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日本の空の玄関口の時系列データを眺めていたら、国際線航空券が高い理由がよく分かった話(No.3)

関東でデータサイエンティスト&リサーチャー、もとい、なんでも調査屋をしているおっさんです。
ゴールデンウィークが近づいてきましたね。
我が家は台湾南部に旅に出る予定です。しかし…

国際線航空券がめっちゃ高い!

居住地域周辺の世帯所得の平均に近い我が家の経済的境遇では、今回の台湾行きの国際線航空券は、溜息出まくりに高かったです。
今回の往復運賃、2010年代だったら台湾4往復くらいできたんじゃね?と思うくらいでした。航空会社のサイトから3か月前に予約したのに。
もちろん庶民席(エコノミークラス)です。

国際線航空券の高止まりの原因として、「円安のせい」「原油高のせい」「パイロットや空港スタッフの人手不足」などが言われています。
でも、国内線は国際線ほど高止まりしている感はありません。原油高や人手不足は国内線にも影響するはずですし、円安と言うても1ドル100円切ってた頃に比べて1.5倍強じゃないですか。「4往復できたんじゃね?と思うくらい高い」理由には弱いように思います。

私の静かな憤りの背景を掴むべく、来週の荷造りの傍ら、成田国際空港の国際線発着データを見てみました。

成田空港の旅客データを経年比較してみると…

成田国際空港は、日本国内の国際線昇降客数シェア47.5%(※1)を誇る日本の玄関口です。雨の日の息子の遊び場のひとつでもあり、我が家がとってもお世話になっている空港です。成田国際空港株式会社が公表している、開港以来の国際線旅客便データを集計してみます。

※1 国土交通省「空港管理状況調書」より2022年の国際線昇降客数の空港別航空比

成田国際空港株式会社「空港の運用状況」
(横道にそれますが、数値がPDFで公開されていると、分析できる形にするのに手間がかかるんですよね…せめてExcelかcsvで公開してほしい💦)

経済学はかじった程度ですが、公開データから発着回数と旅客者数に注目し、「需要と供給」みたいな見方をしてみます。
コロナ禍以降も便数が戻ってきていなかったら、供給不足で運賃が高止まりしている、といった理由が考えられそうです。

成田国際空港の国際線旅客便の発着回数と国際線旅客者数の推移

国際線の発着回数は、2019年の約18.1万回/年がピークでした。コロナ禍でぐっと減ったあと、2023年は約12.5万回/年まで増加しています。2023年の発着回数はピークの約70%。国際線の便数はまだまだ復活途上にも思います。
しかし、国際線旅客者数もコロナ禍前の水準までは回復していないので、一概に供給不足とは言えなさそうにも見えます。

旅客人数を発着回数で割って、国際線1発着あたり平均旅客者数を出してみると…

成田国際空港の国際線における発着あたり旅客者数の推移

コロナ禍で落ち込んだ2020~2022年は別として、2010年代と2023年の国際線1発着あたり平均旅客者数はほぼ同じ。
コロナ禍後に著しく供給不足に陥っている、ということではなさそうです。
むしろ1980年~90年の方が多いですね…ジャンボジェットがバンバン飛んでいた時期と重なりそうです。
いまはLCCの台頭や直行便ニーズなどで中・小型機が主流ですから、1便あたりの客数は昔より少な目なんでしょうね。

需要の大部分を担うのは?

去年、成田空港の「空港スタッフが足りず、新規就航の受け入れができていない」みたいなニュースがありました。
ですが推移データを見る限り、国際線がめちゃくちゃ供給不足状態にある訳ではなさそうです。
やはり、国際線航空券が高いのは円安・原油高のせいなのか??

ここで、成田空港のデータを見ていてふと気になったことが。
旅客者数の内訳です。

成田国際空港の国際線旅客者の内訳推移

2010年代以降の外国人旅客者数の伸びがハンバ無かったんですね。
政府の訪日外国人旅行者を増やす施策は、めっちゃ効果を挙げたていたことが分かります。コロナ禍でほぼ0まで減った外国人旅客者数は、2023年にはほぼコロナ禍前の水準まで回復した模様。
一方で、日本人、コロナ禍後海外行ってないんですね…

日本発着便の主要顧客はもはや日本人ではない?

外国人旅客者数と日本人旅客者数の関係をシンプルに可視化するために、日本人旅行者数を1とした場合の外国人旅行者数の比率を出してみます。

成田国際空港の国際線発着便利用者における外国人旅客者と日本人旅客者の比率

成田空港の外国人旅客数と日本人旅客数の比率は、2000年代まで0.5前後でした。日本の空の玄関口は、主にアウトバウンド(日本人が海外に飛び立つ)の玄関口だったのです。
それが2010年代は、政府の訪日外国人旅行者を増やす施策の甲斐もあって、この比率が1前後になりました。日本人も外国人同じくらい利用する玄関口になっていたんですね。そんな時代にコロナ禍が発生。
そして、コロナ禍以降の日本の玄関口は、主にインバウンド(外国人が日本を訪れる)の玄関口になったようです。

訪日外国人数は今年(2024年)さらに増えるだろうと言われているようです。私たち日本人には高く感じる日本発着便の国際線航空券の価格も、圧倒的に多い訪日外国人が買ってくれる限り、高止まりしそうに思います。

ちなみに昨今、円安・円安と言われていますが、いまのドル円レートは1980年代後半と同水準です。上のグラフを見る限り、そんな1980年代後半の成田空港は、圧倒的に日本人旅客者数が多い空港でした。

コロナ禍で、日本人はより内向き志向になっちゃったのか?


以上、成田空港の公開データから長期推移を可視化して、国際線航空券が高どまりしている理由を考えてみました。
私の結論は、外国人旅客数が日本人旅客数を大幅に上回る状況が続く限り、国際線航空券の価格は大きく下がらない(もしくはさらに上がる)だろうというものです。

データを見ていて気になったのは、コロナ禍以降の日本人の国際線利用者の戻りの悪さでした。
さらにいえば、コロナ禍直前の2019年時点ですでに、日本人の国際線旅客者数は1990年代前半水準まで低下していたんですよね…コロナ禍が低下傾向に拍車をかけたようにも見えます。
私たちは、この国は、結構内向き志向が強いのかもしれない。
ちょっとそんな不安も感じちゃったデータでした。

しかたない。まずは大枚はたいた台湾旅行を楽しもう💦
ということで荷造り再開します。

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