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「黙」

◇リラックス。

お酒に求める事をアンケートした結果として最上位に上がったのがそれだったというのを、Xのポストで一瞬見た。だからアンケート対象とか母数とかは分からない。

分からないとしても、そういう需要なのか印象なのかは知らないが、その意識がどこかで高まっているという事自体は正しいと思う。

お酒はハイになるタイプではなくダウナー系なのは誰でも知っている。酔いが行くとこまで行けば寝てしまう。自分もそれで散々やらかした。


◇印象として「ハイになる系」だと思った人は、たぶん世代で分かれるんではなかろうか?「飲んで盛り上がる」というのが日常だった人はそうだと思う。特にバブル世代はそうなりそうな予感がする。

だからこのアンケート対象は若者だったのではないか?具体的には20代男女。「お酒離れ」と呼ばれている世代。

その意味では若者はお酒の本質を理解しているとも言える。飲んでリラックスを感じている。

これは若者は素直に身体で感じた事をそのまま理解したと現象と読む。


◇一方でお酒にまつわるCMは「盛り上がる系」だと思う。

これはもう慣習になってしまい惰性になっているとも考えられると思う。

飲んで「プハー!!」なんてCMを見た若者は「ウマソー!」とは思わず「ダサいおっさんかよ…」そう思っているに違いない。お寒いと思っている。

だから「若者の〇〇離れ」なんて乱暴に一括りに若者のせいにするのは大人が単にちゃんと考えてないだけではなかろうか?だから「エビデンスあるんすか?」が流行る。


◇そこで思ったのは特に売れ行き好調と言われるキリンビールの「晴れ風」

このCMは珍しく「盛り上がる系」ではない。加えて言えば「本音系」でもある。

味の言語表現とは実はとても難しいもので、これは根本的に味覚と言語野が脳内で繋がっていないせいでもある。

構造として味を言語化する事が難しい。その証拠に「バナナみたい」とか何かに例え表現する事が常になる。


◇このCMでは何人かのタレントが登場し各々がコメントをしている。おそらくこれは台本無しか、もしくは各々が考えた表現を各々がしている。

味の表現としても結構バラバラで正しくない事からもそれがわかる。例えば「キレ」なんて言っても本格的にお酒が好きな人でもない限り「キレ」が何を表すかなんて分からない。

好きかどうかの判断は“美味い”そう思うかどうかだけ。

五味だか余韻だか、そんな事は知らない。もっと本能的で単純に理解する。


◇若者は常に世界を素直に理解する。またそれが出来る、そう思う。

CMで大人が「美味い!」「ぷはー!」なんてテンション高くやっても「嘘くさ」で終わり。そんな下手な演技はお見通しなわけだ。

番組でタレントやレポーターが何かを食べてコメントしても「台本読んでるだけ」だから、おそらくそのコメントは若者の耳にすら入らないんじゃないかな?右から左に抜け、忘れる。


◇しかし“ただ一回だけ”ある番組内で業界の常識を打ち破った光景を観た事がある。

とある一品をシェフが複数のタレントに振る舞うと、皆がそれを啜ることに夢中になり全員が押し黙ってしまった。

テレビに置いて放送に「無音」があるというのは極めて異例だと思う。

“本当に美味しいものは人を黙らせる”

つまりそういう事。






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