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やらず嫌い:高校教師

高校生、嫌だーーーーー教えたくないーーーーー

それが私が今の仕事の面接に行った時の心の声だった。イヤイヤ、シブシブ、グチグチと向かった面接だった。

それまで世界のあっちやこっちやで教師をしてきたけれど、基本私が教えてきたのはある程度の”大人” だった。大学で講師をしていたときも、企業で教えていた時も、語学学校で働いた時も、マイナー(未成年)の生徒はほとんどいなかった。(*現在はアメリカ在住です)

私は高校生に対して悪いイメージを持っていた。

ティーンというのは生意気で、大人のいうことを聞かず、やれと言われればやらず、やるなと言われると笑いながらわざとやり、仲間外れをしたり、露出狂のような格好で学校に来たり、先生をセンコーと呼び太々しい態度を取り、気分屋で、好き嫌いが激しく、人の気持ちが思いやれないクソガキ

そんな悪いイメージを持っていた。何故だろう。

自分が高校を卒業してからは高校生という”塊り”と触れ合う機会はなかったので、多分テレビドラマや映画やリアリティーショーなどの影響だと思う。アメリカでの
高校生は青春映画の中の可愛らしい姿もあるが、大抵のドラマはティーンエイジャーのわがまま放題を面白おかしく描くものがほとんどで、私はそんなわがまま放題の子供に振り回されるのはまっぴらだった。
ビバリーヒルズ90210やフェリス・ビューラーとそのクラスメートたちが私の中の高校生だった。

さて、そんな私が結婚後アメリカに戻った時に勧められたのが”私立高校”での教師だった。というのも、大学での常勤講師ポジションはなかなかの難関で、私の専門分野(いくつかある)はどれも募集が少ない。そして専門以外の分野では、いくら関係が深い別の分野の修士や博士を持っていても応募資格も貰えない。

ということで面接に行った、通える範囲にある私立高校に。
6月中旬の蒸し暑い日だった。移住直後で自分の車もなかったので夫に送ってもらったのだが、車中でもうだうだと”やりたくない理由”を主張した。
夫は”面接するだけでいいから話をきいておいで” と送り出した。

何を話したか覚えていないが、面接をしてくれた当時の部長にえらいこと気に入られて3日後にはもう校長から契約書が送られてきた。何かビビッと来たのだろう。

給料は非常勤の大学講師よりもずっとずっと良かったし福利厚生もちゃんとしてた。面接してくれた部長もいい人だったし同僚教師も親切そうだった。

そして何より私にはそれ以外の仕事のあてはなかった。

あれから10年以上も経ってしまったが、現在の私は毎日学校に行くのが楽しみでしょうがない。あんなに高校生イヤダイヤダと駄々をこねていたのが自分だと思えないほど高校教師を楽しんでいる。

一年目こそ見たことない難題や未知の経験ばかりで大変だったが、それすらも目新しく面白かった。一番面白いのは14歳の生徒が18歳になる、という青春真っ只中の4年間を近くで見れることだ。

私たち夫婦は結婚した時に子供はいらない、という決断をした。なので私は親として我が子の成長を見届けたり、助言をしたり、大きくなったなぁと目を細めたりすることは出来ない。

だけど、生徒たちの多感でせわしなく、グングン状況や視点が変わっていくこの時期を間近で見ることが出来る。彼らはわがままで気分屋で、膨れていることもあればベタベタとまとわりつくこともある。
生意気な口をきいたり、悪い言葉を使ったり、人の気持ちを思いやれないこともある。私がかつて持っていたイメージそのままの高校生なのだが、本当にかわいい。この仕事に選んでもらって良かったなぁ、と彼らの顔を見るたびに思う。

始まりは”選ばれた”ことだったけれど、我が校は一年ごとに契約書にサインする決まりなので、毎年契約の時期にここに残って教師を続けることを自分の意思で選んでいる。

今は 高校生教えるの 楽しいーーーーーーーー って毎日叫んでる。

シマフィー 



#この仕事を選んだわけ

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