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”推し”自慢、私vs生徒

”先生、ちょっと私の推し、見て〜かっこいいでしょう!”

今年入学した日本人の女の子が、休み時間にいそいそと私の教室までやってきてパソコン画面に広がるかっこいい男の子の写真を見せてくれた。(*アメリカで教師をしています)

まじまじとその顔を見たが、彼が何者なのかは全くわからない。というか、最近の男の子たちは失礼ながら誰も同じような顔に見えてしまう。着ている服もとりわけ目立つとか個性があるとかではなく、彼女が見せてくれた写真の彼はモノトーンのシャツばかりのシックな装いだった。

彼女は誰かに推しの話をしたくて仕方なかったのだろう、”私の推しが!” ”推しのいいところは” ”推しのこういうところが好きで” と私が 果たしてこの子は何をする人なのだろうか と考えているうちに、あれやこれやとまくし立てる。

ふと、これが私の人生で初めて”推し” という言葉を音声で聞いた事実に気づき、おかしくなった。SNSやnoteで推しの話を読むことはあるが、誰かが声に出して ”推し” と言うと、不思議だ。本当に言うんだ!とちょっと感動すらした。

ペラペラと話す彼女を遮って、この可愛い彼の名前は何なのだ、と聞くと 神尾楓珠 という若手俳優だと言うことがわかった。”先生もテレビとかで見たことある?” と聞かれたが、私は日本のドラマやバラエティを見ることはほとんどない。テレビを見ようと思うのは自分の”推し” が出ている時だけだ。

”えっと・・・キスマイの(←私の中で一番新しいジャニーズ笑)” と彼女は ”えーーー違うーー全然違う!”と叫んだが、私にはキスマイの全員(何人いるか知らない)もこの神尾くんも同じように見えてしまう。

”神尾くんの方がずーーっとカッコいいよ、ねぇ!カッコいいよね、先生!”と言うのでつい滑ってしまった。

先生の推しの方がカッコいい

彼女は目を丸くして固まった。そして叫んだ ”先生にも推しがいるの?? 誰?”


私はここぞとばかりに我が推しの自慢をした。

推しは美しくカッコいい長髪のイケメンで、笑顔が可愛らしく、言動はお茶目ながらも知性が光り、彫りが深く色が白い永遠の王子様で、サンマリノ共和国から正式にナイトの称号を貰い、歌う姿やギターを弾く姿は神々しいほどなのにラジオやバラエティではひとしきり笑かせてくれる多才で人間味のある男前だ

そんな風にまくし立てた。彼女はぽかんとして聞いていた。

ほら、写真見せてあげるよ〜 と自分のパソコン画面に映る我が推し(とお友達2人)の姿を見せる。

かっこいいやろぉーーーー とニヤニヤする私に、彼女は眉をしかめて言った

”先生、これは・・・タカ・・・・”

そうや!!高見沢俊彦さんや!と私が叫ぶ前に、彼女は迷ったような口調で続けた。

”これは・・・・タカ・・・らづか? 先生は宝塚の人が推し?”

くるくるの巻き髪にピカピカの青いスーツをまとい、前のめりに座っている姿を見て彼女は高見沢さんが宝塚の男役(か、女役かわからん)に見えたらしい。確かに高見沢さんは煌びやかで美しいが、背後の坂崎さんと桜井さんは見えていなかったのだろうか笑。

その後は私の笑いが止まらず、授業開始のチャイムが鳴り、彼女は怪訝そうな顔のまま教室から出て行った。

お互いの推しのことは全く知らなかったけど、それでも推しの自慢が出来た楽しい10分休みだった。

シマフィー 

*こちらの写真でした↓


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