現役PdMが副業起業して0からプロダクト開発〜事業売却までした話

このnoteはITメガベンチャーでPdM的な役割の社員が副業として会社を設立し、仲間を集め、0からプロダクト開発し、約1年後に事業売却をした記録です。
プロダクトの紹介は最小限に留め、進める中で上手くいった点や失敗した点などを中心にまとめていきたいと思います。

このnoteが何かしらの役に立つかもしれない方

・PdMとしてのキャリアに興味がある方
・自身で0からプロダクト開発をしてみたい方
・本業として起業したいが、まずは副業として始めてみたい方

あなたは誰?

ざっくり以下の経験をしてきた30代前半男性です。

・大手メーカーの経営企画
・外資コンサル
・AIスタートアップの事業責任者兼PdM
・ITメガベンチャーのPdM&PMM的な役割

なぜ副業プロダクト開発?

大企業からスタートアップまで幅広い規模で事業やプロダクト開発・運営に携わってきましたが、組織に属する以上、自分が0から立てた仮説をベースにしたプロダクト開発することは簡単ではなく、時には納得できない方針でプロジェクトが進行することもあるかと思います。

一方で、責任と権限をセットで持った上で、チャレンジすることが自身の成長やワクワクにつながることは実感していたので、一度自分で0から企画したプロダクトを創って世に出してみよう。どうせやるなら法人化してみようというところが背景です。

何をする会社か?

誰のどんな課題を解決したいのかを考えました。私の人生観として、人生は基本的に苦難の連続でそれを乗り越えるチャレンジの連続でもあると思っています(ネガティブな意味ではなく)。

人によって直面する壁も困難と感じる場面も異なる中で、何かサポートできることはないかと考えた際に、直面している課題そのものではなく、それを乗り越えるパワーを付けられるような事業が良いと考えました。

人にはそれぞれ好きなことがあるかと思います。その好きなことを最大限楽しみ、英気を養い、蓄えたパワーでまたチャレンジをする。そんな手助けができるプロダクトを創りたいと考えました。社名はNETSURYOと書いてネツリョウと読みます。

具体的には何をするの?

具体的なアイディアを固める上で、以下の軸を中心に考えました。

・ユーザーがワクワクして使ってくれるプロダクト
(ビジョンとの整合性)
・事業ポテンシャルの高さ
(人口 x 発生頻度 x お困り度合い = 事業ポテンシャル)
・自分が好きな領域
(モチベーション維持の観点で重要と考えたため)

上記の観点に基づき、様々な領域や業界の調査を行いましたが、結果としてゲーム領域に決めました。理由としては、ゲーマーさんにインタビューをさせて頂いた際に、ゲームへの熱量や愛情がとにかくすごく圧倒されることが多かったからです。

個人的にはこの熱量がかなり重要だと考えており、熱量が高いと一見すると浅そうなペインポイントも発生頻度が高くなるため、深いペインポイントになるのではと推察しています。

また、人口や頻度に関しても、熱量高くプレイされているゲーマーさんの規模感も申し分ないと考えました。このあたりはあくまで規模感を把握したいだけなのでデスクトップリサーチのみ実施。

加えて、私自身も幼少期はテレビゲームが大好きで将来の夢はゲームデザイナーになると言うぐらいでした。現在も流行りど真ん中のAPEXにどハマりしている1人のゲーマーでもあったので、この領域なら自身もユーザーの気持ちを理解しやすい、且つプロダクトに愛着を持ちやすいと考えました。(APEXではヴァルキリーが好きです)

プロダクトのUXコンセプトと課題の設定については、TwitterでゲーマーさんにDMを送りまくって、1時間1,000円で引き受けて下さる方を探してインタビューを行いました。インタビューは実施するたびに本当に難しいなと思うのですが、ここがめちゃくちゃ重要。というよりもここミスったら後続どんなプロダクト作っても徒労に終わることしばしばなので、注意深く実施しました。

特に注意した点については、

・まずは事実だけにフォーカスして話を聞け:
事実なのか意見なのかを区別して徹底的にヒアリング
・確証バイアスはまじで捨てろ:
これが本当に難しく自分の思い込みや多分こうだろうという考えを捨ててユーザーと対話しないと、結局インタビュー前に立てた仮説(思い込み)を立証するためのインタビューになったりすることしばしば
・お前は探偵だ!:
ユーザーがペインだと感じていないけど実は不便の塊で改善の余地がある部分を発見するには、優れた洞察力が必要になります。話しながら全てのユーザーアクションに不便や不満があるのではないかと考えながらインタビューを実施しました

インタビューを実施するに際してこちらのカスタマーマニアになろうはめちゃくちゃ参考にしているのでご覧になられていなければオススメです。

そんなこんなで、インタビューを元に立てた課題仮説とソリューションの方向性が以下です。大きく、ゲームをプレイする前、プレイ中、プレイ後の3プロセスに分けて整理しました。(詳細は割愛)

本来であればどこか一点に絞りMVP開発というところだと思うのですが、いかんせん副業であり資本も限定的であるため、大きなピボットは難しいと考えていました。悩んだ結果として、プレイ前、中、後のそれぞれの課題仮説に基づくソリューション機能をそれぞれ実装することにしました。
どれかの機能が刺さったことがわかれば、すぐに当該機能を軸にしたUXへ切り替える算段でした。

仲間集め

MVPとしてのUXコンセプトや大まかな機能要件は大体整理ができたタイミングでいよいよ開発に向けて動き出します。元同僚に声をかけ即決定。3名のエンジニアが賛同してくださり、すぐに副業メンバーとしてジョイン頂きました。この時すでに法人化していることや、会社・プロダクト紹介資料も作成済みだったので、「なんか一緒にやろう」というレベル以上に解像度を高めていたので、スムーズに進んだ気がします。

といいつつ、この時の私は副業メンバーだけでプロジェクトを進行することの難しさをまだ知りませんでした。。。(詳細後述)

プロダクト開発

開発はエンジニア3名にお願いし、私はプロダクトの戦略、UX設計、UIデザイン、機能要件定義などその他全てを担当しました。コミュニケーションはSlack、機能要件に関してはFigmaで管理、ソースコード管理はGithub、タスク管理はスプレッドシートを使用していました(現在はnotionを使用)。

Figmaのコンポーネントやページ管理などは雑なまま進行。。

このままMVPローンチに向けて開発だ!と意気揚々としたのも束の間、開発に遅延がどんどん発生します。メンバーの話を聞くと最大の理由は「想定よりも時間が使えない」でした。

プロジェクトに参画する際に稼働可能な時間を申告してもらい、それをベースにWBSを引いていましたが、稼働可能な時間の中に、「今xxにn時間を割いてるから、それを削ってこっちに割り当てる」といった形で捻出した工数はほぼ破綻していた印象です。参画いただく方には無理なく稼働できる時間を事前に擦り合わせることが必要だと感じました。

今回は全員副業、且つ報酬も少額であり、善意によるサポートが主なモチベーションでした(それだけでも本当に本当に感謝です)。それ自体私もわかっていたため、強く依頼ができない部分あり、遅延に伴い徐々にメンバーのモチベーションも低下していき、1人また1人とメンバーが抜けていき、プロジェクトの進行はさらに遅延しました。

善意だけではやはりプロジェクトとして成り立たないと感じ、サポートしてくれるメンバーに対してまとまった報酬を出すことでコミットメントを上げてもらったりしましたが、そもそも現実的に稼働可能な工数に鑑みて難しかったため、bosyu(現在はクローズしているサービス。悲しい)やクラウドワークスなどで募集も出し始めました。

お話させて頂きジョインして頂いた方もいましたが、継続的なお付き合いに至らないケースもありました。私自身も本業ありきで進めていたので、投下できる時間も限られており、プロジェクトが停滞している期間は若干疲弊。

たくさんの方々とお話させて頂きライトに協働するということを繰り返した結果、現在は心強いメンバーで開発はできていますが、本当に運が良かったなと思っています。結局とにかく色々な方とお話させて頂き、ライトに協働してみることが良い出会いへの近道だなと感じました。

中にはフィットしそうな知り合いの方をご紹介して下さる方もいたりと、とにかく行動してみるだけで意外なところから道が開けたりするということも改めて実感(これも本当に感謝です)。手数は本当大事。

その後も有難いことに無償でも手伝いたいと言ってくださる方もいるのですが、必ず有償にするようにしました。無償だとできなくても仕方ないという考えが少なからず発生するためプロジェクトが遅延しがちです。

責任や役割を明確にし、必要のある緊張感を生むことが重要で、金銭的報酬を支払うということは双方にとってメリットしかないと思いました。身銭を切るって本当大事だなと痛感。

プロダクトローンチ

紆余曲折ありながらようやくMVP(サービス名はGAME PODです)をローンチまで漕ぎ着けました(関わって下さった方々には本当に感謝しております)。

課題仮説とソリューションがハマるのか、PMF達成ができるポテンシャルがあるのかを見極めるために、インタビューにご協力頂いた方々やTwitterでゲームが好きそうな方にDMでプロダクトを触って頂くようお願いをしました。また、一定期間&回数無料でプレス配信可能なPR Timesさんのスタートアップチャレンジを利用させて頂きました。
思い込めて作ったプロダクトのローンチはやっぱりテンション上がります。

プロダクトの課題仮説とソリューションは大きく3つありましたが、そのうちプレイ後に焦点をあてた「ゲームレビュー・記録・管理」部分が一部のユーザーにめちゃくちゃ使われました。

ユーザーが知り合いのゲーマーさんに口コミなどで広めてくださり、コアなユーザーやゲームレビュー数も徐々に増え始めました。

データ周りはGoogle Analyticsで全体を見つつ、あとはSQLを書いてエクセルで分析しています。MixpannelやAmplitudeを使用することも検討したのですが、ユーザー数が少ないうちはこっちの方がメンテコスト含めて効率がよいと判断しました。頻度高くご利用頂けたユーザーにインタビューさせて頂いても、課題仮説通りのペインを抱えていることを把握することができました。
また、同様のペインを有するユーザーがどの程度存在するのかをはあくするために、セルフ型ネットリサーチのFastaskさんを利用させて頂きました。ゲームの記録やレビューは必要不可欠なタスクとしているゲーマーさんはどれぐらいいるのか?記録・レビューを行っている人はどのように実施しているのか?という点を中心に調査をしました。結果としては事前に立てた仮説よりも期待度が高まる数値となり少し安心。設問数にもよりますが、大体5万円くらいでn=500程度の回答を得られたので個人的にFastaskさんはおすすめです。

グロース〜事業売却

MVPのローンチからユーザーインタビューを基に少しずつプロダクトのコアバリューをずらし続け、PMFに向けたバリュープロポジションが定まってきたタイミングで、グロース計画を策定しながら思いました。
やることめちゃくちゃあるな(わかってた)。。。。これまでも大半のタスクを1人で抱えて進行していたのですが、グロースに向けた追加タスクを考えると、納得のいく水準で進行することは困難だと判断しました。追加資本を投入して人員を拡充するという選択肢もあったのですが、自由にプロダクトを創りたいという気持ちで始めたチャレンジであり、フルコミットするイメージも持てず、同じ思いで運営して下さる企業様がいるのであれば、事業譲渡という選択肢もありかなと検討し始めました。

M&AクラウドなどのM&A仲介サービスにも登録し、買い手候補企業様ともお話をさせて頂きながら検討した結果、事業の可能性や想いに共感して下さった株式会社URFEET様へ事業譲渡させて頂く運びとなりました(詳細は契約の関係で割愛)。大枠の話が擦り合った後は、タームシートで基本的な方針を固め、事業譲渡契約を締結し、各種アセットの整理・引き継ぎを進めました。事業規模も小さかったため、話し合いから約1ヶ月で無事譲渡が完了し、プレスリリースを配信しました。(娘が嫁に行くってこんな気持ちなんだろうかと思いました)

プレスリリース

最後に

実体験は基より様々な書籍などで固めた自分なりのプロダクト理論。これらが実際にどこまで通用するのかを自由にチャレンジしたいという気持ちで始めた副業起業。
先人らが踏んだ轍はしっかり頭に入ってるから、私は大丈夫!と思っていましたが、いざやってみるとその轍をしっかりと自分の足でも踏む結果に。苦笑
とはいえ、身銭を切って踏んだその轍一つ一つから深い学びを得ることができたのも事実であり、自身にとって非常に有意義なチャレンジとなりました。
読んで下さった方にとって何か一つでも気づきがあると嬉しい限りです。


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