海と嘘

沖縄。海沿いの道を少女が歩いている。

銃声が聞こえる。
少女が驚いて、銃声の方を見ると黒いスーツに身を包んだ男が海に向かって拳銃を構えている。

少女「ねー」
男が拳銃をとっさに隠す
少女「それ本物?」
「・・・そうだよ」
男がふっと笑って、拳銃を見せると少女が近づきマジマジと拳銃を観察する
少女「どっからきたの?」
「東京」
少女「何しに?」
「・・・ねーちゃん、可愛らしい顔してんじゃんねーか」
少女「あんた、ひとごろし・・でしょ?」
「なんだよ急に」
少女「だって、ひとごろしでしょ?そんな物騒なものを持ち込んで、
ここにいる誰かをなんかの理由で殺すんでしょ?ひとごろしじゃない」
「まぁ、、、違いねーな。人様のところに転がり込んで、その上、人殺しまでしようとしてんだもんな…」
我に帰り、落ち込んだ様子の男の横顔をじっと見つめる少女。
少女「あのさ、どんな気持ち?いま」
「え?どうって怖くて怖くて仕方ないよ。でもさ、仕事だから、失敗できねーだろ?緊張して引き金引けなかったらクソださいなぁって思って、練習してたんだよ」
男が指で拳銃の形を作って、海へ向かって撃つ真似をする
「バン!」
少女「人殺したことあるの?」
「・・・」
少女「初めてなの?」
頷く男。
少女「初めてってどんな感じなの?」
「(怪訝そうに)だからさっき言ったろ?こえーんだよ」
少女が男の顔をじっと覗き込む
「なんだよ?」
少女「やめちゃえば?誰も見張ってないんでしょ?その人殺してさ、そのあとあんたはどうなるの?」
「俺もさ、飛行機に乗ってここにきてさ、ずっとそういうこと考えてた、、、けど」
少女「けど?」
「けど自分でやるって決めだんだよ、それでここに来たから」
少女「あっそ」
「意外と冷てーな」
少女「うん。。いくの?」
「いくよ。ねーちゃん、ありがとな」
立ち上がり去る男。その背中に
**
少女**「わたしさ、ここにずっといるから」

陽が落ちる。少女はずっと浜辺にいる。

男が戻ってくる。
「おー、いたか、殺さなかったよ」
少女「・・・ほんと?。。。。まぁ良かった」
男が拳銃を海へと投げ込む。
「俺、タクヤっていうんだけど、ねぇちゃんさぁ、名前なんていうの?」
少女「ツバキ」
「いい名前だな」
少女「嬉しい」
「かわいいな、って褒めた時より嬉しそうだぞ」
少女「男の人が言うことなんてさ、ほとんど嘘だと思ってるから」
「違いねーな、男は嘘つきだ」
少女「…本当に殺してないの?」

何も答えずに海を見つめる男。

fin

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