詩「匿命」

 私は外に出るのが好きだ。

 街に出るのが好きだ。
 人を見るのが好きだ。
 人間観察という稚拙な言葉を使うのもやぶさかでは無い。
 人混みに塗れるのが好きだ。
 様々な様相に左見右見するのが好きだ。

 楽しく歓喜に満ちた顔。
 怒りに震える顔。
 悲しさに打ちひしがれる顔。
 退屈に塗り潰される顔。
 それでも皆が生きている。
 私とは違う景色を見て活きている。

 多くの人の人生が交わってる感覚が好きだ。
 自分の人生の主人公は自分だ。
 けれど、私の人生の主役は私以外だ。
 それでいて、あらゆる人の人生の、端役以上の脇役でありたい。

 そうして万人の脳裏に寄生して生き永らえたい。
 自らを殺してでも一石を投じ、狂乱を眺めていたい。
 安全圏は腐敗を加速させると知っていた。

 聞かないでくれ。
 名前は、いつしか忘れてしまったから。

ありがとうございます。 作家になるための糧にさせていただきます。必ず大成してみせます。後悔はさせません。