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じいの葬祭25


 ふと気がつくと、窓の外は朝日の眩しい晴れやかな空となっていた。室内灯の光はチカチカと目に刺さり、手探りでサングラスを探す。
 枕元に転がっていたそれをかけて、ズキズキとした痛みと重怠さを持った頭を抱えながら、壁にかけられている時計を見やった。
 時刻は八時である。
 どうやら、あのまま眠り込んだらしい。
 隣のキッチンから作業音が聞こえるため、母は朝食の準備をしているようだ。
 私が最後に起きたらしく、ばあと弟はテレビを見ていた。
 「ハル、ばあ! 朝はフレンチトーストでいい?」
 バタバタと足音を立てながら顔を出した母は、私に気がつくと「起きたのね、体調は?」と声をかけてきた。
 ノロノロとテーブルに手を伸ばし、端に置かれている体温計を手に取る。
 「めちゃくちゃ悪い。多分熱ある」
 「測ったら教えてね」
 すると、弟が母の問いかけに答えた。
 「フレンチトーストやったー」
 「パンがあったからね。ばあは?」
 「それでいいよ。上等じゃや」
 そのとき、ピピピと体温計が音を鳴らす。脇から取りだせば、体温は37.8度と表示されていた。一般的に微熱ではなく、発熱とされる水準だろう。
 無言で母に渡せば、母は予想していた通りなのか、半笑いで返してきた。
 「え? 何度?」
 「37.8。熱ですな」
 「寝とかんねよ!」
 「いや、昼寝……二度寝あんましたくない派の人間なので」
 ばあの言葉に、気怠げな返答をした。
 「サクラ昔から寝ないからねー。横になっときよ」
 「うん」
 母の言葉に頷き、再び体を横に倒す。
 熱というものは、自覚するのとしないのとでは症状の感じ方が異なる。実際に数値で見てしまえば、余計怠くなってしまった。
 「なんか、サクラ災難すぎん?」
 「災難ってか、非常識と常識のぶつかり合いで容量オーバーしたというか……」
 何言ってんだ、私。
 自分の言っていることの意味が分からなくて、思ったより疲弊していることを自覚する。
 弟は何も分かっていないだろうに、「なるほどね」と訳知り顔をした。
 母はいつのまにかキッチンに戻っている。
 「もー……疲れた」
 はぁ、とため息を吐く。
 すると、弟はげんなりした表情で口を開いた。
 「何が怖いってあれよな、子供の前でお母さんを悪く言うし、泣いてるサクラを抱きしめるしで、意味わからんところよな」
 「気持ち悪くて吐きそうだし吐いたもん」
 私の言葉に、弟は態とらしい笑みを浮かべて「ドンマイ!」と言い、サムズアップを繰り出したのだった。

 
 

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