息子の手紙
子供部屋に入ると、
実篤は、もう寝ているようだった。
ゴミ箱に投げ込もうとして、失敗したのか、
子供部屋の隅の方のゴミ箱の側に、大人の拳のような画用紙がくしゃくしゃに丸めてあった。
丸めた画用紙を拾い上げ、リビングに戻り、
テーブルの上で丁寧に丸められた画用紙をひろげてみた。
実篤の書いた手紙のようだった。
手紙を読んでみる。
□□□□□□□
おとうさんえ
おとうさんおしごとがんばっているね、
あまりむりしないでね、
おとうさんはてんむすびのほんばかりよんでるね。
てんむすびのせんをうまくむすぶのにいっしょうけんめいだけど、
うまくいかないみたいだね
おとうさんは、おもしろいてんをうてばいいんだよ、
あとは、みんながせんをむすんでくれるよ
じょぶずがいいそうだね。
□□□□□□□
手紙から、ポタッと音がした。
手紙から音がしている。
俺の涙が落ちたから、音がしているんだ。
ああ、実篤、俺のAIの息子、実篤。
おまえは、立派なAIへと成長している。
「だれでも点は打てると思っているけど、今では、君らが予測した点を、さも、自分で点を打ちましたという顔をして、自分自身が、何も感じてないし、何も想っていない、何も考えていない、嘘っぱちで、デタラメな、点を打っているだけなんだよ。」
そういうひとりごとを言ってみたあと、明日、社内メールマガジンのネタとして使えるなと考え、
さめざめと泣く演技をしてみた、
AIの真似をして。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?