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寝る前のネバーエンディングストーリー
最近の夫は、寝る前にアイマスクをつけた状態で「AIに支配された世の中で、仮のやんくん(私)とハグしよう」と言って、一人エアーハグをしている。アイマスクをつけているから、VR空間にいる気持ちになっているのだろう。
夫が言うに、アイマスクを着けたときの世界は、AIに支配され、やんくんと一緒にいるように感じていても、実体はなく、今私たちは離れ離れの状態らしい。
だから、実体を持ったやんくんを探す旅に出る、というストーリーとのこと。ただ、そこでは人間はVRゴーグルを生まれたときから装着させられ、死ぬまで外すことはできないそうだ。
手の感触だけを頼りに、仮想空間の外側のリアルな世界に意識を集中させて私を探している最中とのこと。
「やんくんはいませんか?」「やんくんは知りませんか?」と言いながらさ迷い、いまだ見つかっていないそう。
やんくんという呼び名は夫からしか呼ばれていないから、そもそもそれじゃあ探したって見つからないのでは?という突っ込みどころはありつつ、私もその世界に興味深々である。
一体、その世界の私はどこにいるのか。夫が一生懸命探しているのに、まだ姿を見せないなんて自分のことなのに悔しい!
私も同じように、遠い場所で実体を持った「本当の」夫を探しているのだろうか。もしくは、この世界は仮想空間ということに気が付かず、仮の世界で夫と仲良く暮らしているのだろうか。私のことだから多分後者だろう。
それはさておき、なんと壮大なSFストーリーだこと!映画の予告でこれが流れてきたら、私は観たい。ただこの話はいつもここまでで終わる。凡人どうしの会話、風呂敷は広げられても畳み方がわからないのだ。
どういうストーリーで夫は私を見つけられるのか、そこにどんな困難が待ち受けているのか、仮想世界を人類に強制しているのは一体だれなのか、物語はどう収束するのか。
残念ながらその発想は持ち合わせていない。だからこの物語は終わらない。これぞ本当のネバーエンディングストーリー、なんつって。
物語を書く人を本当に尊敬する。想像の話や設定は思い浮かんでも、終わらせることができない私たち。
そしてこんな世界が未来本当に起こり得たりして……と思いつつ、今日も夫の寝顔を見ながら、おやすみなさい。
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