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現代社会にも通ずる映画『メランコリック』感想

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物語概要:東大を卒業したものの、定職に就かず実家でバイト生活をしながら日々を過ごす和彦。
ひょんな事から、近所の銭湯で働く事になるが、その銭湯は深夜になると、殺し屋の処刑場に変わる場所だった。
監督:田中征爾 製作年:2018年 製作国:日本

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去年の東京国際映画祭で拝見してから、あまりの面白さに今年の劇場公開を心待ちにしていた本作、note様主催で試写会が行われると聞いて、参加して参りました。
2回目の鑑賞だった訳だが、やはりこの映画は面白い!!
個人的にこの映画の面白いというポイントを3つに分けてみた。

① 銭湯×殺し屋という誰も観たことのない斬新な組み合わせ
やはりこの舞台設定が魅力的。昼は普通の銭湯という日常に、深夜は処刑場という非日常が潜んでいるという設定が個人的にゾクゾクする。町の銭湯という誰でも使う場所(ちなみに監督曰く、最初は採掘場を想定していたらしい)だからこそ、観客は物語をより身近に感じ、映画の世界へのめり込んでいける。

② 先を読ませない展開、シリアスとギャクがバランス良く織り交ざった脚本が見事。
ポスタービジュアルでは重めの映画と思う人もいるかもしれないが、実はシリアスとコメディがバランス良く織り交ぜているため、いい意味で軽く多くの人に受け容れやすい内容だと思う。
なかなか先が読めない展開になっているし、テンポも良いので、筆者は114分という時間が短く感じたほどだった。(ちなみに監督はアメリカドラマの「ブレイキングバッド」を参考にしたらしいけど、確かに主人公の意図に関係なく悪い事態に巻き込まれてく描写は似ている…)

③ 各国の映画祭で多数の賞を受賞!!第2のカメ止めになるか…!
この映画、去年の東京国際映画祭で監督賞を受賞(日本映画スプラッシュ部門)を受賞した他、ドイツで開催されるニッポンコネクションで観客賞を、ウディネファーイースト映画祭では、「カメラを止めるな」と同じ新人監督賞を受賞するなど、既に世界の映画ファンの間でも話題になっている。

予算300万円という低予算も併せて、「カメラを止めるな」と共通する点を持つ本作。
去年の「カメラを止めるな」、「カランコエの花」に続くミニシアターブームを牽引する作品となるのではないかと、筆者は思う。

以上を踏まえて、この映画が気になってる人は映画好きに限らず映画館で観ることをお薦めしたい。必ず、この夏の話題作の一つとなることは間違いないだろうから。

ちなみにこれから下は、自分が思った「メランコリック」の感想を書いてます。内容に触れるので、未見の方は、映画を観てから読んで頂くようお願いします

【メランコリックは、現代の社会で働く若者に通ずる映画だ!!】

ずばり筆者は、この映画は銭湯で殺しが行われるという奇妙な物語としてだけではなく、主人公和彦が、社会に出て働くという事を学ぶ姿を本質的に描いた映画なのだとも思う。
そう思ったのは、この映画には、会社員あるあるを示す印象的な場面がいくつか見られたからだ。

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① 何も考えずに業務をこなせばいい
劇中で、殺害した死体を前に「何でこの人達は殺されたんだろう」と思い悩む和彦。
そんな和彦を見た松本が言う「何も考えずにただ仕事をこなせばいいんですよ」という台詞。これは、会社で働き始めると、誰もが一度は思う「何で俺はこんな事してるんだろう」という仕事への疑問にも似てると思う。そして、それに対する松本の返答は、会社の先輩のそれに近い。

② 報酬の喜び、頼られているという自信、そして同期への嫉妬。
思いもかけず、死体処理を受け持ってしまった和彦。しかし、その後にもらったその分の報酬に和彦は浮ついている。これは、入社した新入社員が初めてボーナスを貰った時の様子に似ていると思った。また、これを機に和彦は、銭湯のオーナーである東から、この秘密の仕事を任される事になる。
特別な業務を任された事に、和彦は仕事に対しても、今まで以上にやる気を見せる。
これも社会人が経験する事だと思うし、その後の、松本も同じ業務を受け持ってた事を知って、それに嫉妬する和彦の姿も、会社内で同期に対してライバル心を燃やす姿のようにも捉えらえる。

③ 東、田中の「若い子たちがこわい」という台詞
この台詞は、終盤のある場面で田中が、東が言っていたという事で、松本に言う台詞なのだが、この台詞は、今の日本の会社あるあるをよく表しているように感じる。
会社内で、新しいアイデアや働き方などを訴える若い会社員に対し、改革よりも現状維持である事を望む、年配の社員。
これは、日本の会社でも必ずある構図だろうし、実際に会社の年配の社員は、これに近い内容のことを、新入社員に対して密かに思っているのではないだろうかと思ってしまう。

上記のような場面に注目して観たとき、この映画は、和彦がひょんな事から、裏の世界に巻き込まれる物語という部分だけでなく、それまで会社員になった事がなかった和彦が、会社員あるあるを疑似体験していく映画なのではないかと筆者は思った。
なので、この映画は、実は社会人1年目の方に凄く刺さるし、お薦めできる作品なのでないかと思うのだがどうだろう。

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