見出し画像

大きくて小さな子供

9年生・15歳ともなると、生徒たちは私よりも背も高く体格も良い子が多い。(*アメリカの高校で教師をしています)

大きな荷物はひょいひょいと担いでくれるし、並んで写真を撮ると改めて私の小ささが目立つほどだ。足も大きいし、手も大きいし、なんなら一人前の口をきき、大人の様なアドバイスや意見を送る15歳たち。

そんな大きな15歳でも、やっぱり小さな子供なのだなと感じることも多い。まだまだ未熟で、成長途中で、薄っぺらく生きていて、どんな小さなことでもお腹を抱えて笑う、そんな子供たち。

来週から感謝祭の休みに入るため、今日は最後の授業だった。今年は旅行に出る生徒はほぼおらず、みな家族だけで静かなサンクスギビングを送るらしい。クラスの中にいる何人かの留学生も、隔離期間の関係などから帰省する子はひとりを除いていなかった。

その一人はセルビアからの留学生で、15歳とは思えない大人びた容姿と体格だ・・・というのも彼は我が校のサッカー特待生としてやってきた生徒で、毎日毎日トレーニングをして、日々大きくなっている(笑)

彼に誰かが ”家に着いたら何が食べたいの?お母さんに何をリクエストした?” と聞いていた。彼は ”特別なものはなにもないよ、お母さんが作ったのなら何でもいいんだ、お母さんが沸かしたお湯だっていいんだ” とニコニコと答えていた。

お母さんが恋しい、そりゃそうだ、15歳だもんな。大きな体をゆらゆらさせながら嬉しさを隠そうともせずにお母さんの話をする彼を見ていて、この様子をお母さんに見せてあげたいな、と思っていた。

休み時間にはまた違う男の子が、窓からひらひらと入ってきた葉っぱを手に取り ”見て!大きい葉っぱだよ!” とはしゃいだ。

一歩外に出れば大量にある枯葉・・・だけど、その一枚はとても大きくて、彼の足元に落ちてきたスペシャルな枯葉だった。

彼は枯葉を手にしてじっと見つめ、優しい笑みを浮かべて ”美しい葉っぱだね、これは大切にとっておこうよ" と言った。そして足元にあった小さな枯葉とトリオにして机の上に壊れ物を置く様にそっと置いた。

それは5歳の子供の様に無邪気で愛らしくて、こんな時期でなければぎゅっと抱きしめてあげたいほどの可愛さだった。まぁその子は185cmはあるような大きな子なんだけれども。

休み時間が終わり、次の授業の先生が入ってきて、その葉っぱは窓から捨てられてしまった。その様子を見ていて あっ とつい声を出した私に彼女は不思議そうな表情を見せたが、私はそのまま教室を出た。

午後の授業の前に、窓の外でそれっぽい葉っぱを拾い、また教室の隅に置いておいた。

大きくて小さい子供が大切な葉っぱが無くなってがっかりするといけないからね。

シマフィー 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?