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【後編】子どもの将来は親の〇〇で決まる!?〜「ハーレム・チルドレンズ・ゾーンの挑戦」を読み解くために〜

こんにちは!島子屋のちーちゃんです。

さて前回につづき、教育界の話題の新刊
ハーレム・チルドレンズ・ゾーンの挑戦 貧乏人は教育で抜け出せるのか?
ポール・タフ著 みすず書房

について解説していきたいとおもいます。

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前編では本書を理解するためにハーレム・チルドレンズ・ゾーン(HCZ)の概要と
チャーター・スクール制度についてさらっと説明しました。

読んでみたい方は以下の記事をどうぞ!

後編では、本書でキーポイントとなる論文をいくつか紹介していきますね。

子どもとかかわるうえでの大事な要素がたくさん含まれているので
これからこの本を手にとってみたい人はもちろんのこと、
教育にかかわる人、
子育て中のお父さんお母さんにもぜひ読んでほしい内容です。

それではいってみましょう!

【ポイント③】子どもの将来は親の○○で決まる?!

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本のなかで取りあげられている研究はさまざまありますが、
貧富の差により学力に差がつくということ、さらにはそれはなぜかというところに焦点が当てられています。

まず、「黒人と白人の得点差」という学術論文。
“Jencks and Phillips, The Black-White Test Score Gap,1998”

この研究ではこう結論づけられています:
「実際のところ、親の接し方を変えることが、
子どもの認知能力を向上させるためにできる唯一にしてもっとも重要な方法だろう」

3歳になるころには、専門職の家庭の子供が1100語を身につけるのに対し、
生活保護の家庭の子供が身につけたのは525語だった。

この差の原因となるのが「親の発語」であるといいます。
単純な発話の数にちがいがあるのはもちろんのこと、
生活保護家庭は禁止したり非難するようなネガティブな言葉かけが多く、
専門職家庭は褒めたり認めたりするポジティブな言葉かけが多かったという結果に。

要するに、子どもの認知能力の高さを決めるのは
親の経済的な地位や人種ではなく、子どもの言葉にまつわる体験であるということになります。

その後の別の研究により、親の愛情表現が子どもに与える影響は、
脳の底部近くの側頭葉内側部を刺激し、記憶力の発達を促す物理的な力であることもわかってきました。

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私は2つのこの研究結果にとても勇気づけられました。
日本でも地域や世帯収入による教育格差が存在することは明らかにされています。
でもそれは、子どもの能力が生まれながらにして決まっていることではないということ。
環境によって子どもの能力はいくらでも高められるのだということなのです。

HCZの創設者であるジェフリー・カナダ氏はこの研究に着目し、
ベイビー・カレッジという乳幼児の保護者向けのプログラムを実施して
家庭環境への早期の介入を行なっています。

【ポイント④】「未知の要因」

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HCZの放課後学習プログラムでは、学力の向上を目的に
長時間にわたりストイックな教育を実践していました。
しかしカナダ氏は、子どものテスト結果を左右する「未知の要因」の存在に気がつきはじめます。

何時間も何時間もかけた認知能力の特訓より、
大多数の生徒の生活を変えるのは個人的なつながりなのだ。

そして本の中でジェームズ・J・ヘックマンの研究について言及しています。
島子屋でも何度も登場していますがみなさんおぼえていますか?

教育にかかわる超超超重要な研究。
ヘックマンはこの研究結果をもとに3つの大きな教訓を述べています:

1、人生で成功するかどうかは、認知的スキルだけでは決まらない。非認知能力も欠かせない。
2、認知能力も非認知能力も幼少期に発達し、その発達は家庭環境に左右される。
3、幼少期の介入に力を注ぐ公共政策によって、問題を改善することが可能だ。

ー「幼児教育の経済学」ジェームズ・J・ヘックマン、東洋経済新報社

HCZのカナダ氏もまた、自分のことをデータと情報を重んじる試験大好き人間だと言っています。
どの子にも持って生まれた潜在能力があるという確固たる信念をもちながらも、データや正確な情報に基づいて
HCZのプログラムを、自分たちが子どもたちを救い出すんだというスーパーヒーロー方式から、早期から継ぎ目なく子どもたちを支援するベルトコンベア式のプロジェクトへを目指し移行していきます。

【さいごに】 誰ひとり取り残さないために

さて、ここまで長々と解説してきた
「ハーレム・チルドレンズ・ゾーンの挑戦」
ジェフリー・カナダ氏の取り組み。

カナダ氏はTED Talks にて、
医療サービスやレクレーション、アートまで
なぜこのような包括的なサービスを提供するのかという問いに
I like kids.
こう答えると言っています。
「あなたがご自分のお子さんにしてるのと同じことをしてるまでです」

かっこいいなー。
貧困家庭の子どもたちを助けたい、
誰一人取り残さないというカナダ氏の考えは
2030年までに目指す持続可能な開発目標であるSDGsにも共通するところ。

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日本や屋久島で貧困問題というと
あまりピンとこないのが実際のところですが
たしかに教育格差は存在していると感じています。
(このへんもきちんとデータで示していきたいところですね)

さて今回、わたしが解説したのはごくごく一部の概要や背景知識なので、

ハーレム・チルドレンズ・ゾーンの挑戦 貧乏人は教育で抜け出せるのか?
ポール・タフ著 みすず書房

興味のある方はぜひご一読ください。

余談ですが、この本は時系列で話が進んでいくので、正直なところ理解するまでにけっこうな時間がかかりました。
この本を読むか読まないかは置いておいても、
長年の研究にもとづいた正確な情報やHCZのような革新的な事例をまずは知ってほしい。
そして、お父さんお母さんだからこそできる(にしかできない)ことがあるんだよと伝えたい。

そんな思いでこの記事を書いてみました^^
長い文章読んでいただきありがとうございます。
それでは、また!


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