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ひび

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日々のことについて文章を書きます。
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2021年2月の記事一覧

秘密の花園

誰にでも秘密はあるもので、勿論、自分にも秘密はある。森の奥にある美しい花園には、誰にも言えずひた隠しにしている様々な秘密たちが、ひっそりと埋められているのだ。

たとえばひとつ暴露するが、実は、自分は、都道府県の位置がいまいち分からない。それなりの高校、大学へ行ったにも関わらず、未だに山形県や徳島県の場所を、しっかりと把握していないのである。勿論、東北らへん、四国とかそのへん、くらいのことは分かる

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春はいつ

世の中にはとんでもない悪党がいる。携帯を開けば業者を装った詐欺まがいのメールが来るし、夜道を歩けば、急にすれ違いざま、見んなコラァ!と怒鳴られる。電車に乗れば尻を触られ、自転車を停めれば盗まれる。我が店の郵便箱は段ボールで自作したものなのだが、何者かにぐちゃぐちゃ踏みつけられていたし、中には郵便物を置き引きする輩までいるというから驚きである。

そんな悪党にもきっと暮らしがある。どうせ家に帰れば爪

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青年と乙女

こないだ我が店で、21歳の青年と乙女と、三人でピザを食べた(何と幸せな33歳だろう)。青年と乙女は、学校も出身も性格も丸っきり違うのだが、共にもうすぐ大学4回生で、卒業したら社会で働く、そろそろ就職活動をせねばならない、けれども実際まだ何も決まっていない、やばい、という点で、二人とも悩んでいるようだった。自分が何をしたいのか、どんな仕事が合っているのか、今何をすべきなのか、焦る気持ちは膨らんで、周

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いつも女のことばかり考えている。敢えて、女、と呼ぼう。おそらく自分は、この世に女が存在していなければ、とっくに自害しているだろう。けれども、女が何を考えて生きているのか、自分は未だにちっとも分からない。この33年間で培った浅はかな知識と薄っぺらい経験の結果、理解不能、という結論が出た。何故泣いているのか、何故笑っているのか、何故怒っているのか、分からない。女は何故かその理由をはっきりとは言わぬ。し

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人間

たとえば山や海や崖、星空やオーロラやグランドキャニオン。人はそれらを見て、あぁ、自然はこんなにも美しく、人智を超えた素晴らしさがあるのだ、と感動する。その気持ちは分かるのだが、正直、自分はさほど感動しない。感動レベルでいうと、せいぜいマックス50くらい、というか、あぁ綺麗やな、といった感想しか出てこない。

大仏や鉄塔や聖堂、モニュメントや看板、街並み、を見ると、時折、滅茶苦茶に感動することがある

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今夜、歯が欠けた

飯を食っていたら奥歯がガリと欠けて、口の中から歯の欠片がポロリと出た。明日は我が店の6周年ライヴだというのに、最悪、不吉な予感がするではないか。

実は一ヶ月ほど前から奥歯の調子が悪くて、痛みこそ無いが何か違和感を感じる、舌でねぶると歯の表面が飛び出ているような感覚だったので、これは歯医者に行かねばと思っていた。そして近所の歯医者に予約を入れようとしたのだが、保険証が見つからない。これが無いと莫大

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ぶた

自分には何かと折につけてよく描くぶたの絵がある。

ウォンバットと間違えられることもあるのだが、これはぶたであるし、どう見てもぶたに違いない。チラシや宣伝の際、グッズのデザイン、またサインなど書くとき、いつの間にか自分は、まるでシンボルマークのように、このぶたを描くようになってしまった。描くにつれて、ぶたへの愛情は枯れるどころか高まるばかりで、また、誰かに、ぶた可愛い~、などと言われたら、とても嬉

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エンゼル

甘い甘いマシュマロにまみれて暮らせたら、どれほど幸せだろうか。もう何も心配はいらないよ、全てはうまくいくから、と未来の人が言ってくれたら、どれほど楽になれるだろうか。

髪が伸びたのを放っておけば、早く切れ早く切れと色々な人に言われて、鬱陶しい。それは、鼻先まで伸びた前髪よりも鬱陶しいのだ。そうして、いつの間にか自分はとても寂しい気持ちになる。マトモに生きていくには、まずは清潔に、身なりを整えなけ

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明け方に寝て、起きたのは9時。外がうるさいから目が覚めた。もう少し眠りたかったが仕方無い。立て続けに煙草を3本吸ってから、珈琲を淹れて飲んだ。風呂に入るのも着替えるのも歯を磨くのも面倒で、結局ボサボサ眼鏡パジャマのまま、郵便局とコンビニへ行き、帰宅して蕎麦を食べた。テレビを見ながら虚ろになって、布団に転がりYouTubeを見た。そのまま腐って、目を瞑り、少し寝て、起きて、自慰をして、また寝た。ハッ

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