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『リルケ詩集;高安国世訳』〈岩波文庫〉①【855字】

1)『第一詩集』より.

・一見しただけで、認識に左右されないリルケの深い感性が感じられる、美しくも力強い詩。

【P-16】[l-9]私は事物がうたうのを聴くのが好きだ。
きみたちは事物にさわる。事物は凝固し沈黙する。
きみらにかかっては事物はみんか死んでしまう。

・〈事物をあるがままの姿で捉えること〉、これは事物との一体化であり、自然との一体化だ。
 事物の声に、愚直に耳を傾けることができれば、すべての事物が歌い、踊っていることがわかるだろう。

・『第一詩集』から、まさに真の詩人と呼ぶにふさわしい一作になっている。


2)『時祷詩集』より.

【P-25】[l-7]私は二つの音の間の休止です、
その二つは互いになかなか馴染もうとはしないのです、
「死」の音が高まろうとするからです──

・私たちは、死の音(鼓動、原子の振動)に支配されている。

【P-38】[l-1]あなたは変身する姿です、
常に孤独に運命の中からそびえ立つ姿です、
歓呼されることもなく、悲しまれることもなく、
原始の森のように名前もなく。

・あらゆる生命は、変化から逃れられない。いっときに留まることなく、孤独に道ゆく存在があなただ。

【P-39】[l-2]おお主よ、各人に「彼自身の死」を与えたまえ。
各人が愛と意味を、ぎりぎりの悩みとを経験した
そういう生から生まれる死を。

・いま、自身が限界だと信じ切っている自分自身を打ち壊す必要がある。


3)『形象詩集』より.

【P-52】[l-52]私たちはみな落ちる。ここにあるこの手も落ちる、
そうして他の人々を見るがいい。落下はすべてにある。

だがこの落下を限りなくおだやかに
その手に受け止めてる一人のひとがある。

・この受け止め手の存在を感じ取る必要がある。その「名もなき存在」は、自身の書き出すあらゆる言葉に宿っている────。


4)まとめ①

『第一詩集』『時祷詩集』『形象詩集』ともに、見えないものを感じ取ろうとするリルケの《勇気》と《努力》が感じられた。そしてその情熱が、知性により美しく練り上げられている、壮麗な詩集です────。


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