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“我の強さ”がキャリアを引き寄せた。年商3204万円の研究者・夏野かおるさんに聞く、“仕事が楽しくなる”思考法
「人生の3分の1は仕事」と言われるように、自分の人生を考えるうえで、仕事は不可欠な要素のひとつです。
一方で、モチベーションが保てずにやる気を失ってしまったり、日々のタスクに忙殺されてしまったりと、「仕事が楽しくない」と感じてしまうことがあるのも事実。
今回お話を伺ったのは、フリーランスライターを経て、現在はコンテンツ制作に携わる傍ら、研究者としても活動している夏野かおるさん。
2022年には編集者としてバリバリ働いて年商3204万を達成したかと思いきや、2023年は稼働を減らすことを選択。博士論文を書きつつ、プロジェクトマネージャーとして週2日勤務…と、柔軟に仕事に向き合う姿が印象的です。
そんな夏野さんに、仕事を楽しくするコツや、人生を豊かにするためのキャリアの描き方について聞きました。
夏野かおる
京都大学大学院 人間・環境学研究科 博士課程 指導認定退学。博士号取得に向けて研究活動を継続中。シナリオ執筆やゲーム制作、Webサイト運営などの知見を活かして大学院在学中に個人事業主として開業。コンテンツ制作・編集・運営補助、ディレクション等を幅広く請け負う。売上規模拡大により2021年に法人化。テック系領域コンテンツの制作を強みとするほか、動画制作やプロジェクトマネジメント等、幅広い案件を取り扱う。
X:@Natsuno_Kaoru
note:@natsunok
"我が強いプロフィール”が面白いキャリアを引き寄せる
ーーブックライターやディレクター、研究者…と、夏野さんはさまざまなキャリアをお持ちですが、これまでどのようにキャリアを決められてきましたか?
夏野さん:
「面白そう!」「いけそう!」と思った方向に走っていたら、ここに辿り着いていたというか…(笑)。
たとえば、オセロで「ここに打ったら勝てるぞ!」と思ったら、迷わずそこを取るじゃないですか。そんな感じでキャリアを築いてきましたね。
1番最初のキャリアはライターですが、その始まりも塾講師のアルバイトで生まれたツテからでした。「あなた、文章が好きなんだったら書いてみない?」とブックライティングの仕事をもらったことがきっかけで、ライティングを始めることになったんです。
ーー未経験ながらも、お仕事を引き寄せたんですね。
夏野さん:
「文章が書ける」ことを匂わせていたのが功を奏しましたね(笑)。
昔から書くことが好きで、歯磨きをするような感覚で、つねに何かを書いていました。
だから、ライターをしているときは、「ノーストレスでお金が生み出されるって素晴らしいな!?」と感じていました。
その後も、シナリオ執筆やコンテンツ制作、編集など、さまざまなご縁でいただいた仕事に取り組んでいるうちに、クライアント様から「法人化しないの?」「チーム化したら、もっとお願いしたいことがある」と言っていただくようになって。
いずれ就職するのか、独立してやっていくのか…というのはすごく悩みましたが、博士課程まで進んだ先の自分の働き方をイメージしたときに、独立したほうがしっくり来て。まわりからのアドバイスも相まって、最終的に独立を決めました。
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ーーまわりの方との関わりのなかで、ご自身の進むべき道が見えてきたんですね。
夏野さん:
頼り上手なのかもしれないです(笑)。研究者を志したのも、自分で決めたというより、先生からのアドバイスがきっかけでした。
「就職するのは何となく嫌だな」と漠然と思っていたときに、提出したレポートを見た先生から「これを書ける人が仕事をするのはもったいない。研究者の道へ進みなさい」と声をかけていただいたんです。
ーーそもそも、夏野さんが就職するのが嫌だったのは、なぜだったんですか?
夏野さん:
当時はまだリモートワークもなかった時代だったので、非効率的なことがたくさんあったんです。たとえば、アルバイトでもう仕事が終わっているのに、退勤時間まではただいなきゃいけないとか…。
本来であれば削減できるはずの無駄な時間を過ごすのがすごく嫌なんですよね。当時は22歳ですから、より尖っていて、何にも縛られたくない気持ちも大きかったです。
あとは、普通に就職するよりも、博士課程まで進んでから事業をするほうが、キャリアとして面白いだろうな、と。
当時就職活動について相談していた人から、「あなたみたいに、博士課程まで進んでから事業をするという、“我が強いプロフィール”は会社に受け入れられにくい傾向がある」」と言われたんです。
それを聞いたとき、正直「アホくせ」と思ってしまって(笑)。
それだったら法人経営をしてみて、たとえ上手くいかなかったとしても、「会社やったけど潰れちゃいました。えへへ」みたいな鉄板ネタを持つ人生のほうが、絶対に面白いキャリアを引き寄せると判断したんです。
迷ったら、「面白いかどうか」「ネタになるかどうか」でキャリアを決めるのもアリだと思いますよ!
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モチベーションに左右されずに仕事を進めるには?
ーーここからは、夏野さんに日々のお仕事を楽しく進めるコツを伺いたいと思います。何か意識していることはありますか?
夏野さん:
できるだけポジティブな時間を増やすことを意識していますね。
仕事でも1日のやるべきタスクが残っている状態だと、気持ち悪かったり、気分が落ち込んだりしませんか? 私はそういうネガティブな気持ちは1秒でも短いほうがいいと思っています。
SNSでも「今日も気分が乗らず、だらだらしちゃった…」という投稿をよく見かけますが、それが「だらだらしてやったぜ!」と前向きな気持ちならいいんですよ。
でも、「私はだらしない人間だ…」と自分を責めてしまうと、気持ちはネガティブだわ、時間は過ぎていく一方だわで、マイナスしか生み出しません。
だから、全然仕事が進まない日があってもいいけれど、それをちゃんとポジティブに転換して、また明日から仕事に向き合うためのパワーにしていくのが大事ですね。
ーーたしかに。とはいえ、気持ちに引っ張られることもあると思うのですが、モチベーションに左右されずに仕事を進めるコツはありますか?
夏野さん:
一つ目は、多種多様なタスクを用意して、つねに何か進んでいる状態をつくること。
生きているといろいろな日があるので、原稿を書くのに没頭できるくらい元気なときもあれば、ノートにレシートを貼るくらいならギリギリできる、なんてときもあります。
だから、ミックスナッツみたいに「どれから食べようかな?」ができる状態をつくっておいて、そのときにできることを選んでやるのが大事です。
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ーーミックスナッツ! その日のモチベーションによって、好きなものを選べる状態にしておくんですね。
夏野さん:
そうそう。そして二つ目は、何事に対しても目的思考を持つこと!
たとえば、重いものを持ち上げるときに「なんでこんなことしないといけないの?」と思ってしまうとやる気が出ませんよね。でも、その先に「筋肉をつける」というゴールがあればがんばれます。
ただ、そう思えるためには「知識」と「経験」も必要です。「この姿勢で運ぶとこの筋肉に効く」とわかっているから、楽しく取り組めるわけです。
仕事に取り掛かる前に、「この作業における目的は何だろう?」「この仕事から得られるものは何だろう?」というのを考えてみると、楽しくできるヒントが見つかるかもしれませんよ!
苦手な仕事は「楽しいことと組み合わせる」
ーーちなみに、苦手な仕事への向き合い方はどうされていますか?
夏野さん:私、本当に書類作成が本当に苦手で…。奨学金申請の書類に訂正印を21回も押したことがあるぐらいなんです(笑)。
ただ、苦手や悩みって、すでにだいたい世の中が解決してくれていて。特に研究をしていると、私が考えてることなんて、もうほとんどの人がすでに考えついていることがよくわかるんですよね。
だったら、すごい修練をして、1つも訂正印がない書類を作成できる私になるよりも、すでにあるツールを使って自動化したり、得意な人に頼んだりと、苦手なことに真っ向から向き合わないほうが良くないですか?
ーーたしかに、そこは頑張りどころじゃないのかも…。
夏野さん:
もちろん、どうしてもやらなくちゃいけないことは発生しますが…。
そんなときは、「楽しいことと組み合わせる」のがおすすめです。たとえば、そのタスクをやるときに、好きなYouTubeを流してみるとか。
「嫌だから」と言ってやらないままでは、ネガティブな気持ちだけが残りつづけるので、「撮り溜めていたドラマを流しながらやろう!」「好きなアーティストの新譜を聞きながらやろう!」みたいに、“楽しさ”をトリガーにするのもひとつです。
あとは、ソファに寝転んだままでいいからやるとか、テレビを観ながら手だけ動かすとか、いい具合に自分の甘やかし方を知るのも大切ですね。
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「どういう人生があなたにとって愉快なのか」を考えて!
ーーここまでお話を聞いてきて、改めて夏野さんが楽しく仕事に取り組まれている様子が伝わってきました。
夏野さん:
はい、すっごく楽しいです(笑)。
でもそれは、「どんな状態が自分にとって嫌なのか」が明確にあって、そうならないために、試行錯誤してきたからだと思うんですよ。
ハードワークがしんどく感じたことで法人化させたり、過労死する未来が見えかけたことで取引先を縮小させたり…。2022年は朝から晩まで馬車馬のように働いていましたが、今は週2日程度の仕事量にして、人間らしい生活にシフトしています。
「どんな状態が自分にとって嫌なのか」を明らかにすることは前に進んでいくために必要です。
たとえばですが…京都に“ヌートリア”っていうネズミがいるんです。有害鳥獣だから1匹捕まえたら、市によっては3,000円ももらえるんですよ。
ヌートリアを1日5匹捕まえれるようになったら、ちょっと裕福な生活が手に入ります。金額としては悪くないじゃないですか。それでも、「いや、その生活は違うな」と思うんだったら、何が違うのかを真剣に考えてみるんです。
曖昧な感情のままでは次に進めません。
仕事もライフプランも、1回本気で「何が嫌なのか」を分解して、正体を明らかにしてみると、進むべき方向が見えてくるはずです。
ーーありがとうございます。最後に、夏野さんが充実したキャリアを重ねるのに大切だと思うことはなんですか?
夏野さん:人に会って、自分のロールモデルを見定めたり、「良い人生」の定義を緩めたりしてみることです。
自分と似ている人とばかりいると、その生き方しか知らないからハードルを上げつづけてしまうんですよね。
でも、世の中には本当にいろんな人がいます。ときには不愉快な思いをすることもありますが、そんなデメリットを受け入れつつも人に会いつづけていると、「良い人生」の基準が緩くなっていくんです。
同じ年代でも、職業や幸せの在り方は全然違う。多様な人がいるなかで、「自分にとって、どんな人生が愉快なのか」を考えないことには何も始まらないんですよ。
・・・
先生に言われて研究者を志し、頼まれるがままにライターになり、クライアントの助言を受けて法人化へ…と、一見流れるようなキャリアを歩まれている夏野さんですが、そこには「自分にとって愉快な人生を歩む」という1本の強い芯がありました。
インタビュー中は終始面白く、わかりやすいたとえ話でご自身の尖ったキャリアを語ってくれた夏野さん。これまでの仕事はすべて“ご縁”で繋がったそうですが、一緒に仕事をするクライアントが彼女に信頼を寄せるのも納得のお人柄でした。
みなさんもぜひ、夏野さんのエッセンスを取り入れて、日々の仕事に向き合ってみてください。
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〈取材・文=しも(@shimo_902)/編集=いしかわゆき(@milkprincess17)〉
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