「影」
◇どこかネガティブなイメージがあり、忌避される事柄を連想させ、それは“死”を含め徹底して見ないようにされている。
それを「影」という言葉に置き換え様々な楽曲の歌詞に散りばめている。
「影に目がいってしまう」
インタビューでそう語ったのは米津玄師。
その言葉を聞いて、この米津玄師というアーティストが多くの人から支持され莫大な人気を誇っているかを理解できた。
世の中で隠されて無い事にされてしまった本来自然に存在する筈の「陰」を米津玄師を通して自分の中に在る事を聴き手は無意識に再発見する。
それならば聴き手は失ったと思っていた身体感覚を取り戻した様に感じるに違いない。
失っていた「影」は現代という渇いた大地に降る雨の如くに生き生きとした潤いを与えてくれる。
まさに時代が求めたアーティストと言って差し支えないだろう。
◇「パプリカ」という曲は子供が子供に向けた応援ソングだと知って驚いた。
その曲は当時有線で流れているのを流し聴いたぐらいだった。ただ流れてくると不思議と意識が向いてしまう曲だと思っていて、メロディも覚えてしまうものだから自然と口ずさんでしまう。
この曲からは、明るいとも暗いとも取れない少しメランコリックな雰囲気がある印象を持っていた。
また子供たちが歌っている事、米津玄師の作曲である事を知ったのもそれから何年もしてから。
「子供に頑張れと言わせたくない」
「子供を舐めない様にしよう」
本人のその言葉とパプリカが結びつき長年の謎が解け深く合点がいった。
◇「夢は叶う」「夢を持とう」
子供の夢なんてほとんど叶わないのだから、それを言う大人は無責任だと言い放つ。その通りだと思う。叶わないと知り自分に価値が無いと思ってしまったら子供は将来が暗く辛いだけのものに見えてしまうだろう。
だからこそ真っ直ぐ真正面から子供と向き合う事で出来たパプリカは子供のみならず大人の心も打つ事になったのだ。
これこそ大人としての子供に対する責任と態度と優しさであろう。
◇「睡眠を10時間はとる」
曲作りに煮詰まると寝ると言う。寝て起きると曲に対する感じ方が変わる。これ実は当たり前の事。
寝ている時も起きている時も「脳」は休まず活動している。睡眠は無意識だから休んでいると思っている人もあるかもしれないが、これは明確に間違い。
無意識だから意味が無い、そう思う人は簡単に「寝ずにやれ」と言う。睡眠に意味が無いと思っている。寝ている時も脳は活動しているのだから意味が無いわけない。
麻薬中毒者が大体にして精神障害を起こすのもこのせい。生物が寝ないで平気なわけないから脳が壊れてしまう。
意識的活動を全力で行う米津が長時間の睡眠を必要とするのは必然であろう。
つまり全力で生きている。
だからこそ人の心を打つ曲が次々と出来上がる。
影があるから光が存在する。
「影」と「光」を体現し続ける限り、米津玄師というアーティストは永遠だ。
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