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碧空に浮かぶ、風に消えた恋

若い頃の恋、を思うと未熟さゆえか胸がキュッと苦しくなる出来事や言葉や表情が浮かびます。後悔のような懺悔のような否定のような防御のような、なんとも表現し難い感情も湧き出るのですが、そんな恋を思い出させるアルフィーさんの曲を聴いた時に自然と涙が出て ”あーーー自分歳とったわぁーー” とため息も出ます。

“碧空の記憶”は2015年発売のアルバム ”三位一体”に、“風に消えた恋” は2019年発売のアルバム"Battle Starship ALFEE" に入っている、どちらもアコースティックギターの物悲しく美しい音色が際立っている坂崎さんボーカルの曲です。

“碧空の記憶”歌詞  “風に消えた恋”歌詞

歌詞を読むとこの2曲は同じ恋の想い出を書いたものだろうな、と想像できます。

まだ高見沢さんが明治学院大学の学生だった頃に体験した辛い恋の終わりを思い出して歌にしたのかな?と妄想してしまうほどにこの2曲の世界観はしっかりと絡み合い、隙間の空いたパズルを埋めるようにそれぞれの世界を補っているように見えます。

パズルピースと空間がぴったりと合わさる部分の歌詞を呼応させて書き出していきます。是非2曲を聴きながら読み進めてくださいね。

*“碧空の記憶”は碧)そして“風に消えた恋”は風)と表記します。


彼女との出会いと別れの情景が見えてくる部分です。
坂、チャペル、キャンパス、鐘、本、などのキーワードから彼と彼女の物語の背景が鮮やかに想像できますね。読みかけの本はヴァレリー(フランス人)の詩集だったのね、marque-page(しおり)もフランス語ですしね。

碧)坂の上のチャペル ヴァレリーの詩集抱えて
風)読みかけの本に挟んだままのMarque-page

碧)偶然二人出会ったね キャンパスのカフェテラス
風)緩やかな坂道で 二人出逢ったキャンパス

碧)青春の終わり告げる鐘
風)耳をすませば聞こえるあの日のように チャペルの鐘が優しく響く 風に消えた恋

ふわふわと心躍る恋の始まりはやがて次のステージへ続き、まだ若い二人が未来の幸せを共に模索しながらも、将来への不安や惑いが徐々に関係性を壊していった様子も見えます。

碧)穏やかな午後 淡い恋の予感
風)恋の予感に心ときめき 同じ未来を信じていたはずなのに

碧)すべてがあまりに稚すぎて 傷つけ合うのが怖かった
風)夢に酔い 風に舞い 若さに戸惑い 四つ葉のクローバー見つからなかった

かつての恋・彼女を振り返り、心に浮かぶ当時の感情や情景も両方の曲を聴くとよりハッキリと見えて来ます。
若い頃には“遠い春”(成功)に眩しい光と華々しく舞う蝶、明るい明日(将来)、そんな素晴らしい夢を描いていたのに、春は遠すぎて当時の自分と彼女には明るい未来=成功は見えなかった、という嘆きです。
共にそんな未来を信じていたのに、時が経つほどに見えなくなった、もしくは彼女の未来は違うものに変わった、という時間の経過と心の変化も見えます。

碧)若葉の頃は過ぎ去って 街の景色も変わったけど
風)四季は移ろい 木々は色褪せ

碧)遠い春の日差しの中で 未来は何も見えなかった 〜青空だけが眩しかった
風)遠い春 蝶が舞い 明日になればと 〜 同じ未来を信じたはずなのに

自分ではっきり決めたものではないこの恋の終わり、彼女の一言かそれとも二人を取り巻く状況のせいか、納得出来ないままに突然訪れた別れが冷たい風と枯葉の比喩からも、彼にはどうしていいのかわからなかったような印象です。
ハラハラと風に舞う枯葉がどこに落ちるかは風まかせであり、決して隣同士には落ちないという別れの運命や、枯葉は朽ちていくのみ、という決定的な終わりも表現されています。

碧)突然風に吹かれたように 僕らは別れたよ
風)木枯らし散る枯葉のよう 二人別れた


Don’t you know how much I love you(言葉にしなくても)どれ程愛しているかわかるだろう、の歌詞から彼女に I love you・愛してると言えなかったこと、そしてそれを後悔してももう遅すぎるのだという新たな後悔も見えて来ます。
彼の心の中の彼女は当時のまま、同じ未来を信じて愛しあったあの時のまま。
眩しい青空の中へ、風と共に消えていった恋を今思い出しても苦しいのが伝わって来ます。”虹の彼方へ”とあるのでひょっとすると彼女はもういないのかもしれないです(涙)...そしたら“愛してた”と言えなかったのは本当に辛い。

碧)長いその髪 優しい瞳 想い出はあの頃のまま
風)時は過ぎ去り 想い出と共に風に消えた恋

碧)同じ痛みを感じながら 愛を言葉に出来なかった
風)Don’t you know how much I love you 誰より愛してた 届かない思い全て虹の彼方へ


かつて彼らが見えなかった“未来”に歌となり生まれ変わった若かりし日の恋。随分時間が経ってからもふと思い出される辛くも美しいあの時。

歌詞中では”青空”なのにタイトルは”碧空”なのですね。若い頃に見上げた澄んだ空は記憶の中ではちょっとくすんで褪せた碧になったのでしょうか。

碧)微笑む君が なぜか今 切ないほど愛しくて 〜青空だけが眩しかった
風)恋の終わりに 心震えて 最後の言葉が涙で滲む 〜風に消えた恋

坂崎さんの甘く切ない声がかつての恋を懐かしくも苦しく想う胸中を美しく歌い上げるこの2曲、ぜひ一緒に聴いてみてください。

高見沢さんの文学青年っぷりを思う存分味わえる曲です。

シマフィー 

*アルフィーさんは公式Youtubeがありませんのでファンの方がアップした映像です。是非CDやサブスクで聴いてみてくださいね!

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