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運命を変える恋は雨から始まる『レイニー・デイ・ニューヨーク』

7/3に公開された『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』。名匠ウッディ・アレン監督の新作は、雨の日を舞台にあるカップルの一日を描いた作品だ。とある事情により実は本国では公開されていない本作。筆者も7/8(水)に、ヒューマントラストシネマ有楽町の18:40の回で鑑賞してきたぞ(ちなみに席はほぼ満席。レディースデイという事もあって、お客さんの8割は女性だった印象)

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ここでは、作品の魅力を感想を交えて書いていきたい。また、本国で公開されなかった理由、ウッディ・アレン監督の現在についても書いていくので興味ある方は是非読んでいってほしい。

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製作年:2019年 製作国:アメリカ 監督:ウッディ・アレン

あらすじ:大学生のカップル、ギャツビーとアシュレーは、ニューヨークでロマンチックな週末を過ごそうとしていた。そのきっかけとなったのは、アシュレーが学校の課題で有名な映画監督ローランド・ポラードにマンハッタンでインタビューをするチャンスに恵まれたことだった。生粋のニューヨーカーのギャッツビーは、アリゾナ生まれのアシュレーにニューヨークの街を案内するためのさまざまなプランを詰め込む。しかし、その計画は狂い出し、思いもよらないさまざまな出来事が巻き起こってしまう。

【軽妙かつ洒脱、これぞまさにウッディ・アレン節】

これまでに多くの作品を世に出しているウッディ・アレン監督、その作品の大まかな特徴といえば、台詞量の多さ、小粋な会話の応酬、抜けた演出、お洒落なファッションなどが挙げられるだろう。そして、今作はまさにウッディ・アレン監督節全快の作品といえる作品だ。
ギャッツビーを演じたティモシー・シャラメは、恐らくこれまての出演作の中で一番の台詞量だっただろうし、ギャッツビーとセレーナ・ゴメス演じるチャンとの憎まれ口の応酬は、まさにウッディ・アレン!!。

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物語は、大学生カップルのギャッツビーとアシュレーのニューヨークで1日を描いているが、この2人の姿を通じて描かれるのは、監督がこれまでも作品のテーマにしてきた「男と女」の姿。ギャッツビーとアシュレーの姿に男の愚かさ、女の強かさが垣間見える。
さらにギャッツビーにとっては、人生を変えた1日であるのに、それをさらっと描いてしまう感じがウッディ・アレンがお洒落といわれる所以。筆者はウッディ・アレン監督の作品を全て観た訳ではないし、この言い方が適切かは迷うところだが、多作なウッディ・アレン監督の作品の中でも本作は特に当たりの作品だと思う。

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【ティモシー・シャラメ×エル・ファニング×セレーナ・ゴメスという旬の若手俳優勢ぞろい!】

本作を大きな魅力の一つが今の映画界を代表する若手俳優陣が勢揃いしていることだろう。まず主演のティモシー・シャラメは『君の名前で僕を呼んで』(2017年)で世界的に一躍有名になり、ゴールデングローブ賞主演男優賞にもノミネートされる。その後は『レディ・バード』(2017年)や、『HOT SUMMER NIGHTS ホット・サマー・ナイツ』(2019年)など、出演が相次いでいる。(ちなみに『HOT SUMMER~』は感想も挙げているので興味ある方はどうぞ)

個人的に、ここ最近やさぐれた役の多かったティモシーだが、個人的にはこの役のティモシーはかなりハマっていると思う。彼の主演作の中では、1,2位を争うくらい本作の役柄は好きかも。

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次にギャッツビーの恋人のアシュレーを演じるエル・ファニングも映画好きなら一度はスクリーンでお目に掛かったことはあるんではないだろうか。最初こそダコタ・ファニングの妹としても、注目されていたが、ランシス・フォード・コッポラ、ソフィア・コッポラ、ニコラス・ウィンディング・レフンなど数々の有名監督からオファーが相次ぎ、今やひっぱりだこの存在に。ミニシアター作品が多い印象だが、『マレフィセント』シリーズにも出演してるので、知ってる人は多いだろう。今作では、モテモテのお嬢様女子大生を演じる訳だが、絶妙な垢抜けなさが抜群!

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お次は、これから本格的にブレイクするであろう(既にしているとも言えるが)セレーナ・ゴメス。ハーモニー・コリン監督の『スプリング・ブレイカーズ』(2013年)や『君が生きた証』(2015年)など、数々の作品に出演、最近ではジム・ジャームッシュ監督の『デッド・ドント・ダイ』(2020年)にも出演している(そしてとんでもない目に遭っている!)今作では、ひょんなことからギャッツビーと行動を共にし、彼に憎まれ口を叩くキュートなチャン役を演じている。

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【まるで気分は観光!観るとニューヨークに行きたくなる】

本作は、ギャッツビーとアシュレーの2人が大学新聞の取材がてら、週末のニューヨークを観光するというデートも兼ねて訪れるところから始まる。そのせいもあって、本作のロケ地はニューヨークの観光スポットとでもいうくらい映える場所が多い!

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メトロポリタン美術館やセントラルパーク、観てるだけで逃避したくなるような素敵なスポットに思わず癒されてしまう。そしてニューヨークに訪れたくなること必至!

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【本国では公開されなかった本作、その理由とウッディ・アレン監督の現在は?】

①何故本国で公開されなかったのか?:実は本作、本国のアメリカでは公開されていない。何故か?それはウッディ・アレン監督の性的虐待疑惑がきっかけである。事の発端は1992年、当時女優のミア・ファローと交際中だったアレンが、彼女の養子であるスン=イー・プレヴィン(ミア・ファローとアンドレ・プレヴィンの養子で、当時21歳。アレンとはその後1997年に結婚)と性的関係を持っている事実が発覚した。ミア・ファローは、アレンと子供たちの親権を争う中で、彼が当時7歳の養女ディラン・ファローに性的虐待を行ったと主張。親権は失ったアレンだが、虐待については2度の公的調査を経て不起訴に。しかし2014年にディラン・ファローが「虐待はあった」とする公開書簡を発表した。一方ディランの7歳年上の兄モーゼス・ファローはアレンを擁護し、反対にミア・ファローから受けた虐待を告発している(下記記事参照)

ウッディ・アレン監督が、自身の再婚相手の養女と結婚したという衝撃のニュースは、当時、日本でもニュースになったから映画ファンでなくても知ってる人も多いはず。しかし、その後の経緯に関しては双方が食い違う証言をするなどかなり複雑化している。この性的虐待疑惑とハリウッドで起こった『#MeToo運動』の影響で、本作は本国での上映は中止になった。

また、この問題を巡っては、出演キャストのティモシー・シャラメ、セレーナ・ゴメスなどは自身の出演料を、セクハラと闘うチャリティ団体Time's Upなどにへの寄付を表明。出演料であるかは不明だが、エル・ファニングもTime's Upへの寄付を行ったとされている。

さて、実質、ハリウッドを追放されてしまった形のウッディ・アレン監督だが、現在はどうしているかというと今後アメリカ資本で映画を作る気はなくなっているとの事。今、脚本を書いている次回作もパリで撮影らしく、今後はアメリカ以外を活動の場にしていく事が伺える。(下記記事参照)ちなみに、この問題に関しては、下の記事が読み応えがあり考えさせられたの、気になる人は読んでみて欲しい。

という訳で、『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』、曰く付きの作品にはなってしまったし、監督に対しての姿勢は各々の考えがあるだろうから、ここでその是非を述べるのような事はしない。ただ、そこを切り離してみたとき、筆者は、一つの作品としてとても良かったという事は述べておきたい。という訳で、気になる人はチェックしてみてはいかがだろうか。


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