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萩尾望都版「王妃マルゴ」読後感想

意外ですが萩尾先生の描く長編歴史劇はこれがお初だったそうですね。
(キャサリン・オブ・ヴァロワを描いた短編作品はありました)

注)以下ネタバレあり

時は16世紀のフランス。
ルイ14世やマリー・アントワネットで超有名なブルボン朝のひとつ前、ヴァロア朝末期が物語の舞台です。

主人公のマルゴ(マルグリット・ド・ヴァロワ)は、ヴァロア朝最後の王女であり、ブルボン朝最初の王妃でもあります。時代に翻弄される彼女の運命を象徴していますね。(王位を継いだ兄達のうち誰かに嫡子があれば、おそらく彼女はフランス王妃になることはなかった)

さて、歴史大好きな私ですが、ヨーロッパ中世史はかなり苦手な部類に入りまして、高校の教科書に出てくるもの以上の知識はありませんでした。
案の定、物語序盤は大混乱。登場人物が多く、相関関係は複雑。(おまけにアンリとかカトリーヌとか同じ名前の人がやたらと出てきます💦)

ウイキペディアの他、歴史系解説サイトや動画で史実を調べまくり(その過程で致命的なネタバレもやらかしましたが😅)、行きつ戻りつようやく読了です。
漫画界の重鎮が8年もの月日かけて描き上げた大作だけに、私の頭の中は情報過多でパンパンに。

でもそうやって時代背景などの予備知識を入れた状態で2周目読むと、「あ、このコマはあの絵画のあの部分だったのね」とか「このシーンは後で出てくるアレを暗示してたのか」とか「神父(カトリック)と牧師(プロテスタント)がきちんと使い分けられてるな」などなど、初回とまた違った発見が出来て楽しいですね。

それに実はフランス宮廷史って、仰天エピソードがてんこ盛り。
作品に出てこないものも含めて史実を調べるのもすごく面白かったです。学生時代にインターネットがあったら、中世史ももっと楽しく勉強できただろうな〜。

そして時代描写はもちろんですが、さすが少女漫画の神様。齢70を超えられても女子の胸キュンポイントははずしませんね。
2巻でギーズにちょっと惚れかけましたw
(後半はギーズもまあまあ悪い人になりますが)

惜しむらくはラストに近くなるにつれストーリーが駆け足になってしまい、説明的になってしまっていること。
それと恋愛一直線で純粋なマルゴも魅力的なんですが、語学に堪能で学問にも造詣が深かったと言われている彼女の別の一面ももっと描いて欲しかったですね。

あと、史実には反するかもだけど、出来ればおじさんギーズは見たくなかったなと😅
ナヴァルも最初の頃は実直でイイ奴だったのに、最後は好色ジジイみたいにギャグっぽく描かれてたし。

それはさておき、最後のサパンとの再会シーンは泣けました。
主要人物が次々と死んでいく中、サパンがマルゴにとって一筋の明るい希望となって物語が終わったのは良かったです。

これ読んでから録画しておいた「漫勉」の萩尾先生の回を見るとまた違う楽しみ方ができました。

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