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暮らす人たちに出会う旅(徳島県美馬市)

せっかくレンタカーするなら、行ってみたいところがあるんだけど。そう提案した先は、徳島県美馬市だった。GoogleMAPのブックマークは3つだけ。少ないけれど、いい感じだなぁ……ええい、宿が予約できたら行っちゃおう。そうして宿を押さえ、レンタカーを確保し、カレーを予約してととんとん拍子で旅が決まったのは、出発前夜。日帰りでも行けるけれど、なんだかゆっくり旅がしたかった。せっかく行くしとSNSでつながっていた徳島のライター高木さんや、定期的に【うだつの町並み】で出店している【時宅】の店主におすすめを聞いて準備をした。

徳島県美馬市は、高松市内から車で一時間ちょいと思いのほか近く、山を抜ける道中のドライブが気持ちいい。前日に買ったミスタードーナツをつまみながら、のらりくらりと車で向かう。

<一日目>

穴吹駅周辺に着いてすぐは「まだお腹空いてないから」と川辺や田んぼの周りをなんとなく散歩して、腹の虫が鳴るのを待った。初夏のような、台風前のもわっとした暑さが肌にまとわりつく。カレーにはうってつけの日だ。

13:00 白草社でスリランカカレー

徳島に目にも麗しいカレーがある。香川でもそう耳にしていた【白草社】さん。そのビジュアルだけで「ああ食べたい!」と思わせる求心力、迷うことなく一番最初に予約した胃袋だ(旅の胃袋予定はとても大事)。

白草社のカーラヤカリヤ

注文したのは【カーラヤカリヤ】、メインに選んだのはブラックポーク。ああ、これこれ!画面越しに幾度となく羨望の眼差しを向けたこの一皿。はやる気持ちを抑えてさくっと写真を撮りすぐにほおばる。あー、うまい……!
おかずやカレーをソロで食べた後に、お皿の中を少しずつ混ぜてはもう一口、さらに混ぜてはもう一口。レンズ豆、こんなにふかふかするの?スナップエンドウの食感がぱりっとして楽しい。ココナツベジカレー、フルサイズで食べたいくらい。といちいち感動しながらばくばくと食べ進める、複雑性が増していく。同行した友人は「めっちゃ好き。もう一皿食べたい」と【辛口チキンカリー】を追加で頼んでいた、三口いただけて私もうれしい。こちらは味わっていると旨味と共にじわりと辛みがスパークする。辛い……、うまい……!

辛口チキンカリー

初めて来たことを伝え、うだつの町並みに行く前に寄った方がいいところについて店主に聞いてみた。「うーん、この辺りは何かがあるわけではないので、うだつの町並みに向かってもいいかも。山が好きな人は剣山に行ったり、夏はその手前の川に足を浸けたりしますけどね」と言われ、川に浸かりに行くことにした(ラブ清流)。現地の情報、ありがたいです。
ライターをやっていると話すと「夫がライターをしていて」と言われ、「あるライターさんの記事や写真がとても好きなんですが、クレジットの名前の下に【白草社】とあるのが気になってました!そうだったんですね」という話から、お二人が大阪から徳島市内を経てこの地でお店を開くことになった経緯などを聞く(残念ながらライターの乾さんは外出されていた)。詳しい話はこちらの記事にあったので割愛するけれど、お話から「稼ぎたいわけではない」という素直な気持ちがぴたりと伝わってきた。私自身、香川で暮らしていると東京にいたときはあんなに頭の中にあった「稼ぐこと」含めた上昇志向がすっかりと丸くなっている。バランス良く仕事をして、気持ちよく暮らすこと。それを真ん中に生きていくっていいなと改めて感じた。次はカルダモンアイスもドーナツも食べるぞと誓いつつお店を後にする。

14:30 穴吹川の清流でちゃぷちゃぷ

川辺に降りられそうな場所をみつけて、足を川に浸ける。冷たい!冷たすぎてずっと浸けていられないほど。鳥の声も響いて、木々も豊かでとてもいい時間。場所はここら辺です。

15:40 ゲストハウスのどけやへ

宿は、うだつの町並みにある【ゲストハウスのどけや】の別館で、貸し切りになる。予約電話のやりとりから温かいゲストハウスで、とてもいい滞在になりました。周辺のことを教えてもらいつつ、ごろりと一休み。大阪の中学生が修学旅行で宿泊していると聞き、私の時代との違いにびっくり(本館に行ったら、修学旅行生がプレゼンしてた!)。ちなみに宿をされているのは世界をまわった音楽家とプロの漫画家さんです!

17:00 明日の大雨に備えて散歩→夕食、就寝

うだつの町並みのお店は17時閉店が多いので、お店に寄るのは明日にしようと周辺を散歩。途中ほろ酔いのおばあさんに「旅人?この酒屋で飲んでるんだけど、最高だから来て!」と声を掛けていただくも、飲む気分ではなかったのでそろりとご遠慮する。

夕刻のうだつの町並み

甘酒を試飲したり、オデオン座のことを聞いたり(山田洋次監督が「虹をつかむ男」の撮影をした)、川辺を散歩したり(穴吹川の清流で満足していたため、すぐお開き)していると、あっという間に夜。
夕食はスーパーで地の野菜やお刺身を購入して宿で食べ、早めにのんびり。なんだかもう満足してしまっているなぁと思いながら就寝。

散歩で見つけたへびいちご
「しらさえび」は地の魚介らしい。ねっとり甘かった!

<二日目>

11:00 泊まれる本屋まるとしかく

台風の影響で大雨のなか、SNSで気になっていた宿&独立系本屋【まるとしかく】へ。築100年の農業倉庫を改装して2023年1月にオープンしたばかりで、本棚は地元の高校生と共に作ったのだそう。オープン前から地域の人が交わっていくのって、とてもいいなぁ。

購入本。店主・内田さんは柴田元幸さんの
翻訳が好きで、コーナーもあった

大雨のトラブル対応で店主の内田さんとゆっくりは話せなかったのですが(大変な時にお店を開けてくださってありがとうございます!)、お店がとにかく楽しく、気づけば二時間。これまで「高松にも独立系のすてきな本屋さんがあるから」と旅先で本屋に行くことはなかったけれど、最近「お店によって出会う本が違う」と気づいてから、旅先でも寄るようになった。木の香りに包まれて、遭遇と発見、新しい窓がたくさん開くとてもいい時間でした。

まるとしかくからの眺め

ランチは、通りすがりの常連さんに愛されている雰囲気のお店で。お店のお母さんがとてもよかったし、サービス満点なランチでおなかいっぱい。あまりに良かったので、内緒にしておきます(笑)。

14:30 複合施設うだつ上がる

美馬市周辺のことを教えて!と連絡した二人からそれぞれ「うだつ上がるの高橋さんと喋ってみて」と言われ、もじもじしながら訪問。話しかけると想定外のテンションで、「じっとできない。マグロのようにしゃべり続けてないと気がすまない」のは大阪出身の性なのか。あれよあれよとここにいる、とからりと言う。

奥から雑貨店、古着屋、本屋

【うだつ上がる】は建築家である高橋さんの事務所であり、ギャラリー、ショップ、grafショールームがあり、間借りで飲食営業や販売などのスモールスタートができる場所でもあった。やりたい商売があれば、平日は仕事で生活費を稼いで店頭を高橋さんに委ね、週末はお店に立つというやり方ができる。「平日は僕がここで仕事をしているので、レジ打ちはできるからね」と高橋さん。

カフェスペース

「ここらへんの子は一生懸命勉強するけれど、勉強は目的ではなくて手段。将来のこと、何のためにどんなことを勉強するのかをイメージできるように、できることをしたい」と高橋さんは自分の仕事場をオープンにし、さまざまな人がふらりと仕事をする場を地域に開いていく。「町がこうなるように」「地域のために」といった気概ではなく、「なんかいいと思って」「自分がしたいだけ」という軽やかな温度。この地で人に出会うたびに感じるこの心地よさは、なんだろう。

16:00 A COFFEEで抹茶×コーヒードリンク

複数の人におすすめされて訪問したコーヒースタンド【A COFFEE】は、温かいご夫婦によるのびのびとした場所だった。聞けば、美容室を経営していたがコロナ禍を経て仕事を見直し、大好きなコーヒーを軸に仕事をしようとコーヒースタンドを始めたのだそう。ええ、全然違うジャンルへ!

初めて見たメニュー【抹茶コーヒー】は、コーヒーの苦みと抹茶の香りが交わり、めちゃくちゃおいしい……。「私が求めてた抹茶ラテ的な飲み物、これでした!!!エスプレッソの香りと抹茶が喧嘩しそうなのに、全然そんなことない!」と興奮気味に言うと、浅煎りの豆でバランスを取っているのだと教えてくれた。唯一無二の抹茶ドリンクでした、わーんこれ週3で飲みたい。

焼きたて熱々ワッフルもおいし

おいしいドリンクを飲みながら、今回の旅で出会った人たちのこと、会話したことなどを総括的にお店の二人に話しながら、なんとなく旅を振り返る。美馬、いいですねぇ……と呟くと「なーんにもないですよ、空き家はいっぱいありますけど」と大きな笑顔で返してくれる。なにもない、と受け止めたうえでそれぞれが自分なりの一歩を踏み出し、歩み続けているのかな。

旅のおわりに

そんなこんなでもう大満足よと17:30には美馬市を出発して高松へ向かい、途中塩江の産直で野菜を大量購入して帰った(美馬市で産直に寄るのを忘れてた)。
今回は観光とはまた違う、人に出会って交わるような旅になり、とてもいい時間を過ごせた。出会った人と会話をして深めていく、こんな旅もいいんじゃないでしょうか。
いろんな場所を紹介してくださった方、出会ってお話ししてくださったみなさま、ありがとうございました。これからも自分を開いていろんな人に出会っていきたいな。日帰りでも行けるし、また遊びに行きたい。

うだつの町並みにて発見

ちなみに徳島を伝える「めぐる、」という雑誌が大好きなので、最後にご紹介します(白草社の乾さんや美馬のことを教えてくださったライターの高木さんが参画しています)。

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