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FTXの破綻(Chapter 9 申請)と連鎖倒産の可能性について考えてみた

自己紹介リンク (@Yshimogawara)

冒頭:何故この話題について触れるのか

イベント業界とは直接的には関係ない話ではあるのですが、自分自身仮想通貨、ブロックチェーン技術、Web3は「中央集権化された世界に対するアンチテーゼ・反逆」という観点で以前から注目と期待をしておりました。個人的に関心が高いという観点に加えて、伝統的な金融商品が辿った歴史との関連において、自分が発信できることがあるなと思っての執筆になります。

今回の調整は不可避だし、今後も調整はある

「未来をいい方向に変えてくれるだろう」と個人的に期待をしていた仮想通貨は、2018年~2019年頃以降、投機対象としての関心が高くなってしまいました。「億り人」なんて単語も出てくるようになって、この事態を個人的には非常に残念に眺めていました。

過去及び直近の仮想通貨市場の調整(大暴落?)は、投機対象として過熱し、不健全な目的のもとに流入していたキャッシュが退避する契機となっています。このサイクルが今後も何巡かする可能性はありますが、その後はweb3に未来を感じ、応援する目的のキャッシュが残ると考えています。結果、「健全な目的」で集まったキャッシュは、ビジョンと将来性のある仮想通貨に対して適切に配分されることになります。中長期的に見たら、過去及び今の調整市況は、仮想通貨市場の健全化に向けて不可避な事態だったと考えています。

FTXの連鎖反応:ブロックファイの倒産リスク

FTXの倒産リスクを聞いた時、即座に連鎖倒産の可能性を危惧しました。現に、今ブロックファイなど、複数の仮想通貨業者の連鎖倒産の可能性が取りざたされております。

ちなみに、一時期Apexというゲームをよくやっていたのですが、その中の超有名チームTSM (Team Solo Mid)は、ネーミングライツをFTXに売却していて、FTX TSM という名前で有名プレイヤーがプレイしていました。仮想通貨はよくわからんが、FTXという名前は聞いたことあるという人は、結構多いのではないかと思っています。

話を戻しますが、連鎖倒産のリスクがすぐに思い浮かんだのは、2008年以降のパリバショックとリーマンショックにおいて、金融機関が直面した事態と全く同じことが仮想通貨市場でも起きていたからです。

レポ市場の発展

レポ市場というのが、金融市場にはあります。これは、金融商品の貸し借りの市場で、様々な目的で使われることが多い市場となります。

代表的には、空売りの際に使われます。空売りしたい人(Aさん)は、手元に売れる商品がないので、レポ市場で実際にその商品を持っている人(Bさん)から賃借料を対価に対象商品を借りてきます。Aさんは、取引終了時に市場から当該商品を買い戻して、Bさんに買い戻した商品を売却(返却)します。これにより、Aさんは商品を持っていなくても下がる方向に投資することが出来、Bさんは賃借料で儲けることが出来ます。レポ市場は、金融商品市場においては非常に重要な役割を果たしています。

これ以外にも、数多の使用用途はあります。個人的に思う代表例をいくつか。

  • 証券会社が対顧客取引で使う

    • お客さんが商品を買いたいと言ってきたが、当該商品が手元にない場合、レポで借りたものを売却する。証券会社はその後、当該商品を市場で買ってきて返却

  • ヘッジ取引

    • 事業提携のために持っている上場株を売れないが、今後の価格下落のためにヘッジしておきたい場合、空売りをヘッジ代わりに使うことで、自分の保有資産の下落リスクをヘッジすることが出来る

  • 資金調達

    • 「下落リスクをヘッジする=これ以上資産価値は下がらない」ということなので、ヘッジ価格を算定根拠とした資金調達も行える

このように、レポ市場の発展は、金融商品市場の発展と取引の多様化においては、切り離せないものです。仮想通貨市場でも、同様にレポ市場が徐々に発展をしておりました。

レポ市場のリスク:連鎖倒産の危険性

一方で、上記の記事でも4回にわたって長々と書いたことと関係するのですが、レポ市場は適切に管理しないと連鎖倒産のリスクがあります。リーマンショックの時に起きたことと相当に似ていますが、レポで商品を借りている人から返してもらう想定でいたのに、借りている人が倒産をしてしまった場合、貸している人が期待していた収益と資産、両方が瞬時に吹っ飛んでしまう可能性があるためです。貸倒引当金みたいな概念ですが、相手方の倒産リスク管理、与信管理の重要性を改めて認識される出来事だと思います。

金融市場では、上記で触れた通り、中央清算機関によるクリアリングや、相対取引におけるマージンコール(担保提供)により、相手方が倒産しても担保回収や中央清算機関の活躍により連鎖倒産が防げることになっていますが、仮想通貨市場は急速に発展したため、連鎖倒産を防ぐためのシステム設計がなされておらず、結果的に今回のようにFTXのChapter 9 申請が、他の仮想通貨取引所やレポ市場の連鎖倒産のリスクを生んでいます。

今後どうなるのか

今後どうなるか、というのは、恐らくまだ誰にも分からない状態ですが、幾つかシミュレーションしてみました。

仮想通貨市場自体の衰退

仮想通貨市場自体の未熟さと危険性が今回改めて認識された結果、仮想通貨という概念自体が衰退する可能性をまず危惧しています。実際、今回の事案を受けて、ポートフォリオ投資の分散投資対象として仮想通貨を検討対象に入れる試みは終わった、というコメントを残している機関投資家は少なくないように思えます。

個人的にはこのシナリオの可能性は低くないとは思いますが、web3に対する期待値も込めて、以下のいずれかのシナリオに落ち着く可能性の方が高いとは思っています。

各国の規制と監視が強化され、カウンターパーティリスク管理などが強化される

直近で起こる可能性が高いと思っているシナリオです。

リーマンショック後のDodd Frank 法やバーゼルII / III と同じように、国際機関や各国当局が仮想通貨市場に対する規制を強化し、取引市場や仮想通貨業者に対して、顧客資産・相手方倒産リスクを強固に管理することが要求されます。また、運営業者自体の倒産リスク管理を厳格にするため、資本比率・現金比率などの水準が設定されます。そのために、運営に必要な許認可なども強化される可能性があると考えています。

このシナリオになった場合には、健全化・連鎖倒産のリスクが回避される一方で、中央集権化された組織からの脱却という目的を基に派生したweb3の概念が、結局中央集権化された組織・当局からの規制を大幅に受けてしまうという制限がかかってしまうことになります。今回のFTXの案件を受けて避けられない事態な気がしますが、ちょっと残念ではあります。

web3関連技術により、顧客資産流用などが出来ないようなテクノロジー開発が進む

将来的に起こる可能性が高いと思っているシナリオです。

中央集権化された機関による規制強化を受けた結果、FTXと同様の不透明な運営を行っていた仮想通貨関連業者や、レバレッジを利かせていた業者は軒並み運営不安に陥り、撤退するシナリオになると考えています。

この冬の時代を乗り切った健全な運営をしているweb3や仮想通貨関連業者は、中央集権化された組織による健全性強化という点に対して、引き続き懸念と課題を持ち出す結果、従来の「当局によるガイドライン強化によるリスクシナリオへの対応」から脱却を目指すべく、テクノロジーによる対応を図っていくと想定しています。

但し、一度導入され強化された規制を、テクノロジーの強化により緩めるという事態も過去を考えると想定されないため、結果的には規制の対象とならないような新たな通貨の開発、運営業者形態の設立などが進むと想定しています(この場合、今流通している仮想通貨は今後5年~10年のスパンで新しい通貨に取って代わられるため、最終的な市場価値と価格はロングスパンで見たら下落傾向という結論になる気がします)。

結論

上記踏まえると、今後数年における当局の規制強化は不可避であり、規制強化に対して懐疑的な意見を持つweb3従事者が新たな通貨と運営システムを開発した結果、現在流通している通貨は、今後新技術に基づいて開発された新通貨に完全代替されるというシナリオが有力なのでは、というのが今の自分の見立てです。

勿論、自分はweb3と仮想通貨事業を展開しているわけではないので、あくまでもこれらの事業に興味があって見てきた、いうならば「一人のファンが居酒屋でつぶやいていること」ぐらいの話ですが、是非「そう思う!」「いや何を言ってるんだ素人が。。。絶対そうはならんだろ」とかご意見いただけると嬉しいです!


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