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眠る時計

最後に腕時計をして仕事に行ったのは2020年の3月だった。それからはパンデミックでオンライン授業になり、もう1年3ヶ月が経った。その間私の腕時計たちはジュエリーボックスの時計コーナーで静かに横たわり、外に出ることはなかった。

もともと私は腕時計をするのがあまり好きではなかったけど、時間を見るためだけに携帯を取り出すのはもっと好きではない。そして自分の教室には掛け時計はない。なので今の学校に勤めるまではアクセサリーの一部として身につけていた時計が、12−3年前に時計本来の仕事をすることになった。

大学の頃から使っていた30年選手を含め(右上の小さい丸)、現在うちには8本の腕時計がありどれも10年20年愛用している。今週から期末試験で学校に行くことになり(*アメリカの私立高校で教師をしています)月曜日に久しぶりに時計を出してみた。

正しい時間で動いているのは私がランニング用に買ったカシオのデジタルと赤いベルトのTAG Heuer の2本だけで、残りの皆さんはパンデミックの間に深い眠りについていた。昨年3月の時点では8本全部動いていたので、ここ1年ちょっとの間に次々と亡くなられたわけである。止まった時間を見ると、バラバラの色々で、誰も一緒に せーの で止まったのではないのがわかる。

一つ手に取ってみてちょっと考えた。この時計が止まった午前か午後かの7時には自分は何をしていただろう。いつかの5時10分前にこの時計が眠った時、自分は何を思っていただろうか。どの時計も、私も、世界も同じような1秒を過ごし、時計はひとつ、ふたつ、と1秒を刻むのをやめた。

たかが電池切れの時計でも、まるで死んでいるように動かないのはかなり切ない。それが6つもあると早く蘇生してあげないと心苦しい。ただ現在これらの時計に合う電池は我が家にはなく(夫が電池替えをします)、さらにバカらしいことにはこの全部が違うタイプの電池が必要で、面倒くさい。

なのでしばらくはまだこのまま眠ってもらうことにする。

と思っていたら、このうちの一つが弱々と動き出した。トップの写真と見比べて、どれが自力で蘇生したかわかりますか?

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眠る時計が目を覚ますことなんてあるんだ!他の5本も頑張って生き返れ!

シマフィー 

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