人間

たとえば山や海や崖、星空やオーロラやグランドキャニオン。人はそれらを見て、あぁ、自然はこんなにも美しく、人智を超えた素晴らしさがあるのだ、と感動する。その気持ちは分かるのだが、正直、自分はさほど感動しない。感動レベルでいうと、せいぜいマックス50くらい、というか、あぁ綺麗やな、といった感想しか出てこない。

大仏や鉄塔や聖堂、モニュメントや看板、街並み、を見ると、時折、滅茶苦茶に感動することがある。どうやら、人智を超えた圧倒的自然よりも、そうした人工物の方が、よっぽど自分の心に響くようである。子供の頃に太陽の塔を初めて見たときの、全身がぞわぞわとして感激したあの気持ち。また、東寺の立体曼荼羅を見たときの、沸き立つ高揚感。感動レベルがマックスになるのはいつも、人が作り出した何かである。深夜の高速道路から眺める工場地帯の光を見ると、人間!と思う。人間が、その知恵と手によって作り出す産物の底知れぬ凄みに、自分は思わずスピードを上げてしまう。舞台も同じようなものだ。

自分はきっと人間が好きなのだろう。実は同じくらい人間が怖くて仕方無いのだが、それはまた別の話。

何もいりません。舞台に来てください。