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【法人化節税その前に】個人事業やっておくべき5つの節税策


はじめに

こんにちは、島田(@mshimada_tax)です。

フリーランスの節税策として、「儲かってきたら法人化しましょう」というフレーズを聞いたことがあるかと思います。

これはこれで間違っていないのですが、私がお勧めするスタンスは個人事業でできる節税をやり切ってから法人化、です。

というのも、法人化をすると次のような金銭的、精神的なコストがかかるからです。

  • 設立コストがかかる

  • 経理の難易度が格段に高くなる

  • 税理士報酬が高くなる

  • 代表の住所情報が公開される⇒2023/12/31追記:2024年度中に非公開にできる見込み。

そこで今回は、個人事業の形態のときにやっておくべき節税策を紹介していきます。

法人化を検討している方は、チェックリスト的に使っていただければと思います。

個人事業と法人の課税方法の違い

まず前提知識として、個人事業であれ、法人であれ、節税を検討するにあたっては、それぞれの形態で課税される税金の仕組みを知っておきましょう。

図でざっくり説明するとこのようになります。

これだけではいまいちポイントが掴めないと思いますので、次からは、この図から読み取るべき個人事業と法人の課税方法の違いを解説していきます。

税率の違い

所得税の特徴であ累進税率とは、稼げば稼ぐほど税率が上がっているシステムです。

下の表のように、利益(下の表での所得金額)に応じて段階的に税率が上がっていき、最高税率は45%、住民税と合わせると55%になります。

国税庁HPより(クリックでジャンプできます)

ここが法人税と大きな違いで、法人税の税率はこの振れ幅が所得税より圧倒的に小さく、一般的な中小企業の場合はどれだけ稼いでも30%前後に収まります。

給与の取扱いの違い

上の図をみていただくとわかるとおり、個人事業の場合は、本人への給与という概念がありません。

利益がそのまま手取りになり、そこに所得税が課されるイメージです。

反対に、法人は本人へ役員報酬という形で給与を支払うことができます。

そして、給与には個人事業の利益と同じく所得税が課されるのですが、給与所得控除という優遇を受けられる点が異なります。

まとめると、個人事業は利益に所得税、法人は給与に所得税(給与所得控除あり)と利益に法人税が課税されることになります。

ここで先ほど紹介した税率の違いを思い出していただくと、個人事業の利益が、法人税の税率より低い所得税の税率が適用される程度ならば、個人事業のままのほうが税金を抑えることができる、ということです(給与所得控除の影響もありますが、説明の便宜上省略します)。

逆に、個人事業の利益が増えていって適用される税率が法人税の税率を超えてくると、法人化を検討する意味が出てきます。

個人事業の節税チェック項目

ここまで読んでいただいたとおり、個人事業の利益をできるだけ圧縮して、適用される税率が法人税の税率を下回るなら、わざわざ最初にお伝えした金銭的、精神的な負担がある法人化をする必要はありません。

なので、個人事業の利益を圧縮できる制度を網羅的に活用できているかがポイントになってきます。

ということで、個人事業でこれはやっておくべき、という節税策を列挙していきます。

どれも一般的なものなので、取りこぼしがないようにしていただければと。

①専従者給与等

少し難しい名前ですが、要は、家族に支払った給与(専従者給与)を経費にすることができます。

ここでいう専従者とは、個人事業主が夫であればその妻や15歳以上の子で、ちゃんとその年の6か月超その仕事に従事している家族が該当します。

なぜ節税になるかというと。

先ほど、個人事業の場合は本人への給与という概念がないということをお伝えしましたが、それと同じで本人の家族への給与という概念も基本的にはありません。

ですが、専従者給与等の制度を使えば、働いてくれている家族への給与を経費とすることで、個人事業の利益を圧縮することができるのです。

ただし、一定の届出や申告書への記載が必要になるので、実際の適用にあたってはそれらの要件を満たしているかの確認が大切です。

②小規模企業共済

小規模企業共済は、個人事業主や中小零細企業用の退職金制度です。

個人事業主は法人と違い、役員の概念がなく退職するというイベントがないので、その代わりに利用されています。

個人事業主が退職金の掛金を支払うとその分利益を圧縮できるので、節税になります。

掛金は年間84万円まで可能で、その金額内ならいつでも掛金の変更ができます。

かつ、受取時にも税の優遇を受けることができます。

ただし、一旦払った掛金を手元に戻すのは制約があるので、資金繰りが苦しい場合は慎重な検討が必要です。

③iDeCo

②と同じく退職のための掛金制度で、支払時に利益を圧縮できるので、節税になりますし、受取時にも同様に税の優遇を受けることができます。

ただ、掛金の限度は②と異なります。

個人事業主の場合は、月6.8万円まで、つまり年間81.6万円まで掛けることができます。

ちなみに、②と③は併用可能なので、最大、年間合計で165.6万円個人事業の利益を圧縮できます。

④経営セーフティ共済

経営セーフティ共済(正式名称:中小企業倒産防止共済制度)は、取引先が倒産した際に、連鎖倒産や経営難を防ぐための制度です。

具体的には、無担保・無保証人で、掛金の10倍まで借入れ可能で、掛金を支払うと必要経費になり利益を圧縮することができます。

掛金は最大月額20万円で、その範囲内であれば金額の調整は可能です。

ただし、②や③と同じく、解約して資金を戻すには制約があるので、資金繰りをよく考慮して加入の検討をする必要があります。

⑤必要経費になる家事関連費の按分

家事関連費とは、プライベート用と事業用の両方が混在している費用です。

たとえば個人事業主が自宅開業している場合は、自宅の賃貸料は家事関連費に該当します。

このうち、事業用に使っている部分で客観的に業務上必要だと認められるものは必要経費になりますので、漏れがないようにしましょう。

その他にも、水道光熱費、通信費、ガソリン代などが一般的な家事関連費になります。

ご自身に当てはまるものがないか確認しておきましょう。

まとめ

今回は、個人事業主が法人化する前にやっておきたい5つの節税策を紹介しました。

まだ対応していないもので、使えそうな制度があればぜひ適用を検討してみてください。

ちなみに、業法や取引先との関係で法人化がどうしても必要な場合は、節税以前の問題なので、今回の話に関係なく法人化が必要になるかと思います。

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