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かわいい君たちへ:形見分け

4−5年ほど前からなんとなくボチボチとジュエリーボックスの中身を断捨離している。若い頃に買った指輪やネックレスなど、思い入れや思い出はあるけれど、もうつけることはないもの.....受け継いでもらえる実子は私にはいないので、どうしようかと思っていた。あまり価値のないおもちゃの様なジュエリーは寄付したりしているし、高価なものは持っておきたい。悩ましいのはその中間のもの。

捨てたり、見ず知らずの人にあげたりするのはもったいないし、それに付属している思い出もある。考えあぐねていた時に思いついたのは、生徒に分け与えようということだった。*アメリカ東側の高校で教師をしています。

毎年たくさんの生徒を受け持つが、その中に特別な存在が出来ることがある。自分の生徒はみんな大好きだが、この子供たちはなんとなく不思議な縁やケミストリーがあり、距離が近くなった子供だ。一緒に修学旅行に行ったり、4年続けて私のクラスをとったり、放課後毎日のようにスタディーグループに来たり、時には人に言えない苦しい相談をひっそりとしにきたりーーそんな風にちょっとだけ私の心の中に長く、深く、残る生徒。そんな子供達が卒業したり転校したりする時に 形見分け として私の人生の一部を送ろうと考え、そのアイテムにどんな思い出があるのかを手紙にして贈っている。トップの写真のペリドットの指輪も、そんな特別な子供に贈った。私が初めて自分で稼いだお金で買った誕生石の指輪だ。

そうやって分けられたものはもう20個くらいになる。ペンダントやキーホルダー、指輪にブレスレット、ブローチやイヤリング。女の子にも男の子にも、彼らに似合いそうなものや彼らと私の思い出をリンクさせるものを形見分けする。

今日はカリフォルニアの大学に進んだMからこんな写真が嬉しいニュースとともに送られてきた。

”シマ、あなたのピングイーノは元気にしています。 ペンダントの紐を付け替えました、もう少しで切れそうだったからね。もう4年間、つけっぱなしです、外していません!遠くの海から、離れたhomeに帰り着くまで、まっすぐに懸命に泳いでます。もうすぐhomeに着きます!待っててね”

私はこの男の子が10年生の時の担当で、彼が4年前に卒業するまで放課後にいろんな相談に乗ってきた。毎日放課後にひょこひょこと教室の入り口まで歩いて来る様子をみて ピングイーノ(pinguino=ペンギン)というあだ名をつけた。そして彼が卒業する時に、20年前にユタ州の辺鄙な田舎で見つけたシルバーのペンギンを贈った。彼はうまく周りに適合できず、自分は誰にも愛されないエイリアンなのではないかと悩んでいた子だった。ユタ州にはもちろんペンギンはおらず、なぜそんなところのお土産やでペンギンが売られていたのか、そしてなぜ私はそれに惹かれてペンギンを持ち帰ったのか、全くもって謎だが、そのペンギンは私に愛されて20年以上も一緒にいたものだ。

ピングイーノは荒波に揉まれ、大海を泳ぎまわり、ひとまわり大きくなって”ホーム”に帰って来るという。

ハーバード大学の大学院に合格し、秋からは東海岸でバイオエンジニアリングを学ぶことになった。すごいぞ、ピングイーノ!

シマフィー 

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