066.読書日記/「ザ・メイデンズ」と連想ゲーム的雑感
4月に読んだ「サイコセラピスト」のアレックス・マイクリーディーズの二作目、「ザ・メイデンズ ギリシャ悲劇の殺人」を読んだ。後半に「サイコセラピスト」の主人公、セオが登場するお遊び的な場面もあって、先に読んでおいてよかった。
※感想の中でストーリーに触れるところがあるかもなので、未読の方はご注意ください。
「ザ・メイデンズ」は、ねっそりした孤独なセラピストのマリアナが主人公。親の遺産を継いだ大金持ちで、最近ダンナを亡くしたばかりの寡婦である。ハッキリしない女だし、思い込みが強いし、ちょっとモテる?近くにいたらイライラしそう…とか思いながら読んでいたら、翻訳の人も訳者あとがきで「友達になりたいタイプではない」と書いていた。登場人物は「『いけ好かない人』が多く、それがクセになる」とも。
私は「サイコセラピスト」よりもヘンな緊張感がなく楽しく読んだ。物語の舞台は、マリアナの姪が現役学生でマリアナも卒業生であるケンブリッジ大学。学生寮や講堂、礼拝堂などカレッジの施設の場面が多く、登場人物も学生や教師、大学関連スタッフが多い。私はドラマ「刑事モース」シリーズをイメージしながら読んでたのだけど、よく考えたらあれはオックスフォードでした…雰囲気違うんかな?
著者の謝辞には、
アガサ・クリスティー、ドロシー・L・セイヤーズ、ナイオ・マーシュ、マーガレット・ミラー、マージェリー・アリンガム、ジョセフィン・テイ、P・D・ジェイムズ、ルース・レンデルへの感謝が述べられているとともに「本作品は彼女たちへのささやかなオマージュだ」とあった。
物語のはじめの方の回想シーンで、ナクソス島でバカンスを過ごすマリアナと「ABC殺人事件」を読む夫の記述があって、それはもう注目せざるを得ないよね、と思った。他、P・D・ジェイムズやルース・レンデルの本も昔によく読んだけど、どの辺がオマージュだったのかはさっぱりわからなかった。
脱線すると、「ナクソス島」と聞いて私がイメージするのは、「ナクソス島のアリアドネ」のアリアを歌うエディタ・グルべローヴァ。オペラにハマり出したころ、京都北山ホールのチケットをもらって行った、来日中のグルべローヴァのコンサートで度肝を抜かれましたw コロラトゥーラという語句を初めて知った。オペラは何度か劇場で見ましたが、いかんせんお金がかかる趣味。歌舞伎観劇と両立できずに離脱しました。CDは時々聴いたりします。
それから、列車の中でマリアナに一目惚れしたケンブリッジの生徒、フレッドが、マリアナを自室に招いた時に、バッハのゴールドベルグ変奏曲をかけたのは、「レクター博士やん!マリアナ、食われちまうで!」と見当違いな想像をしてしまった。ゴールドベルグ変奏曲はレクター博士と強く結びついてしまったので、何か意味のあるものとしか考えられなくなった。
マーラーの5番アダージェットは「ベニスに死す」で、「オンブラ・マイ・フ」は「細雪」、ゴールドベルグ変奏曲は「羊たちの沈黙」と刷り込まれてしまっているから仕方ないのだ。
…どんどん脱線してしまった。物語は中盤以降、少しダレる気がする。謎解き役のマリアナが物語を牽引するのに弱いので、お話がダイナミックに動いていかない。結末も、最後まで読者に気付かれないために隠していることが多いし、目くらましのエピソードも多い気がする。結末を聞かされて、素直に「わ〜!!騙されてた!!」とはならなかったです。それでも「サイコセラピスト」よりは楽しく読みました。
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