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First World Problems

先進国、恵まれている生活、何でも揃う社会、そんな環境が”普通”な私たちは時によそからみれば大したこともない・問題ではない事柄も大きな問題として騒ぎ立てることがある。

例えばネットが遅いとかバスが遅れてるとか齧ったりんごが甘くなかった、とかそんな恵まれた私たちにしか”問題”ではない不平不満を英語では First World Problems と自虐的に皮肉を込めて呼ぶ。

世の中には水道が通ってない家もたくさんある、1日に1食しか食事ができない人もいる、学校に徒歩で1時間かけて通わなければいけない人がいる、戦争地帯に怯えて住んでいる人がいるーーーー2021年のパンデミックで旅行に行けないとか外食ができないとかで”ストレス”を感じている先進社会の人間の問題なんぞその人たちの毎日と比べるとストレスと呼ぶのも烏滸がましい。

2週間前に2年前に学校をやめた同僚夫婦がアメリカに戻ってきた(*アメリカ東海岸で教師をしています)。

彼ら夫婦は”アメリカは嫌いだ”と大っぴらに宣言してフィリピンに引っ越した。アメリカンスクールで教師をしているらしいので周りは全てアメリカ人なのがちょっと矛盾してるな、とは思ったが何も言わなかった。

彼らが引っ越したのはちょうどパンデミックが本格的にやばくなってきたころだったが、出る前にさよならパーティーを開くという。私にも声がかかったが、”たくさん人が集まるところは避けたい” と断ると、旦那の方はそれにたいそう腹を立てて私を ”政府に洗脳されたバカ” と呼んだ。彼曰く、メディアに翻弄され真実が見えない私のような人間を軽蔑する・パンデミックは仕掛けられたもの、とのことで私はかつて仲良くして信頼関係にあった彼らが根拠もない陰謀説に心頭するのを悲しい気持ちで見ていた。

さて約1年半が過ぎ、彼らはクリスマスの休暇でアメリカに戻ってきたらしく、メールが来た。”久しぶりに会いたいから集まろう” とのことで、私はそのメールに返信をしなかった。変異株の影響でこのあたりの陽性者数も毎日増えている。これまで通り私たち夫婦は誰にも会わず、どこにも行かず過ごす予定だし、それを告げるとまたバカ呼ばわりされるのはわかっていた。何度もメッセージが入り、その度に何と言って断ろうかとモヤモヤするのが自分でもイラつく。

ワクチンを打つ奴はバカ、パンデミックを信じている奴はバカ、みんながウイルスにかかって免疫をつければ解決、それがわからない奴らはみんなバカ

そんなふうに吹聴していた彼らの存在とそんな彼らからの連絡は私にとってストレスだったが、考えれば考えるほど、彼らはFirst World Problemsの1つだと思えてくる。私が戦争地帯に住んでいたら、電気もないジャングルにいたら、テレビもネットもない世界の住人だったら、こんなアホな友人に煩わされることもなかろう。

ネットが遅いとかスーパーにコンニャクが置いてないとかパスタがまずいとか友人が陰謀論信者になったとかでストレスを被るのはバカバカしい。

来年の目標は First World Problems にイライラしないことだな、と思いながらその友人夫婦の連絡先をスパム設定にした。もういらんので。

そんな年の瀬

シマフィー 

*英語ですが私の彼らに対する気持ちはこんなんでした


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