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「2023年度エコガーデナー養成講座」受講生レポート4月・水曜クラス

日曜クラスに続きまして4月12日(水)に初回を迎えた
エコガーデナー養成講座 水曜クラスより、
受講生 えみさんの授業レポートをご紹介いたします。
日曜クラスと水曜クラス、基本的に授業の内容は ほとんど同じですが、
レポートは受講生さんの個性や、個々の捉え方や視点の違いを感じられる内容となっています。ぜひ両クラスのレポートを読んで、より授業についての思索を深めて頂ければと思います。(園藝学校サポートスタッフ・大沢)

シモキタ園藝學校エコガーデナー養成講座、第1回講座は座学でした。
講座についての解説、これから1年をともにする受講生の自己紹介、下北沢を舞台にしたシモキタ園藝部の成り立ちの解説、そして植物の育つ土台となる下北沢および周辺の地層とそれを作った歴史の話があり、最後に園藝部のこやのある下北沢駅南西口から世田谷代田までのエリアを歩きながらの紹介がありました。

エコガーデナーとは?

まず講座のタイトルにあるエコガーデナーとはなんぞや?ということですが、一言でいうとまちの緑を育てる担い手と定義されています。シモキタ園藝学校はそのエコガーデナーの養成を目的として開催されています。
エコガーデナーの卵となる受講生の動機は様々で、自然環境に関心がある人、植物を育てるのが好きなガーデナー、ベランダー、さらに趣味から発展して農学校へ通い耕作をしている方、逆に育てるのが苦手なので克服できれば、という人も。また地元下北沢で園藝部の活動を目にし、こやに通いイベントに参加する中で受講生となる巻き込まれ型、そして印象深かったのは「もっと植物や土について知識が必要」と仕事や専門の中で気づき参加された、園芸や建築などのプロフェッショナルも多数いたことです。

シモキタ園藝学校はエコガーデナーの養成を目的として開催されています。

地面の中をよく知ろう

今回の講座では下北沢の土壌を歴史的な視座から見直しました。人が東京湾に手を加える前の関東の地形から入り、現在の東京の港湾部は半分が江戸時代~近代に埋め立てた土地であること。その後明治維新を経て鉄道が建設されるようになり、ここ下北沢にも小田急線が開通しました。その紆余曲折などについて。
そして現在、シモキタ園藝部が設立されるきっかけとなった小田急線東北沢、下北沢、世田谷代田の3駅の地下化について、工法や地域の地形、使われた土の地質などからの説明がありました。

下北沢を挟む小田急線地下化エリアの標高の上下。一番深いあたりにシモキタ雨庭広場がある。

下北沢はもともと水の流れ込む谷戸であり、駅南西口の先に昨年完成したシモキタ雨庭広場が谷の一番底となって、降った雨が地中へ染み込むようになっています。
ちなみにこの古来からの地形を活かした小田急線地上部分の施設展開は、2023年の第3回グリーンインフラ大賞で「国土交通大臣賞」を受賞しています。
シモキタ園藝部が植物の管理を担っている小田急線のこの地上部分の土壌は、地下鉄の地下化の際に掘り出した土壌を一度別の場所へ運んでから再び戻して敷き込んだ土だとのことです。

異なる目線

そして話はシモキタ園藝部の設立経緯へ。線路の跡地開発を考え提案してきた「グリーンライン下北沢」が、世田谷区が開催した住民参加会議である「北沢デザイン会議」などに参加する中で、住民が街の緑地の管理へ関わる仕組みが提案され、その賛同者により現シモキタ園藝部が設立されています。

毎日工事を見ていたけれど知らなかった路線地下化の裏にあったストーリーを聞く

開発プロジェクトでは2015年に、東北沢駅から世田谷代田駅の3駅をまたぐ地域の立体緑地建設計画が登場しました。当時の世田谷区の案では緑地は線路のなくなった地上でなく、下北沢駅から現在のボーナストラックまで続く高架上の歩道脇スペースに展開、高架下の地上部分は大きな駐輪場とする予定でした。
それが駅からボーナストラックまでをつなぐ現在の緑の遊歩道へと変わったのは「住民が参加する緑の街、下北沢」というビジョンを世田谷区の行政、小田急電鉄および住民の3者全員で最終的に共有できたことが大きかったようです。

弱ったため手当をされた植物について解説

大規模な高架と駐輪場となるはずだった計画は一旦保留となり、緑の のはらになることが決まりました。しかし のはら予定地となった場所の土壌は、そもそも植物を植えるために整備されてはいません。
造成中、園藝部に所属する造園プロからの問題提起により穴を掘って水はけを実測したところ、何十分経っても水が退きませんでした。なんとかできないか画策したのですが、時間的、予算的猶予がなく部分的な改善にとどまるかたちとなりました。ほかにも土の硬さや木々の植え方など、施工当時に解決できず現在も持ち越している問題があります。それはこれから改善に向けて取り組んでいく園藝部の課題となっています。

本講座では2回目以降の授業内容が  まだ確定していません。それは管理エリアの植物の状況や課題に合わせて講座内容が展開されることとなっているためです。
実際に街を歩く中で、弱っている植物として可視化された現状の課題のいくつかに触れました。
課題は一朝一夕で解決されるものばかりではなく長いスパンでの取り組みも必要そうです。しかし植物が育っていく時間の流れは人の時間よりも長く、我々人が少しずつ環境をよく変えていこうとするのを木々や草花は待ってくれているようにも感じました。

おしまいに

循環の一部、コンポストを見る

第1回講座を受講し、熱意ある方々の参加によって小田急線の地下化工事跡地が現在の緑豊かなあり方となって本当によかったと感じました。
行政も民間企業もそれぞれのベネフィットを追求し、それぞれの観点からよかれと思って開発を進めます。そこに住民と緑という別の視点が持ち込まれたことで、長期的にはコミットする全メンバーにとってより満足のいく環境が生まれたのではないかと想像します。
シモキタ園藝部は下北沢をよりよくしようという賛同者がつどい、実働するプレーヤーとして計画から運営まで街づくりにコミットする、まだ珍しい街づくりの例として広く注目を集めています。同じような動きが広がっていけば、近い将来日本の各地で街の風景が変わっていくのではと期待がふくらみます。

またシモキタ園藝部の部員はただ単に植栽を世話するだけではありません。
撒き育て、刈り取った草木を活用し、土に返すという循環をこの地に取り入れようと活動しています。日本には昔から暮らしのユニットとして「里山」がありました。人の住む里のすぐ側の山や森林、そこを流れる小川に手入れをしながら 年間を通じて豊かな恵みを受け取って暮らしてきたのです。
これは今の社会を回している貨幣経済とは全く異なる、お金を介さない価値のやり取りです。今回の講義を聞いて、古くて新しい循環である里山を下北沢での暮らしに取り込もうというチャレンジにも改めて驚き、行く末を楽しみに感じています。

シモキタ雨庭広場からボーナストラックを眺める

開始2年目のシモキタ園藝學校で学びはじめた我々がその循環の中に どのように入り込んでいくことになるのか、これからの実践講義が楽しみです。

>4月授業レポート担当:水曜クラス えみ

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