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まわる世界と置き去りのわたし/『藍色』の話

2019年ごろから「Stray Beep」というバンドに誘ってもらい、ちょこちょこ歌詞を作ったりしている。大変ありがたい。

その中の『藍色』という曲にまつわるようなことを少し書き散らしたくなった。曲や歌詞のリンクは最後に貼っておくので、もしよかったらチェックしてもらえると嬉しい。感想をいただけるとなお嬉しい。

(とは言いつつ、『藍色』とは全く関係のないエッセイ的記事としても読めるはずなので、聴かなくても大丈夫です笑。)

レースが始まった覚えはない。ロードムービーの舞台に立った覚えもない。それでも、ある不快な感覚が離れない。「まわりの人たちに置いて行かれている」と。

不安とは多くの場合、自分の内側というよりは社会との関係の中で生じるものである。たとえば24歳にもなって、平日の昼間、スーパーをうろついてはミネラルウォーターやら惣菜やら買っているとき。知り合いのみんなは「社会」とやらで活躍してるだろうに、俺は未だに地元をうろうろしている。果たしてこれでいいのかね。

しかし待たれたい。その「社会」ってそもそも何だろうか。社会が自分を置いていく?陳腐な疎外感?……よもや地球とのスピード対決? いつのまにそんな勝負に乗ってしまったんだ。今すぐ降りればいいじゃないか。 

「ねえ、あの時のあれ、可笑しかったね」
「ごめん、そういう細かいこと覚えてないんだ。それより楽しい明日の準備をしなきゃ」
「……そう、じゃあお気をつけて。あなたの輝かしい未来のために」

過去を振り返り、慈しむのが好きだ。けれどもなんとなく世間で共有されている前向きな(そう言ってよければ進歩主義的な)価値観においては、「振り返らずに前だけ見て、目の前のことに打ち込む」ほうが良しとされるみたいだ。まあ確かに、未来だけ見てるのはかっこいい。それはわかる。

でも、そんなら「思い出づくり」なる言葉は一体何なんだ。未来から振り返ったときに「良き思い出」となるように今を楽しもう……ってことなら、やっぱり振り返っていいんじゃないか。むしろ振り返るために生きてるとも言える。「思い出づくり」なる言葉を一度でも使ったことある人は、過去を見てばかりの俺のことをバカにできないのだ。

過去を見てばかり。恥じ入るほどに。今と未来を生きようとしている友たちに、ちっとも顔向けできないほどに。

2014年、高3のときから欠かさず「ほぼ日手帳」に日記をつけている。というか、中学生のときからアメブロをやってたり、高1高2のときも小さなノートに数行の日記を書いていたりしたから、ダイアリー歴は実際6年どころじゃない。れっきとした趣味のひとつといえる。人生を日記に書き残しているのか?それとも逆に、日記に書き残すために人生をやっているのか?いまや分からない。

ガッツリ読み直すほどのヒマは実際あんまりないんだけど、たまーに読む。そしていろいろなことを思う。

 「この頃はキラキラしてんなあ」「こんなことで悩んでるなんてかわいい」「数年前から進歩してないな」「昔の俺はこんないい文章を書けたのか」「今の俺はこの頃の俺の希望に恥じない人間となれているのか」……

さて。『藍色』の詞は、子供でも大人でもないような、どっちつかずの今の自分だからこそ書けることを書こう、というコンセプトで作った。

恋が生まれたり消えたりとか
そんな話題ばっかあふれている
アサガオの花が咲くだけだって
はしゃぎ回っていたあの日はどこ?

みんながうつむくホームで
電車に乗れずに立ち尽くしたまま
いっそうブルー
濁ってくだけの青い鳥たち
さあ 僕のこの心までついばんでいくの?

恋愛の話、下世話な話、そりゃ確かに楽しいけれど、もっと面白いことは他にもあるだろうに。あなたとしゃべっているときは、「あなたの好きな人」じゃなくて「あなた」のことを聞かせてほしい。下を見てスマホをいじるのもいいけれど、こっちを向いてほしくもある。

行かないでもっと目を見て
ねえ ここにいて
こんな時代でも僕ら一緒なら
愛よりも青くて心躍る色
描けやしなくても 焼き付けながら

くだらない笑いがいいから
遊び揺れようよ
どうせ格好つかない僕らなんだから
誰よりも自由で 無垢な羽のまま
簡単に黒く染められたりはしないでしょう

何にも染まらない「無垢な羽」、そんなものが本当にあるだろうか。勝手に過去を美化しているだけなんじゃないのか。「格好つかない」なんて身も蓋もないことを言ったらダメで、無理にでも「社会」との折り合いをつけながら、なんとか格好つけようとしていくしかないんじゃないのか。……大人ならばこんな風にいくらでも、「それっぽいこと」は言えてしまう。それなりにお利口な言い訳を。

けれど、そもそもそういう「お利口な自分」がいるからこそ、僕はカウンターとして『藍色』の歌詞を作ったのだ。

だからなんというか、聴いてくれる人にとっても素敵なカウンターになれていたら、こんなに嬉しいことはない。

【配信リンクはこちら】
(その他の配信サービスにも曲はあるはずなので、もしよかったら「StrayBeep」で検索してみてください。)


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