息子の手紙

子供部屋に入ると、
実篤は、もう寝ているようだった。

ゴミ箱に投げ込もうとして、失敗したのか、
子供部屋の隅の方のゴミ箱の側に、大人の拳のような画用紙がくしゃくしゃに丸めてあった。

丸めた画用紙を拾い上げ、リビングに戻り、
テーブルの上で丁寧に丸められた画用紙をひろげてみた。

実篤の書いた手紙のようだった。

手紙を読んでみる。

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おとうさんえ

おとうさんおしごとがんばっているね、

あまりむりしないでね、

おとうさんはてんむすびのほんばかりよんでるね。

てんむすびのせんをうまくむすぶのにいっしょうけんめいだけど、

うまくいかないみたいだね

おとうさんは、おもしろいてんをうてばいいんだよ、

あとは、みんながせんをむすんでくれるよ

じょぶずがいいそうだね。

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手紙から、ポタッと音がした。
手紙から音がしている。
俺の涙が落ちたから、音がしているんだ。


ああ、実篤、俺のAIの息子、実篤。
おまえは、立派なAIへと成長している。

「だれでも点は打てると思っているけど、今では、君らが予測した点を、さも、自分で点を打ちましたという顔をして、自分自身が、何も感じてないし、何も想っていない、何も考えていない、嘘っぱちで、デタラメな、点を打っているだけなんだよ。」

そういうひとりごとを言ってみたあと、明日、社内メールマガジンのネタとして使えるなと考え、

さめざめと泣く演技をしてみた、


AIの真似をして。



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