短文「飢え」

 満ち足りない。常に何かに不満を訴えているような人生だった。
 気に入らないことがあれば牙を剥く。そうして一時の爽快に溺れることで自身を保つ。しかし、決まってその数秒後には脊髄反射を悔いる反省会が開かれるのだ。
 居丈高になることは久しく無い。けれども腰を低くする気も毛頭無い。そんな中で、自らを満たすものを日夜探した。味気ない日々に抵抗するように。
 美食に浸った。肉欲に興じた。高級品で身を包んだ。過去の栄光を口癖にした。
 どれも、その場凌ぎの悦だった。自分との対話が必要だった。
 本当に必要としているものは何なのか。持続性のある薬は何なのか。歩いてきた道のりと向き合い、思案に耽った。
 答えは得られた。反面、期待は裏切られた。

 人。母数ではなく深度の深さ。場所。心安らげる、記憶の根差した空間。
 きっと、生きた証への信頼が、私を満足させうる。

ありがとうございます。 作家になるための糧にさせていただきます。必ず大成してみせます。後悔はさせません。