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【コーヒースプーン②】日だまりが心地よい話
温かな日差しが窓から差し込む昼下がり。皆様いかがお過ごしだろうか。私はとても幸せだ。
この窓辺の席は私のお気に入り。最近見つけた私のオアシスなのだ。
喫茶「ねこの手」にはいくつかの隠れ家的な席が存在する。
まず入り口から入って左右には窓際二人席が観葉植物に隠されるように配置されている。つぎに中央のカウンター席の脇から伸びる廊下に壁をくり抜いたような第二の隠れ家席。
そしてその廊下の奥にある階段を上がると、二階席。こじんまりとしたこの空間はまさに隠れ家席の宝庫と言える。
その中でもこの窓辺席は店内でも珍しい一日中日の当たる場所だ。全身を包むこの日当たり。この狭さ。まさに至福……。
あまりの気持ちよさに、私はしばし目を閉じ、太陽の暖かさを自身の黒い衣に存分に吸収させる。
日が傾いてきた。窓から見える通りでは
真っ黒に、目のさめるようなピンク、黄色い帽子をかぶったちんまりした頭たちが、川のように右から左へわらわらと流れていく。一体そっちに何があるのかと毎日思わずにはいられない。
こうやってゆらゆらと取り留めの無い考えをくゆらせるのにも飽きてきた。私は立ち上がり席を後にする。
いきなり立ち上がったので、周りの客の視線を若干集めながらも、何気ない顔で店内を歩く。自慢ではないが、なかなか長い足をした私が堂々と歩くと、さながらファッションショーの様相である。
机と椅子の森を超え、1階カウンター前にてマスターに声をかける。髪をオールバックにして、清潔感漂うYシャツに見を包むこの方もまた、長い足を持っている。悔しいが私よりも背は高い。
マスターは私にゆったりと歩み寄り
「今日の日当たりはいかがでしたか?」
と、訪ねた。
マスターはいつもこの質問をする。きっと私がこの喫茶店に来始めた頃、日当たりを"残念だ"と酷評したのを根に持っているのだ。そんな意地悪な質問に、プライドの高い私は素直に答えることができないでいる。
『まぁ、良かったほうですね。』
「そうですか。でしたらまたお越しください。」
マスターと代わり映えのしないお別れの挨拶をして、私は家路についた。
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「…店長、店長!」
ホールの作業を終えカウンターに帰ってくるやいなや、興奮気味に話しかけてきたのは最近入ったアルバイトの三谷さんだ。
「何なんですか今のは!」
三谷さんは高校2年生で“かわいい”に人一倍敏感だ。
「あの方はうちの大事な常連さんだよ。ここに来るようになったのは1,2年前くらいからかな?」
「え〜!ていうか店長今、お話されてましたよね!?どんな関係!?」
「どんなも何も、三谷さんも見たことあるでしょ。2階の窓際席にいつもいるし。」
その言葉に三谷さんは息を呑み、そのまま潜めた。
「あ…! え、あ〜⁉ すみません私てっきりああいう置物かと…」
「あはは。まぁはじめた見たらそうか。説明し忘れてたよ。後で触りに来る?」
「え!いいんですか?是非是非!」
「急にすると逃げるから、そっとね」
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