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焦ってもいい、焦らなくていい。

ウェブメディア「瀬戸内通信社」を始める前もいまも、瀬戸内にまつわるウェブ媒体や紙媒体を見ている中で、この土地のこと、地域の風習、歴史、文化…そういったことが自分には圧倒的に不足していると、コンプレックスを持ち続けていた。

瀬戸内通信社では「情報」以外のものを。そんな想いでスタートしたけれど、やはり情報が無いと何も始まらないのも確か。そもそも歴史が非常に苦手で、ほらここが源平の…と言われてもそれがなんなのか知らない始末(お恥ずかしい限り)。2020年、ウェブメディアも始めたんだしさすがに勉強しようと手あたり次第に本や資料、ウェブなども見てみたものも、どうしても、やっぱり、苦手なんだな…。情報の海を泳ぐときに、知りたいことを知るのではなく、知識の投入が目的になった途端、そりゃ面白くなくなるに決まっている。

でも、そんな自分だからこそ情報を編むのではなく、人や物語、自分の気持ちで編んでいきたい。知っているからこその「なぜ」に今は届かなくても、知らないから生まれる「なぜ」から深堀りしていけば、出会えるものがある。その時々に必要なことを学び、いつかは体系的に理解していくのだ、地道に今興味のある所から吸収していけばいいじゃないか。

もっとハイペースに更新しなくては。
もっと香川以外についても書かなくては。
TLでいいねを伸ばさなくては。
最新の瀬戸内のニュースを拾わなくちゃ。
こんな風に、他者と比較した焦燥感からくる行動は、だいたいずれていたことが多かった。瀬戸内通信社の「ここを見れば好きな記事が積み重なっている」、それを自分たちの思うトーンで伝え続けることを大切にするのに、どこかと比較する必要性はほとんどないんじゃないか。さんざん比較して焦って余計なことに時間を使ってしまったからこそ、今この気持ちにたどり着けた。

知識や情報を詰め込むのではなく、この土地やここで生きる人たちを通して何を考え、どう伝えるのか。変わりゆく状況の中で、どんなオピニオンを持つのか。すべての企画の根底に必ずオピニオンを滲ませるのを忘れない。自分が立ち戻る考え方が明確になったことで、焦ったり、無駄なことしたり、失敗したり、そういうことが全部意味を持った。頭ではわかっていても、経験するのはまた違う。

ふと、自分が聞いた公子さんの言葉を思い出した。
“回り道したり、身銭切ったり、無駄かどうかわかんないけど、無駄なことをしたり。ずっと一生やってますね。この街にきたら、やりたいこと増えちゃったわね。面白いって自分が思うことは大事にしたいのよ。あなたも大事にしなさいね。”

人は、忘れる。
知っていたことを、もう一度知る時がある。今はそんな感じ。頭ではわかっていたことも、過去の似たような経験も、時々気づかずに視界が濁ったままあらぬ方向に走っている時がある。でもそれでいいや、停滞するよりもずっといい。

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