春はいつ

世の中にはとんでもない悪党がいる。携帯を開けば業者を装った詐欺まがいのメールが来るし、夜道を歩けば、急にすれ違いざま、見んなコラァ!と怒鳴られる。電車に乗れば尻を触られ、自転車を停めれば盗まれる。我が店の郵便箱は段ボールで自作したものなのだが、何者かにぐちゃぐちゃ踏みつけられていたし、中には郵便物を置き引きする輩までいるというから驚きである。

そんな悪党にもきっと暮らしがある。どうせ家に帰れば爪を切ったり髪を染めたり、コタツでみかんを食べたり、入浴剤で風呂に浸かったりしているのだ。いつか奴らを絶対にしばかなければならない。そのために、強くならなければならない。

あぁ、けれども腹はたるみ、歯は欠けて、目ヤニが付いたままの私だ。爪切りすら見つからぬ。そして、未だに夜は阿呆ほど寒い。もう強くならなくても良いから、私は眠りたい。春はいつ。そんなところに隠れていないで、早くこちらへ来なさい。温めて欲しいし、やっぱり温めてあげたい。


何もいりません。舞台に来てください。