青年と乙女

こないだ我が店で、21歳の青年と乙女と、三人でピザを食べた(何と幸せな33歳だろう)。青年と乙女は、学校も出身も性格も丸っきり違うのだが、共にもうすぐ大学4回生で、卒業したら社会で働く、そろそろ就職活動をせねばならない、けれども実際まだ何も決まっていない、やばい、という点で、二人とも悩んでいるようだった。自分が何をしたいのか、どんな仕事が合っているのか、今何をすべきなのか、焦る気持ちは膨らんで、周りの友達は就活の話ばかり、親にも色々言われて嫌になる、はぁ、もう嫌や、どないしよ、やばいっす、やばいよね、といった会話を聞きながら、自分はピザをもしゃもしゃと食っていた。このチーズのやつ美味いな、と思った。

あぁ、今まさに目の前で、未来ある若者たちが悩んでいるのだ。ここはひとつ、人生の先輩として何かアドバイスをせねばならない。しかし自分という人間は、33年も生きてきて、ただの一度も就職はおろか就職活動すらしたことの無い、いわば社会の屑である。シューマイもトンカツも好きだが、就活は知らん。どういった活動をするのか、具体的なことは何も分からない。だから、もっと大きな、人生について、愛のあるメッセージを二人に投げようと思った。

「就活なんかせんでもええやん。というか、別に何もせんでもええやん。自分のタイミングで、何かしたくなったらすれば良いし、あかんかったら辞めたら良いし。楽しいことを見つけられたら、良いですね。ところで、このチーズのやつ美味いな。最後の一枚、これ食っていい?」

二人は呆れた様子で、大学まで行かせてもらったのに、仕事をしないわけにはいかない、と至極真っ当なことを言っていた。それからも色々と話したが、まともなアドバイスを自分が出来るはずも無く、最終的には、まァ何とかなるんちゃう、と、投げっぱなしも良いところであった。

昨今の若者は絶望に溢れている。一寸先は闇。道筋を決めるか、覚悟を決めるか、それでもやっぱりよく分からないなら、またここに来れば良い。分からないことだらけの私が、いつでもピザを奢るから。


何もいりません。舞台に来てください。