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「人間はやってはいけないことをやってしまうのはどうして?」先生たちは少女の闇堕ちを防げるか—— #冬休み子ども科学電話相談 12月24日ピックアップ

NHKラジオ番組『冬休み子ども科学電話相談』がやってきました。

このnoteでは、毎日ひとつの質問を取り上げ、ちょっとだけ深く掘り下げます。というわけで本日にピックアップはこちら。

虫は教えてもらわなくても知っている、人間は……

質問は小学2年生女子。ジガバチのメスが巣から出てくるのをオスが待っていたり、テントウムシの色を見て毒があるから食べないようにしたり、アリヅカコウロギがアリと同じ匂いをまとって襲われないようにしたりと、虫は教えてもらわなくてもいろいろ知っています。

でも人間は、海にゴミを捨てたり木を切りすぎたりすることはダメなことだと教えてもらっているのに、どうしてやってしまうのか。やってはダメなことをやらないように進化できるのか、というのが質問。

これはまずいです。このままこじらせると、自然を愛するがあまり「人類は地球で生きるに値しない!」と言い出して闇堕ちする可能性があります。なんとかしてこの少女を闇から救わないといけません。

いつになるかわからないけど希望をもちましょう

これに答えるのは昆虫の清水先生(大阪府営 箕面公園昆虫館 副館長)。少女の「命に関わることは悪い」という発言をもとに、アリの世界では生きるために他のアリを殺したり、逆に殺されたりすることもあるけど、全体のバランスが整っていることを説明。

ところが人間の場合、科学によって力をもちすぎたあまり、バランスを崩すほど自然を壊しているのではないかと清水先生は考えました。例えば人工的に作られたプラスチックは自然でほとんど分解されないため、それが自然に迷惑をかけているのではないか。

でも、一人ひとりが自然のことを意識すれば、いつになるかはわからないけど、結果として自分たちのためにもなるから希望をもちましょう、と。

動物の成島先生(日本動物園水族館協会 専務理事)は、人間は勉強していいことと悪いことを学習できる生物だから、みんなで相談すればすばらしい世界が広がっていくはずと補足。

最後はなんとなく明るい声で「さよなら」とあいさつしました。

大切なのは、少女のモヤッとした思いを解きほぐすこと

細かく見れば、論理として弱いところは確かにあります。

昆虫の行動のほとんどは本能によるもので、学習とは少し違います。昆虫の行動と人間の行動の規模は違うし、そもそも昆虫にとって「やっちゃダメなこと」はないけどシロアリ被害は人間にとって「やられると困ること」です。

もちろん、人間の行動規範としての「やっちゃダメなこと」と昆虫の本能は全然違います。

それでも、昆虫には昆虫の世界があって、それを知った上で人間の自然破壊をどう考えるかという視点の違いをもつことは大切です。

このやり取りで重要なのは、昆虫の本能や厳密な進化の定義ではなくて、少女のモヤッとした思いを解きほぐすことではないか、と思います。この場合、人間は自然を理解して共存できるか、というところです。

自然は広大で、理解するにはまだまだ時間がかかるけど、少女が希望をもって次の世代くらいには自然といい関係ができていればいいですね。

以下のページにテキストと聴き逃し配信があるので合わせてどうぞ。

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