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医者に理解されようと思ってはいけない

医者と患者は永遠に理解し合えない生き物だと思ったほうがうまくいきそう。

 医者はケアラーではないしサポーターでもない。薬を出したり手術をしたりする人です。厳密に言うと治す人でもないと思う。
 ちなみにヒーラーとかセラピストとか言うとまたもっと違う話が出てくるみたいですね。その辺りは全く知らないのですが……。(https://relax-job.com/more/119892) 閑話休題。

 医者が患者を理解しようとしているかしていなかは関係なく、まず医者は患者を理解することができないだろうと思います。なぜなら多くの場合、医者は患者と同じ経験をすることがないからです。
 今回は私が精神病者なので精神科医を前提として書きますが、彼らは特にその特徴が顕著です。精神科医は精神病者の見る世界を基本的に見ることができません。なぜなら精神薬を使ったことがないから。
 精神薬を使用している医者、多くはないと思います。医者という激務の中で少しだけそういう薬に手を出した……という人はもしかしたらいるかもしれませんし、医者をしていて鬱を経験した、医者だが発達障害がある、という例もあるでしょうが、多くの場合そうではないのが現実だと思います。なぜなら精神病者の資質では医師という激務をこなすことはできないからです。職務の中で発症し、一度ドロップアウトしたらもどってくることも難しいでしょう。それができている人、つまり「患者としての経験がある医師」は貴重な存在です。
 薬の経験があるかないか、というのはとても大きな差異です。精神薬はよくドラッグと変わらないとか合法ドラッグだとか言われますが、つまりそれほど強く人間の体に影響を及ぼすものです。精神薬を使用したことのない人でも少し強めのかぜ薬を飲んでハイになったとか、臥せるほど酷かった症状がたちまち治ったという経験をしたことはあると思います。それほど薬というものは「強い」のです。
 そして精神病者はその薬を「日常的に服用している」のです。つまり常に薬漬けの状態。これがいかに健常者と違うか、というのは、自身が薬を飲んだ経験から推測すればさほど理解に難くないものでしょう。
 そして医者というのは基本的に健康でなければこなすことのできない職業でしょう。薬を使っている医者なんて悪い風聞だというのが今の社会です。当然だと思います。薬を使って集中力を上げたり処理能力を上げたりであればまだ受け入れられもするかもしれませんが、薬を飲まないと手首を切るとか常に死ぬことを考えているなんていったらまず普通ではないと思われます。まぁ普通じゃないですからね。だから薬を飲んでいるので。
 この「基本的に資本が優れている人」と「基本的に資本に恵まれていない人」は、例えるなら経済発展国に住む人間と発展途上国に住む人間くらいの違いがあると思います。常識や知識学力が異なるのは勿論、見えている世界はただ風景という意味を越えて全く異なっている。価値観は全く水平にはならない。どちらが優れているという言い方をするとこれは少し違ってくるかもしれないのですが、少なくとも職業選択の自由がある世界と三歳から家の仕事を手伝って住む場所を選ぶという発想を得ることもない環境の世界のどちらが希望があると思うかと問えば前者であると答えるのが現代人間社会でしょう。
 違いを表すための表現が大分長くなってしまいましたが、つまるところ医者と患者は「見えている世界も住んでいる世界も全く違うので、理解しようと思ってもできない」というのがここでの考えです。
 よく健康な人は病弱な人の気持ちを理解できなくて差別的になったり迫害じみた行動をしてしまうことがありますが、医者と患者という立場を与えられてもその溝は依然としてそこに存在し続けているのです。
 いや医者は患者の痛みを理解してこそだろう、治すためには理解が必要だろう、という意見はきっとあると思います。それが理想的な形でしょう。でも医者も人間です。どれだけ賢かろうと、人間である以上、「根本的に知り得ない世界のことを理解する」ことができると思いますか。できない、というのが正しく、また優しくはありませんか?

 年をとるにつれて人は「人間同士は完全には理解しあえないものだ」と思う人が増えていきます。相互理解は幻想であり、理想でしかないと割り切って生きていく人がほとんどです。でないと自分を保てないとでも言うように。きっとそれが健全で、あるがままの社会なのでしょうし、そうあるべきなのかもしれません。さておき、理解できない、理解しようとしないというのが健全に生きる社会の常識。理解できないからふとした時に相手を傷つけ、それを勝手に水に流し、傷つけられた方も腹の底で憎みながら笑って水に流していくのが日常。
 なので医者も平気で患者を傷つけます。ふとした時に患者の人間性を否定する医者が普通。コモン。それをしない医者はSR。でも私の先生は患者のことを理解しようと常に努めているしきちんと会話をしてくれる!という方、そのお医者様はSSRなので絶対掴んで離さないでください。まず出ません。
 つまるところ、医者と患者という立場であっても、そうでないフラットな人間関係の中でも、(家族や友人にかぎらず)「相手を傷つけず理解しようとする人間」は貴重な存在なのです。

 何故突然こんなことを……と自分でも思うのですが(今日特に通院したわけでもない)、毎度がんばって自分のことを伝えようとして理解されず、理解されないどころか人格を否定されて医者への不信感を募らせる人生をずっと送っているので、ふと思いついた時に吐き出して整理しておこうと思ったのかもしれません。
 薬で押さえつけないと毎日全くとりとめのない思考が繰り返されていくので、その中でふっと浮かんできたのが医者と患者の理解できなさについてだったというだけですね。
 明日はお昼ごはんを作りたいなぁ。おやすみなさい。

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