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ペット用ジビエおやつ『島素材』の舞台裏 ーエリアイノベーション事業としての背景ー


ライターのフルカワです。前回の記事で、どれだけのこだわりで『島素材』という商品が作られているのかを紹介させていただきました。

この回は少し趣向を変え、ビジネス目線としてなぜペット用おやつを立ち上げたのか? を『島素材』の責任者である、合同会社渡海屋の糀屋さんと製造担当である、犬の一日の代表取締役社長・石隈さんに深掘りしていきます。

♦︎対談する人・・
糀屋 総一朗:合同会社渡海屋のペット事業『島素材』責任者。島素材を通じて、愛犬のうれしいと元気を応援する。主に福岡県宗像市にある大島の産業開発を行い、その第一弾としてジビエのペット用おやつを企画。投資家という一面も持ち、エリアイノベーションとして大島の魅力開発に携わる。
石隈 毅:犬の一日のオーナー。おやつを通じてワンちゃんと飼い主さんとのコミュニケーションのかけ橋になりたい、をモットーにペットフードの商品企画・製造・販売まで行う。(詳細はこちら

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『島素材』は大島のフェリー乗り場と宗像市本土にあるグローバルアリーナ、そしてオンラインで販売中。2020年12月に販売したが、リピーターのお客様も少しずつ増えてきている。

ーはじめに、お互いがパートナーになるきっかけは何だったのでしょうか?

糀屋「最初は門司のPORTOっていうゲストハウスでお会いしたんですよね。そこの運営の菊池さんから、いい人いるよって紹介いただきました」

石隈「当時は糀屋さんは犬の完全食を作れないかって話だったんですけれど、僕と出会っておやつに方向転換しましたよね」

糀屋「うん。2人で話をしているうちに決めた感じですね」

石隈「でも、ペットフードを作ろうと考えてたひとがおやつへ方向転換することってなかなか難しいことだと思うんです。それでいうと糀屋さんは柔軟性がありました」

糀屋「石隈さんが怪しければ任せてないと思います(笑)。そもそもこの事業の起点は、島の獣害である猪をなんとか産業に出来ないか、というところからの発想だったので、島の困りごとを解決できればさほど大きな問題ではなかったんですよね」

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島の問題を良い方向に転換しようにという着想から島素材は生まれた。

ージビエをペット用商品にする、というアイデアが面白いですね。

糀屋「人間に出すと法的な部分で引っかかるかもしれないので、だったらと視点を変えてみたんですよね。おかげでヘルシーおやつとして希少性の高いプロダクトができたので、それを皮切りにペットに優しい島、として大島にさらにペットに関連したコンテンツを作っていこうと動いています」

ー石隈さんも今回、他社とタッグを組むのが初めてと聞きましたが、なぜ一緒にやろうと思ったんでしょうか?

石隈「糀屋さんの人柄と、大島の素材の豊かさに惹かれました。これまでもさまざまな形でコラボできないかという声は他でもいただいてはいますが、数字(売上)だけの世界で判断するのは絶対に嫌だったんですよね。

やはり素材の良いものにこだっていきたいので、近い九州内でご一緒できるならとお引き受けしました。そのこだわりあってイノシシ肉は冷凍ではなくチルド配送、旨味が詰まったお肉が新鮮な状態で届いたりと、おかげでいい品質の商品を製品化できています」

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今回、石隈さんは製造協力だけでなくホームページ制作やロゴデザインなど商品化までのブランディングを担う。

糀屋「鮮度でいえば、ゆくゆくは製造工場も大島内で作っていきたいんですよね」

石隈「そうそう、最初の段階からその話はしていましたよね。工場も作れば島に雇用も生まれる。それって持続的ですよねって」

糀屋「そう、初めから。なので、島素材の商品化は、宗像市大島の地域活性につながる新たな産業開発、エリアイノベーションの文脈でうまれたものなんですよね

ー話が逸れるかもしれませんが、糀屋さんは渡海屋を通じて大島でさまざまなコンテンツをメンバーと生み出していますよね。

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エリアイノベーションを主眼に地域開発を行う糀屋さんは、単なる事業投資だけでなく産業開発も同時に行う。『島素材』もそうだが、事業安定まではチームで、また、自身もプレイヤーとしても動くなどケースバイケースで必要なリソースを補っている。

「会いにきてください、海、島、自然、そして人に。」と呼びかけるラグジュアリーステイ空間『MINAWA』。オーシャンビューの宿からは青い海と白い灯台が望める。

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自転車&自動車レンタルサービス島内観光をスムーズにできるよう事業化。今までも島内にあったサービスだが、先着順で昼には出払っていたりなど機会損失があったので、事前予約制にして確実にライドできるような仕組みに。

アクティビティ×大島で、島サウナを立ち上げ。神守る島・大島ならではの歴史を活かした全国初・禊サウナを企画。大島の塩で清め、大島の柑橘を使ったアロマ水でロウリュウなど地元の特産品も活かしたプラン。

そして今回の『島素材』は、渡海屋初のプロダクトとして開発。この商品は島の人たちへ自分たちの取り組みを理解してもらう手立てでもあるという。島素材のロゴは大島の風、山、川を表現。

『資本の“地域循環経済圏”をつくる』

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糀屋「僕は、地域活性としてその土地の外から、つまり外貨を稼ぐことが最重要だと考えています。地域に稼ぐ産業があればインフラの維持ができ、地域での生活が保持される。

すると産業の連鎖が起きて、そこに面白い人たちが集まってくる、新しいビジネスが立ち上がり、選択肢を増やすことによって、主体的にその土地を選ぶ人たちが出てくるようになる。すると、自然と自分たちの故郷に誇りを持てると思うんです」

ーシビックプライド(郷土愛)を持ち始めるきっかけ作りをしている訳ですね。

糀屋「そうです。ただ稼ぐ産業を作りましょう、と教科書的に言ってもいざ内側から作るのはなかなか難しいこと。大島に限らずですが、なかなか1泊10万円の宿をやろうなんてぶっ飛んだ発想は出てこないですよね。東京から頭おかしい奴がきたと思われてしまうし、実際そんな反応でした(笑)。

特に大島はこれまで一次産業で家計を賄ってきた地域で、サービス領域の目線をもちづらい地域なんです。だけれども人口減は起こっているし漁獲高も確実に減っていっている。

外貨を稼ぐことは必要だけれども、なかなかのハードルの高いことだと思うんですね。じゃあそのハードルを僕が背負いましょう、とリスクマネーも含めて外の目線を活かしたコンテンツを開発して実際に行動しているんです」

ーなるほど、島の可能性を、島の人たちのリスクを低くしながら引き出しているんですね。

糀屋「そして僕のファンドの最大の特徴としては、最終的に地域の人たちに保有してもらうことが目的であること。採算性が取れる事業を育成したのちには、できれば大島の住民たちに、それが難しくてもせめては宗像市で暮らす地元の人へ売却譲渡していきます。

これは何故かというと、僕自身が県外在住者なので保有し続けると利益が県外に出ていくんですよね。労働所得だけでない、オーナー所得も地域で回していかないと本当の意味で地域は潤っていかないので、事業は譲渡していこうと思っています。もちろん譲渡後も運営面には関わります。経済資本を循環できる仕組みを地域につくる。ここが他のファンドとの違いですね」

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ーなぜ、そこまでしてエリアイノベーションに力を入れるのでしょうか?

糀屋「地域活性をしようと思ったこと自体、大島が初めてなんです。最初大島へ訪れた時は、景色のいい宿をつくろうと無邪気に考えていただけだった。

けれどもいざ視察をしたら、魚介類は想像以上に新鮮で、もっと気軽にこの味が島内で食べられたらいいなと感じたし、フェリー乗り場などのお土産やもバスソルトとか、地元の特産を生かした商品ももっと買い求めるひとが増えそうだなと思いました。

僕が考えるに、旅の記憶って食の記憶で構成されていると思ってるのですが、その土地で食べたものが満足なのものだと、その旅も場所自体が良い記憶として残るんですよね。現状はアンケートをみても大島より博多の飲食店の方が人気ですが、もっと滋味に富んだ料理を増やしていければこの島の認知度は変わってくると思います」

いいものがあるのに価値づけられていないという地域があるなら、なんとかしなきゃいけないんじゃないかと思った

ー島といえば市街地より美味しいものが出てくるイメージありますもんね。

糀屋それって一時が万事で、おもてなしに対する感覚がずれちゃっていると、大島の魅力が勘違いされていて人が来なくなってしまう。大島の魅力に自分たちが気付けないままだと、人が減り、自治体の中でお荷物になり、どんどん人が島からいなくなるという未来像が、そのとき、その景色が容易に想像ついたんです。バーっとわかってしまった。

これはやばいな、そうならないようにどうしたらいいのかな、と色々考えて友人の地方創生本を読んだりした結果、地域にお金が回る仕組みを作らなきゃいけない、そのために必要なことは何かを考えるようになったんです」

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すごくいいところが台無しになっている、さまざま地域でそういうことが起こっているんだという現実に直面した。

糀屋「大島には高校がないので、必ず外にでるのですが、ほとんどの若者が戻ってこない状況です。漁師か農業の一次産業が盛んだったが故に、将来どちらかの道を選択しないと故郷に戻ることができない。けれどそこに地域資源が生まれて、経済的に循環できて、選択肢が増えたら、島での生活が幸せに暮らしていける場所になり得る。そのため、好循環な仕組みができるように『島素材』を含めてさまざまなコンテンツを開発・運営して新しい経済を島にもたらせられたらと試行錯誤しています。正直……大変なことばっかりですけれどね。それでも何事も、やってみないとわからないので」

石隈「糀屋さんの、まずはやってみるってすごく大切な考え方ですよね。例えば島素材でも最初から利益はどれくらいで、ロットはいくつでとガチガチに決めていくとなかなか商品化もしづらい。新しいものづくりをするなら、先にリリースしてこういうの足していきましょう、別の要素をインしていきましょう、という話は前向きだし、次のステージを向いていけますね」

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福岡県宗像市・大島の景色。神守る島として歴史や風習と共にまちの人たちは生きている。そこも魅力のひとつと糀屋さんは話す。

ー『島素材』は将来的にどうなっていたいですか?

石隈「島素材も、さまざまな展開ができそうですよね。ジビエもニッチな分野なので敵対せずどちらかというと他地域と連携して、ジビエの食べ比べセットとかを作っていくのも面白そうです。もちろんジビエだけでなくイサキ、アカモクなど海産物を使った商品開発も手がけてみたいですね」

糀屋「たとえるなら無印良品の様に、さまざまなジャンルに横展開していきたいですよね。ペットだけでなく人間用のプロダクトなど、島素材というブランド名のもと島発の加工品を中心に拡張していきたい」

石隈「小豆島のオリーブ、じゃないけれど、そもそもその土地に訪れていなくてもブランドとして浸透しているものもあるじゃないですか。島素材がそうなっていけばいいですよね」

糀屋「そうですね。島の豊かな素材を使い、福岡を代表するブランドになってもらいたい。それをきっかけに、ひとりでも大島に足を運んでもらえたらなと思います。最近では、ペットホテルの開設準備も進めています。エリアイノベーションを通じて、大島の魅力や可能性を体感してもらいたいですね」

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新たな商品開発で盛り上がるお二人。これからの島素材、そして大島にどうぞご注目ください。

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