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スタートアップの成長機会の因数分解

こんばんわ。今日はスタートアップでの成長機会について整理したいと思います。淡々と整理する記事でこうすれば成長できるといった内容を示すものではありませんが、その考えるきっかけになれば幸いです。

スタートアップで本当に成長できてる?

「スタートアップは成長できる」このフレーズはだれもが聞いたことあるフレーズだとおもいます。ですがそれはたいてい入社前に聞くフレーズで、入社後に具体的にどうそこでチャンスを掴むかの話はあまりみたことがありません。
もちろん一般化はできないからだとはおもいますが、ものさしをつくり考えやすくすることはできるのではないか、ということで、年末に資料整理をしていたらでてきた過去資料を元にしています。以前社内の若手リーダー育成の一環で話した内容で、外向けに少し整理したのが本記事の内容になります。

なので基本的にこれから会社の成長と一緒に自分も成長していきたいという個人の方を読者に想定していますが、部下を持つ立場や人事の方にも読んでいただき、ご意見・ご感想などつぶやいていただけると大変うれしいです。

(てっとり早く本題の要点だけ見たいという方は目次から「実践編: 成長機会の作り方」に飛んでしまってください)

なぜ因数分解が必要なのか

なぜ因数分解が必要か。それはただ無策に自分が成長できる機会がくるのを待つ、というリスクの高い選択を取らないようにするためです。

チャンスは勝手におりてこない
まず、冷静に考えれば当然なのですが、スタートアップだからといってチャンスは全員へ勝手には降ってこないものです。後述する機会の一つに自然とめぐってくるパターンもなくはないですが、多くはそう簡単ではありません。機会は確かに相対的には多くあれど、平等に勝手に機会がやってくる環境はほとんどないでしょう。
少なくとも個人として機会を勝ち取りたいなら、そう考えて動くことがまず必要です。

ではチャンスを自ら取りにいけているか?
ですので当然勝ち取っていく必要があります。すくなくともそう考えたほうが個人の生存戦略としてはよいでしょう。

ですが入ってからは忙しさからか目の前の仕事を手一杯で、なれた頃には当初の意に反してなかなか意欲的に新しい機会を社内で自分から取りに行こうというモチベーションも薄れてしまっているかもしれません。
そんな忙しい中で、仕事のゴールを優先しながらも、並行で上手に自分の成長機会やキャリアのことも考えて動ければ(少なくともやることがある程度明確になっていれば)、少ない努力でまわりと差が付き、いつのまにかいい話がきやすくなるポジションをとっておけるでしょう。

「運に任せずチャンスを取りに行け?そんなの当たり前だ!」と言うのは簡単ですがスタートアップの現場を体験したことがある方は、少し否定し難いところがきっとあるはずです。自分の経験では誰もが成長する機会を実際に得られているケースもあれば、その真逆も見聞きした中にはあり、平均したら意外とシビアなのではないかと思っています。また個々人も気持ち先行で、具体的にどう自らチャンスを勝ち取っていけばいいのかのアイデアが欲しいという人も多い印象があります。

ですのでなぜ因数分解をするかにあためて答えると「環境に左右されずに(よい環境ならより活用できるように)自らチャンスを取りに行くための作戦を考える、その考える土台をまず得るため」と思っていただければと思います。

成長機会=不足x信頼

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本題ですが、私なりに整理した成長機会の因数分解は上記になります。

大枠でいえば

1)不足:チームにどうしても埋めたい不足がある
2)信頼:あなたが周りから信用を得ている

この2つが揃った時、絶好の成長機会があなたにめぐりこんできやすい状態といえます。

論理編ではこのあたりの理由や背景に触れますが、手っ取り早く内容の詳細を見たい方は飛ばして実践編までスクロールしてください。

論理編: なぜ不足か?

そもそも成長できそうな仕事を得られているときというのは

1)あなたがやってみたい仕事のなかで
2)経験のないチャレンジングな仕事が
3)経験のないあなたに回ってくる

の3つがそろっているときです。ただこの3つ目が問題なのです。
3つ目は基本的に組織にとしては合理的ではありません。ですがそれが合理的になる場合が不足です。これを正しく理解する必要があります。

例えば、あなたが新たに開発チームのリーダーにチャレンジしてみたいとします。
もしそのリーダーポジションを決める上司が合理的なら、最もその仕事をパフォーマンス高くこなしてくれる確率の高い人に渡したいはずです。あなたがリーダー経験がない場合かつそのチームにリーダー経験者なり適任者がいる場合、当然その経験者にリーダーのアサインはいってしまいます。
逆に誰もやったことはないが、そのチームをまとめる人材が今必要という不足がある状態なら、ある程度リスクをとってもそのポジションを誰かに担ってもらい、将来的にそこを十分に担える人材になって貰う必要がでてきます。こうなるとあなたへチャンスがめぐってくる可能性が一気に上がります。

成長機会の基本はたいていこの構図のはずです。

どの仕事も個人の成長の前に、会社の成長のためにあるはず。なので不足がなければ合理的な判断がなされ、ストレッチなアサインをする力学は働きにくいのです。(あえて非合理的でもストレッチなジャッジをする組織もあるとは思いますが、確率で考えればその逆張りは少々危険ですし、運任せの最初のなにもしない作戦とあまり変わりません)

この合理的な判断と成長機会のトレードオフな関係は、「ここなら自分は成長できる!」と期待して入った多くの人にとって不都合な真実で、あまり語られませんが、かならず抑えておくべき点と自分は思います。不足があることではじめてあなたにチャンスが回ってきやすくなります。

論理編: なぜ信頼が必要か?

次は信頼についてです。

この答えは簡単で、チャンスを生み出す不足が発生し、成長機会となるようなアサイン(=不確実性を含んだジャッジ)をするときに、確実に加味されるのがその人への信頼です。だれもが持っている周りからの信用残高ともいえます。これがないとどんなに恵まれた環境でも自分に回ってくる機会は激減してしまいます。

反論を1つずつ理由をつけて潰していくこともできますが、自分が仕事を依頼する立場になって考えるのがはやり早いでしょう。

例えばあなたが社長で、今期の最重要プロジェクトである新規事業のリーダーを決めたいとします。
スキルや経験でドンピシャの方がいない場合、あなたはきっと1)自分が信頼できる人のなかから、2)本人の意欲や特性を加味して「この人ならきっとなんとかやり遂げてくれる」と思って頼む相手を選ぶはずです。この時大事なのは、検討する順番は1)->2)であって、おそらく逆はないということです。重要かつ難しい仕事になるほど、なかなか自分やチームの信頼が薄い人に任せる決断はしにくいものです。

実践編: 成長機会の作り方

ここからは具体的に成長機会の各要素について説明していきます。最初の図にもあったように、不足を4つ、信頼を2つに分解して、具体的な対策の例も書き出していきます。
もちろん個々に書いた対策は例にすぎませんので、このフレームワークを自分の今のシチュエーションに当てはめて自分の対策、アクションプランをぜひ読みながら考えてみてください。

実践編: 4つの不足と対策

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1.拡大

今いる人員では通常できないことを次々とチャレンジし、ストレッチなアサインをして、時には失敗しながら会社も人も成長していくケースです。よくある「スタートアップだから成長できる」論は、この拡大による不足の発生が起きやすいことを理由にしていることが多いように思います。
これはやはり大きいと思います。が、これは事業がうまくいっているケースでのみ継続が可能で、平等なことは当然なく、しかもこの不足自体が個人がコントロールできないケースも多くあります。
ですのでこの不足を理由にチャンスが巡ってくるのはあくまでベストケースと考え、これに頼リすぎずプランBを考えておくのがと万全だと思います。

拡大への対策は、今後成長の可能性がある会社か、知りうる最大限まで確認して入社すること、またその成長に対して今だけでなく成長したときにも自分に大きな仕事がくるか想像して選ぶこと。会社や事業の将来性の見極めについては難しい話なので割愛しますが、入る前に特に気をつけておくべき点かと思います。
例えば、CXOやリーダーレイヤーに将来はなりたいと考えるなら、具体的会社がどう成長していき、自分が最大限成果を出した場合に人数が増えて組織が拡大していくタイプの会社なのか、少人数といえどマネジメントの必要性がましてかつ内部で実績があるものにチャンスがきそうなのか、一年二年後くらいの会社の状態を面接時に議論して抽象論でなく具体的なイメージがもちうる環境かを話すなども一つだと思います。具体化して考えるにも一定の経験が必要になるので、信頼できる先輩や経験豊富な友人に壁打ち相手になってもらうのも個人的にはおすすめします。

2.異動・退職

動きの早いスタートアップでは意外とありえるのが不足のパターンです。異動や退職は明確な不足が発生しその代替を既存のメンバーで行うときにチャンスが生まれることがあります。ただコントローラブルではなく、拡大よりも狙って起こすことは難しいです。

誰でもできる取りうる異動・退職による不足への対策は、一つは「手をあげておく」ことです。意外と本人が何にチャレンジしたいかという希望が明確に上司などに伝わっているケースは少ないように個人的には思います。ゆえにしっかり伝える人は目立ち、チャンスを得やすいことがあります。
また次の補助への対策を予めしておくことで異動・退職ケースのチャンスを掴む確率もぐっと上がると思います。

3.補助

補助は一番個人の誰もが現実的に取りにいける不足=機会のパターンです。チームや上司の困っていることを代わりにやっていきます。それぞれのすでにアサインされている人がいれば不足なんてないよ、と思う方もいるかもしれませんが、その場合は直接本人やチームのメンバーに聞いてみましょう。必ず何かしらやりたいけどできてないことがあるはずです。こういった顕在化した課題はやればやるだけ成果にもなり、自分の経験値にもなり、まわりに役にたてる分信頼にもつながります。
また補助をすることで今までと違った視点をもつきっかけになり、たとえば自分が将来チームリーダーになりたいなら、補助をして実際リーダーはなにをしているのか疑似体験でき訓練にもなります。チャンスが来たときしっかり結果が出せるように、素振りしておくわけです。

補助への対策は、すでにお伝えしたとおり一番だれでもいつからでもできうるものです。上司やチームをよく観察しよく会話をし顕在化した不足を探していくことです。そしてできることから手をつけていく。そうすることで徐々に目指す役割に本来求められる仕事の何割かを出来るようになり、その実績も生まれます。拡大のパターンばかりに目が行きがちですが、実際に誰もがいつでも取り組めるパターンはこの補助で、これを成長機会と捉えて取り組むかいなかで大きな分かれ目になると個人的には感じています。
ですので球拾いを明日から始めてみましょう。そのうち大きなチャンスを拾うことになるかもしれません。

4.創造

これはコントローラブルですが難易度も高く、一定の実力のある人がさらに大きな成果を出すときに使っているパターンだと思います。自らの力で潜在的な不足を発見しそこで成果をだす、自らの力で拡大と同じような機会を掴み取る方法です。難易度が高い分、おそらく成長幅も成果も大きいものになるでしょう。

不足の創造のパターンの対策は、例えばまずは潜在的な不足をいち早く見つけるために、上司やさらに上の立場の目線になって事業や社内をみて、必要なことを探すこと。そして改善を提案し、行動すること。
これが出来る人はどこでも活躍していく人かもしれませんが、実際にやっている人を見たことある人も多いでしょう。

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対策を簡単にまとめると上記になります。

N=1の事例になりますが僕自身の経験だけで言っても、エンジニアからエンジニアチームのマネジメントを経験できたのは「拡大」がありましたし、プロダクトマネージャー(PM)という新しい専門性を身につけるチャレンジができたのも「補助」でスクラムマスターやPMの雑務を拾っていて今思えばそこに「異動」が重なったからこそでした。VPoEや開発全体のマネジメントなどの機会は、CTOの「補助」を見つけてサポートしながら見つけた不足に提案をして「創造」のパターンで機会を得て、結果的にやってることにあとづけでポジションがついた、という経験があります。

まだ抽象的に感じて腹落ちしない場合、ぜひ身近な活躍している人、入社後昇進し仕事を広げていった人を具体的に想像し当てはまらないか考えてみてください。必ずどれかしらの要素が絡んでいるのではないかと思います。できれば本人に実際どう考えていたかも相談してみるといいと思います。

実践編: 2つの信頼

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振る舞い

あなたが人を信頼するとき、おそらくその人の結果や仕事ぶりだけでなく、普段の言動や周りへの接し方、それに伴う印象が作用しているはずです。

これこそケースバイケースで一般化は難しそうですが、実はわかりやすい指針があります。多くのスタートアップは独自に「Value」「カルチャー」「行動指針」という言葉でその組織で正しい振る舞いを定義しています。信頼ってどうやって勝ち取っていったらいいかわからないという方がいれば、まずそういった会社が是とする言行に立ち返るのがよいでしょう。
ちょっとまだ疑問が残る場合は、チャンスを得て実際社内で活躍している人が、会社の文化・Valueを体現しているかどうか考えてみてください。多くの場合Valueが会社での行動規範であると同時に、それを体現しているかが信頼をはかる尺度でもあります。Valueにそった評価制度を持っている会社もあると思いますので、そういった評価と今一度向き合ってみるのもいいかもしれません。

実績

これは言わずもがなかもしれませんが、いままでその会社での仕事やその進め方すべてがあなたの実績をして信頼を生み出しています。

例えば、あなたが仕事を最後まで諦めないでやってくれる人だとか、頼んだことは必ずやってくれたという仕事への取り組みや成果は、上司がしっかり見ていれば必ず信頼を生み出しています。大事な役割だが適任がいない、だれかにリスクがあっても任せないといけない意思決定のときに、この信頼は無視できない要素であるといえます。

最後に

元となった資料を見返すと

サマリ:みなさんが入ったスタートアップはたしかに成長できる環境だが、因数分解をして解像度を上げると、それは不足x信頼でできている。この構造を理解せずがむしゃらに運任せでチャンスを待つのはややもったいない。不足の4つのパターンをうまく使いこなし、地道に信頼をためて、最大限の機会を掴みましょう。

というのがもともとの資料の趣旨でした。今でもこれは大きく変わらないと改めて感じました。
そして同時にこの記事の内容を理解するのは本当にスタート地点で、例で書いた対策のようなものをもっと深く詳細に、

「今自分の環境には4つそれぞれの点でどんな不足があって将来どんな不足がおきそうなのか」
「自分の信頼、信用残高は今どれくらいで、どんな振る舞いをもっとしていったらいいのか、どんな実績を積み上げて信頼を勝ち取っていけそうなのか」

などを例えば下のフォーマットに一度でいいので書き出してじっくり考えてみることが一番大事だと思います。

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年末年始、今年の抱負ややりたいことを考えた人も多いのではないかと思います。今回紹介したような今までとはちょっと違う切り口で整理してみることで思わぬ発見があり、2021年よりいいスタートがきれるのではないかと思います。

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