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Code for Japan代表 関治之さん/技術は人を幸せにするのだろうか?

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科
クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論
 第9回目の授業は、Code for Japan代表 関治之さんの講義でした。


関治之さんについて

開発者としてテクノロジーを活したオープンイノベーションについて研究する中、東日本大震災を機にコミュニティとテクノロジーの力で地域課題を解決することの可能性を感じ、2013年に一般社団法人コード・フォー・ジャパンを設立。「テクノロジーで地域をより住みやすく」をテーマに活動する。
・一般財団法人コード・フォー・ジャパン 代表理事
・内閣官房IT総合戦略室 政府CIO補佐官
・合同会社Georepublic Japan代表社員/CEO
・神戸市チーフ・イノベーション・オフィサー
・総務省地域情報化アドバイザー
・総務省 地域IoT実装推進タスクフォース構成員
・内閣官房オープンデータ伝道師
・東京都 デジタルトランスフォーメーションフェロー
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000068307.html


東日本大震災をきっかけに社会課題に取り組む

社会課題にはあまり関心を持たれていなかった関さんですが、東日本大震災が起きた際、「何かしなければ」「自分はこの現状に対してどう貢献できるんだろう?」と考え、その時活動されていたオープンソースのコミュニティで「sinsai.info」というサイトを立ち上げられます。
これは、人々が地図上に信用できる情報(被災地情報、交通情報、炊き出し情報など)を自分たちでマッピングできるサービスです。
驚きのスピード感で、震災当日にサイトを立ち上げ、協力者を呼びかけられました。すぐに、デザイナー、エンジニア、マニュアル整備など100人以上の人が手をあげ、協力してくれることになりました。


このように、人々のために迷いなく活動されていたかのように見える関さんですが、自分の中からある一つの疑念が湧き上がってきたとのことです。それは、「技術は人を幸せにするのだろうか?」ということ。


実際に被災地にいらっしゃる方々は、スマホなどをさわれません。泥を掻き出し、地上戦で頑張っている人々がいる中、「ITで空中戦を繰り広げることに意味があるのか?」それ以外にも、「Tech giantこそが格差を生んでいるのでは?」「ITというものは差別を助長しているのではないか?」などさまざまな疑念が関さんを襲います。
使い方によっては良くないものになりうるIT技術。これまでずっと、IT畑で生きてきた自分の存在意義そのものがぐらついた瞬間とのことでした。

しかし悩んだ結果、「正しく活用さえできれば人の役に立てるはずだ」と自分の中で結論付けられた関さん。


そのような中、次に気にされ始めたことは、「社会や人々のために存在している行政/自治体は、市民と共創するためのシステムをうまくデザインできてないのでは?」ということ。
多くの行政組織は、特定の事業者に依頼し、効果検証ができていないという事実を知り、「自分のようなITやオープンソースに明るい者が、正しいシステムやアーキテクチャのあり方を伝えていった方がいいのかもしれない」と思い至られます。


オープンソースであることの強さ

オープンソースのものは、ボトムアップから始まり、アジャイルで作られていきます。だからこそ、変化に強く、さまざまな人にノウハウがたまり、みんなの手で良いものに成長させることができます。オープンソースになるといういうことは、「ともに考え、ともにつくる社会」が実現できるということです。
そして、オープンソースへの投資は、社会的な知的資本の蓄積につながったり、新しいサービスが生み出される土台形成にもなり得ます。

この考えのもと、関さんは行政の取り組みをどんどんオープンソース化されていきます。


具体的な取り組み

●東京都のサイト
・GitHubでオープンソース化
・issues:気づいたことや意見を提案できる
・pull request:コードを公開して修正リクエストがもらえる
→世界中から3週間で224名が改善協力、750件の提案
・ライセンスなし、全都道府県に波及した

●災害情報まとめサイト
・要望によりコンビニで印刷できる紙マップも作った
→災害時は電池が貴重、紙の方がいい、広い範囲は見れなくても良い


関さんのお話で印象に残ったこと

①アイデアの発案者は誰でもいい
オープンであると、さまざまな人がボトムアップでアイデアを持ち寄ります。その時、誰のアイデアであるのかということはあまり重要ではないとのことでした。
これは、サービスデザインの考え方と全く同じだと思いました。サービスデザインもチームの皆でアイデアを出し、プロトタイピングによりアイデアを磨きます。良いサービスは誰かの固有のアイデアが優れている必要はなく、プロセスにより良いサービスを生み出していくというものです。だからこそ、「誰のアイデアが採用されたかということは重要ではない」と言われています。
オープンソースで、みんなでサービスを磨き、作り上げていくということは、サービスデザインプロセスと共通のものなのだと気がつきました。

②常にオープンに繋がれる機会を提供している
例えば、code for Japanであれば、毎月ハッカソンイベントを開催されています。このように毎月何かが開催されていれば、その月に行けなくても、また来月参加できるし、何度も参加することで人々がつながることもできます。
継続して繋がれる場を外に提供し続けるということこそが、何よりも大事なんだろうな、と思いました。あとハッカソンイベントはランチ&談話タイムがあるのも、繋がりを作るためのキモなんだろうな〜と感じました。ビジネスライクな話だけでなく、雑談をすることで、一人一人の「人となり」がわかり、繋がりが立体的になるんだと思います。
私は自分が運営するスペースをオープンさせたばかりで、ちょうどどのようにしたら人々の繋がりを産めるんだろう?と考えていました。だからこそ、定期的に継続して、誰もが気軽に入れる機会を提供する大切さを知ることができてよかったです。
https://hackday.code4japan.org/

③人々を活動に巻き込む方法
関さんの取り組み内容は社会的意義が強く、真面目なものが多いです。そして最初は、そのまま至って真面目に押し出し、運営されていたとのこと。しかしあるとき、「みんな”正しい”ではなく、”楽しい”方がいいんだ」と気がつかれた関さん。
そこから、楽しさを感じてもらえるようなポップなデザインを採用されたり、ネーミングやUIを工夫されます。
とても面白かった例が「BADオープンデータ供養寺」というサイト。内容は真面目に「データクレンジングを行う」というものですが、かなりポップなテイストで思わず笑顔になってしまうようなサイトで行うことができます。(レトロなゲームもあり、個人的にこういうテイスト大好きです、、!)
https://bad-data.rip/

私自身、「誰かの人生の役に立ちたい!」とワークショップなどを開催することがあるのですが、どうしても真面目になりすぎてしまうことがあります。
そんな時に、関さんがおっしゃるようにデザインの力を借りて、「楽しく見せる」「楽しい気分になってもらう」ということが大切なのだと、改めて思いました。


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新しいアート体験を生み出すべく、10月にイベントを開催します

そんなこんなで、「自分の価値観を理解する」という真面目なテーマに対して、新しいアート体験(最高値で落札できないオークション)というものを開催することにしました。

https://museumbeta.art/
https://www.instagram.com/museumbeta/?hl=ja

Webサイトやインスタグラムなども、ポップにし、楽しそう〜〜!と思ってもらえるように工夫しているので、少しでも興味を持っていただけた方はぜひ覗いてみてください。そして当日ぜひお越しください!(サイトより事前予約割引を行っています◎)

開催期間:10/1(金)〜 10/3(日)、10/8(金)〜 10/10(日)
開催時間:11:00 ~ 20:00
入場料:1,000円(税込)ワンドリンク付き
会場:amu
〒150-0021
東京都渋谷区恵比寿西1丁目17−2


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