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居酒屋店主が富士山に登るわけ

 いつか一緒に富士山に登りたい。息子を授かった時からそう思っていました。今年の夏、小学2年生の息子と富士山に登りました。
 
 かけがえのない経験になる、いやかけがえのない経験にする。そんな思いでした。私としては珍しく入念に下調べをし、しっかりとした装備も準備しました。父として、山でみっともない姿を息子に見せるわけにはいきませんからね。

 初日は5合目から7合目まで登り山小屋で一泊。翌日は夜明け前からご来光に合わせて登山を開始する親子ツアーに参加しました。 

 途中雨に降られたりもしましたが、二人とも元気に登り切りました。おっさん頑張りました。私の心配をよそに、息子は軽々と富士山に登って見せました。本当にたくましくなりました。

 そしてなにより、私楽しかったんです。本当に本当に楽しかたんです。息子が私にかけがえのない経験をさせてくれました。それなのに、息子が帰りのバスで私にこう言いました。「お父さん、富士山楽しかったね。誘ってくれてありがとう。」なんなんですか。なんなんでしょう、これは。

 息子よ、なぜ君はそんなにストレートに自分の気持ちを表現できるのだ。感謝の気持ちをひとつも飾ることなく相手に伝えられるのだ。君は真に強いしたくましい。私は本当に幸せな気持ちになりました。(親バカですいません。)

 そしてこうも思いました。私はいつから息子のような素直さをなくしたのだろう。今からでも息子のようになれないものか。いや少しでも近づけないものだろうか。

 もう一度素直な自分を取り戻す。想いを伝えて相手を幸せにする。どうせなら、自身が身を置く飲食の世界で修業をし直すべきだ。

 自身の仕事で関わる人たちを幸せ(笑顔)にする。息子が私を幸せな気持ちにしてくれたように、飲食はお客様を幸せにする力があります。その素直さがマグロにはあります。私が見落としていたようです。

 「鮪のシマハラ」に足りない何かに少しだけ気付けたような気がします。お客様に対しても一緒に働くスタッフに対しても、私自身がどうあるべきかを考える機会を富士登山と息子が与えてくれました。

 お客様の笑顔さえあればそれでいい。お客様を幸せにすれば、利益はあとからついてくる。語弊を恐れずに言えば、そんなタマじゃないんです。私は自分自身のために、「鮪のシマハラ」やっています。利益を優先して商いを進めています。緻密に緻密に利益を積算しています。このスタイルは今後もずっと変わらないと思います。

 でも、そこにほんの少しだけでも「笑顔と幸せ」をのっけます。「鮪のシマハラ」でお客様とスタッフを幸せにする表現を模索していきます。私自身を素直に表現していきます。

 暑かった夏のせいなのか、私はそんなことを考えています。来年の夏も息子と富士山に登れるよう、もっともっと「鮪のシマハラ」で幸せを量産するぞ。来年は私の方から、息子に感謝の気持ちを伝えよう。仕事に家族に、私は静かに燃えています。

 優しくなった島原にいつでも会いに来てくださいね。私は今日も現場でマグロを愛でています。

 

 

 

 

 

 

 


 

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