしたい理由。

8月14日から公開されている『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』。スーパーマンやバットマンなどに登場するヴィラン(悪役)達によって結成された特殊部隊が不可能な任務に挑むアクション映画だ。

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この作品、何度も記事に挙げてる通り、筆者は最高に面白い作品なのだが、実は本作は本国でも日本でも興行成績が振るっていない。実は下記のような記事が挙がってしまうくらい興行的には失敗しているのだ。(Real Sound映画部様の記事参照)

日本では初登場6位、土日2日間の動員は8万1000人、興収1億2800万円という興行成績になっているが、これは2016年版の『スーサイド・スクワッド』と比べる約3分の1という、かなりの落ち込みようとなっている。

全米では初登場1位にはなったものの、比率でいうと前作の約5分の1という日本以上に厳しい結果となっている。

【何故『ザ・スーサイド・スクワッド』の興行は失敗に終わったのか?】

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内容が面白くないということなら、このような低成績も仕方ないと思うが、映画自体の評判はすこぶる良い。Rotten Tomatoesでは91%、日本最大級の映画レビューサイトFilmarksでも4.1という高評価を獲得しており(いずれも9月8日時点)、内容の面白さに関しては全く問題無いのだ。

このことに関して、アメリカの経済雑誌Forbesが「『ザ・スーサイド・スクワッド』の興行が大失敗に終わった10の理由」という興味深い記事を挙げている。

※下記は、上記リンク先の経済誌Forbesがまとめた「『ザ・スーサイド・スクワッド』の興行が大失敗に終わった10の理由」を筆者が翻訳しまとめたものになります。

【経済誌Forbesがまとめた「『ザ・スーサイド・スクワッド』の興行が大失敗に終わった10の理由」】
1:コロナウィルスが活発化したため
2:HBOMaxでの配信が劇場動員を鈍らせた
3:本作の立ち位置がよく伝わらなかった
4:2016年版のスーサイド・スクワッドでファンが付かなかった
5:前作から5年という期間が長過ぎた
6:マーゴット・ロビーのハーレイ・クインは実はそこまで人気がなかった
7:Rレーティングの映画に対して予算を掛け過ぎた
8:客を呼べる映画スターが不在している、
9:世界最大スターのウィル・スミスが出演していない。
10:これまでの結果を踏まえると、売れる要素のない作品となっていた。

上記の理由を踏まえた上で、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』の日本での興業が振るわなかった理由を考えていきたい。

まず、日米共通の理由として、コロナ禍の影響で映画館への動員が落ち込んでいることが挙げられる。特に北米では、タイミング的に新型コロナウイルスのデルタ株の感染が拡大していたことが、より興行の不振に繋がったのだろう。

日本とアメリカで大きく異なる点も指摘しておきたい。アメリカでは公開日と同時にHBOMaxで配信が行われている。上記のデルタ株の感染拡大と併せて、このことも日本よりもアメリカで興行が落ち込んでしまった大きな理由の一つとして挙げられる。

では、日本の興行の不振についてだが、筆者は2016年版の『スーサイド・スクワッド』からのファンが付かなかったことが最も大きな理由だと考えている。

今回の『ザ・スーサイド・スクワッド』は正式には2016年版『スーサイド・スクワッド』の続編ではなくリブート作品。(ただし、これも上手く伝わってるとは言い難い)なので単純な比較はできない。しかし、2016年版から3分の1も興行が落ちてるという事は、それだけ2016年版の観客を取りこぼしているということが分かる。

2016年版の『スーサイド・スクワッド』は世界的にヒットこそしてるが、その評価は著しく低い。(ちなみに下記の画像は2016年版『スーサイド・スクワッド』のRotten Tomatoesの評価である。好きな人には大変申し訳ないが、世間的には「駄作」という印象がついている)

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動員こそは好調だったものの、期待値が大きかった分、内容にガッカリした人達が多かったのかもしれない。何もない状態よりも「前回はつまらなかった」という鑑賞体験が、本作の興行に少なからずとも影響したとは考えられないだろうか。

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次に2016年版には参加していたウィル・スミス=スター俳優が、本作では不在だったということ。これはForbesの記事で指摘されて気が付いたが、今作には誰でも名前くらいは知ってるスター俳優が出演していない。

例えば、日本でもハーレイクインは人気だが、映画好き以外でマーゴット・ロビーの名前まで知ってる人はそう多くないだろう。(マーゴット・ロビー単独主演で大ヒットした作品もない)ネームバリューで宣伝できる役者がいないということは、宣伝にとっては弱みである。

特に日本では、映画の内容よりもキャストで映画を観に行くことを決める人が多い傾向がある。キャストの名前で映画に興味を持つようなライト層を取り込めなかった、これも日本での興行収入が振るわなかった理由の一つとして挙げておきたい。

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さらに、2016年版には多くのサプライズがあった点についても触れておきたい。これは今回の『ザ・スーサイド・スクワッド』の興行が振るわなかった理由というよりは、2016年版『スーサイド・スクワッド』がヒットした理由になるが、2016年版のスーサイド・スクワッドには、ベン・アフレック版のバットマンとジャレット・レト版のジョーカーが初登場するということでも話題になっていた。

2つの作品を比較すると、2021年版は2016年版に比べてワクワクさせるようなサプライズがなかったということが分かる。

他にも、全年齢対象だった2016年版にくらべ、R指定になったことなども理由の一つとして考えられるが、日本の興行ではこうした理由の一つ一つが結びついて、『ザ・スーサイド・スクワッド』の興行の不振に繋がったと考えられるのだ。

【それでも『ザ・スーサイド・スクワッド』をお薦めしたい!】

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ということで、興行的には日米ともに期待外れとなってしまった『ザ・スーサイド・スクワッド』。だが、上記でも述べたように本作は一つの作品として非常に面白い、このまま埋もれてしまうには勿体ない作品だ。

本作を観て感動した自分としては、本作をより多くの人に観て欲しい。なので、『ザ・スーサイド・スクワッド』をお薦めしたい理由を3つにまとめてみた。本作を未鑑賞で興味のある人にこそ読んで欲しい。

お薦めしたい理由①:GOGシリーズファン必見!ジェームズ・ガン監督が手掛けるヒーロー映画

何といっても、本作の一番の売りは、ジェームズ・ガン監督が作品を手掛けているということだろう。ジェームズ・ガンといえば、『スリザー』(2007)、『スーパー!』(2010)などの監督で知られるが、その名を一躍有名にしたのはMARVELの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズ。

MCUのなかでも、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズが好きだという人も多いのではないだろうか。そんなジェームズ・ガンがMARVELと同じ、ヒーロー映画で有名なDCシリーズ作品を手掛けたとなれば期待せざるを得ない。

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『スーパー!』から『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズまで、ジェームズ・ガンは社会からはみだした者達がヒーローに変わる瞬間の映画を撮り続けてきたジェームズ・ガンだが、本作も負け犬達がヒーローに変わる映画となっている、これがつまらない訳がない。

なので、ジェームズ・ガン監督の作品が好きな人はもちろん、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズが好きな人達には是非、本作を観て欲しい。

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お薦めしたい理由②:ダークでPOP、DCがおくる大人向けヒーロー映画

本作はR15指定だけあって子供には到底見せることができない作品となっている。ゴア描写全開の戦闘場面や、不謹慎&どぎつい下ネタもあるだけに、人を選ぶ作品であることは間違いない。

そういう意味で本作はブラックジョークなど含め、洒落を楽しめる大人向けのヒーロー映画といえるだろう。MARVELをはじめ、数多くのヒーロー映画がこれまで作られてきたが、これだけの大規模で、こうしたタイプの作品が作られたことはない。

そして、これこそが本作の強みだと思うのだが、こうしたタイプの作品は、ディズニー傘下のMARVELでは作ることができないという点も本作を強くお勧めしたい点。MARVELとは真逆のタイプのヒーロー映画。MARVEL映画を観ない人や、DC映画を観たことがないという人も本作を試してみてははいかがだろうか。

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お薦めしたい理由③:ド派手なアクションと様々な要素を詰め込んだ物語が素晴らしい

ジェームス・ガン監督のキャリアにおいて、最も規模の大きい撮影となった本作はアクション描写も凄い。冒頭にビーチでの場面があるのだが、その規模からロケかと思っていたら、何とスタジオにビーチを作っていたとのこと(これ、実際観たら凄さが分かると思う)

その他、劇中に登場するジャングルや宮殿もスタジオ内のセットということなのだが、とにかくスケールが凄まじい。

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本作のスケールに呼応するかのように脚本も素晴らしい。ヒーロー映画に戦争映画、怪獣映画と、さまざまな要素が詰め込まれた上に、政治風刺や社会的メッセージまで差し込んで綺麗に仕上げているのだ。まるで一つの映画で沢山の映画を観ているような満足感を味わえること間違いなし。

また、上記の不振の理由で、スター俳優の不在を挙げたが、本作のキャストのハマり具合は見事。スーサイドスクワッドのメンバーはじめ、登場人物は多いが、皆見事にキャラが立ちまくっている。

マーゴット・ロビー演じるハーレイクインはもちろん、ジョン・シナ演じるピースメーカーのサイコパスっぷりや、ラットキャッチャー2を演じたダニエラ・メルヒオールの可愛さ。キングシャークのマスコット的可愛さなど、映画が終わる頃にはきっとお気に入りのキャラが見つかることに違いない。

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ということで、いかがだっただろうか。今回の記事では『ザ・スーサイド・スクワッド』の興行成績の不振の理由と、お薦めの理由を紹介させてもらった。

公開から一か月ほどたってることもあって、上映終了の映画館も多いが、『ザ・スーサイド・スクワッド』を観てない方はぜひ、この機会にチェックしてみて欲しい。

2016年版の『スーサイド・スクワッド』の予告編。本当、2016年版は予告編の作りが最高過ぎる。スナイダーカット版のジャスティスリーグみたいに、デヴィッド・エアー監督カット版のスーサイド・スクワッドを観てみたい…

2021年版の『ザ・スーサイド・スクワッド』の予告編。こうして2つの予告を比べて観てみるのも面白い。

ちなみに下記は、『ザ・スーサイドスクワッド』の魅力についてネタバレ無しで語った記事。興味ある方はこちらもどうぞ。



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