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公務員向けの記事を"ホントに公務員向け"とするポイント

私は現役公務員でありながら、ブログを中心に雑誌などで記事を書いたり、勉強会や研修でお話をしたりすることがあるのですが、そのほとんどが公務員を対象としたものです。

公務員を対象に何かを書いたり話したりする内容を考えるとき、私がとても大切にしているのが

それは本当に公務員向けの内容か?

と自分に問いかけることです。


この記事では、私がそんな風に公務員向けに書く・話す際に自分に問いかけている「それは本当に公務員に向けた内容か?」という問いに対して、

「これは本当に公務員に向けた内容だよ。なぜなら●●●だから」

と答える際の「●●●」の部分について伝えることに挑戦してみます。


◆内容が公務員向けになる3つの描写


さて、発信する情報が公務員向けのものとなるために、具体的にどんな点を気を付けたらいいのでしょうか。
私は、この3つの内容を積極的に描写することで、読み手である公務員が自分事と感じてくれることを目指しています。

①公務員に特徴的な制度や慣習の描写
②公務員が遭遇しがちな人や場面の描写
③公務員が感じてる感覚や心情の描写

①公務員に特徴的な制度や慣習の描写

例としては「人事異動」「昇任試験」「議会」「予算編成」「縦割り」「年功序列」など。じっくり考えたら他にもいろいろありそうですね。

「人事異動」であれば、3月末に残り1週間ほどで内示されて準備や気持ちの切り替えの時間が短いこと、異動してすぐに戦力になるために必死に仕事を覚えること、希望は叶わないことが多いこと、どうしてこの部署に異動することになったのか理由や意味を知ることができないこと。

そういったことは公務員として特徴的なので、書こうとしているテーマが顕在化する背景や原因などをこういった制度や慣習で描写すると、読み手が公務員であれば「そうそう! 私もそうなんです!」と思ってもらえそうです。

②公務員が遭遇しがちな人や場面の描写

人の例としては「民間からの転職組」「市民活動団体」「首長」「議員」「常連クレーマー」など、場面の例としては「窓口対応」「議会答弁作成」「住民説明会」「『税金泥棒』という罵倒」など。
それぞれの現場では様々な人と遭遇し、その業務ごとに様々な場面に出くわしますので、例を挙げだしたらキリがありません。

「住民説明会」であれば、行政側の一方的な説明と聴き手の雰囲気、住民と行政もしくは住民同士の対立、会場の確保や配布資料の作成などロジ周りの苦労、実態を知る担当者と調和を重んじる幹部による意識のズレなど。

公務員しか経験しない場面は材料に事欠きません。具体的な場面を描写することができれば、グッと公務員向けのないようになります。但し、「職務上知りえた秘密」をうっかり書いてしまわないよう注意が必要です。

③公務員が感じてる感覚や心情の描写

例としては「公益性を重んじる」「全体の奉仕者」「前例踏襲へのモヤモヤ」「民間の友人らとのギャップ」「私生活でも感じる窮屈さ」など、これもいろいろとありますよね。

「前例踏襲へのモヤモヤ」であれば、前例踏襲を打破する企画をどんな気持ちで考えたのか、上司にどんな態度や言葉で否定されたのか、そもそものルールを確認して根拠を提示するときにどんな気持ちになったのか、前例踏襲を求める上司と実態に合わせた運用を求める利用者の間で板ばさみになりどんな気持ちになったのか。

感覚や心情の描写は概ね「①の制度や慣習」「②の人や場面」とセットになります。具体的な①②に生々しい③を組み合わせることができると、グッと公務員が当事者性を感じられる内容になります。③を書くことを考えると、やはり実体験は強いですね。

◆そのうえで、もう一歩磨き上げる


実際に記事を書いたり勉強会の内容を考えたりするときには、①②③を組み合わせることが多いです。

①(制度・慣習)+③(感覚や心情)
②(人・場面)+③(感覚や心情)
①(制度・慣習)+②(人・場面)+③(感覚や心情)

私は論評を書くわけではないので、①だけとか②だけということはありません。ほとんど全ての記事で③と組み合わせて書くことになります。

このようにして書けば、概ね公務員向けの内容にはなっていると思いますが、ここでいい記事になるためにもう一歩磨き上げるなら、自分自身にさらにもう1つ「どのように知恵として一般化できるか?」と問いかけます。

例えば、パワハラ上司との付き合い方を人や場面(②)の観点と感覚や心情(③)の観点を盛り込みながら書くことができたなら、そこに読み手が解決策として現場に持ち込める知恵を伝えられているかどうかをチェックするということです。

異動してきて仕事がまだ覚え切れていない(②)のに課長がメッチャ高圧的に仕事の抜け漏れを指摘してくるので、指示された書類が仕上がっても提出するのが怖い(③)

こんなことを書くと、身に覚えのある若手公務員なら結構自分事として読んでもらえそうです。

でも、本当に伝えたいのは、こういう状況をどうやってうまく切り抜けるのか、ということですよね。それを若手公務員にも知ってもらって元気に働いてほしい、だからブログなどを書いているわけで。

それなら読み手が解決策として取り組みたくなる知恵を伝えられているかどうかをチェックするのは、きっと意味があることです。

たとえ、書き手自身の経験談が
「課長は午後3時に必ずコーヒーで小休止をするので、そのときに雑談で話しかけて、ついでに仕事のことも報告していたら、段々と書類のチェックも高圧的ではなくなってきた」
というものだとしても、読み手に「午後3時のコーヒータイムに課長に話しかけましょう」と言いたいわけではないはず。

本当に伝える価値があるのは、より一般化した知恵として「ホウレンソウ(報・連・相)+ザッソウ(雑談・相談)が大切だよね」「関係性を高めたければコミュニケーションは質より量ですよ」ということ。


一般化された知恵は公務員だけに役立つものではないかもしれませんが、それで問題ありません。
話題への導入や課題の設定の部分が公務員ならではの内容になっていることで、読み手である公務員が自分事として考え、実際に課題を解決できることが大切なのですから。


◆なぜ「公務員向けの内容」を考えるのか?


ここからはオマケ的な内容を付け加えます。

そもそも、どうして「公務員向けの内容」ということを意識する必要があるのでしょうか?

私自身は「公務員のキャリア自律の実現による、よりよい地域・社会づくり」という個人的な目標があるために、主に公務員を対象として情報発信などに取り組んでいます。
当然、公務員を対象として発信する情報は、それが公務員向けのものであると分かってもらうことが大切です。

より具体的に言えば、公務員にとって「私に向けて書かれたものかも!?」と思ってもらうことで、以下のような流れを期待しています。

★目にしたその情報に真面目に向き合う
★その情報を当事者として理解、解釈する
★具体的な行動をイメージしやすい

例えば、若手職員のために「パワハラ系上司から自分の心を守るたった3つのおまもり習慣(市役所職員ver.)」という記事を5月に書いた場合。実際に上司のパワハラに苦しめられている職員が、思わず「私のために書かれたような記事!」と思ってくれたらいいな、と考えて書きます。
そう思って読んでくれる読者は、きっとその記事を真面目に読んでくれるでしょう。
そして、その記事を自分事として「そうなんだよ、上司はいつもそういう言い方で詰めてくるんだよ」「そっか、だから私ばかり高圧的になるのかも」「こうやって回避してもいいんだ?」と理解し、自然と自分の行動までイメージしてくれる読者の割合も多くなるでしょう。

結果的に、「私のために書かれたような記事!」と思って読んでくれた人がその情報を使って何か行動を起こしてくれる可能性は大きくなる考えられます。

もちろん、タイトルだけで釣るのではなくて、実際の中身も自分事として読めるような内容であることが重要です。


様々な立場の人が公務員を対象とした情報発信をしていますが、皆さん、それぞれの立場で読み手である公務員の行動や考え方の変化を促そうとしているのではないでしょうか。
内容が軽めから重めのものまで様々で、促そうとする行動も様々でしょうが、何の影響も及ぼす意図がない情報発信というのは、それほど多くないはずです。

実際に行動するキッカケを作りたい
少しでも「私に向けて書かれたものかも!?」と思ってもらいたい

だから、公務員向けの内容になるよう心がけて、私は情報発信をしています。



幸せを感じながらイキイキと働く公務員が増えたら、その分だけ地域も社会も今よりもっとよくなるはず。
だから、どうかたくさんの書き手さんによって、公務員が日々抱える様々な課題解決に役立つ記事が書かれ、それが一人でも多くの公務員に読まれることを願っています。

私も楽しみながら、同じ公務員として働く仲間の皆さんを元気付け、勇気付けられるような記事を書いていきたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いします。

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