短文「允許された桜色」
春と風には朗報だ。
もうすぐ、春が胸を張れる日がやってくる。
温暖化によって姿を薄めていく四季。二極化した暑さと寒さに隠れるように、春と秋は細々と在った。
瞬間的に過ぎ去るそれは貴重である。誰もが、希少性の高くなった日々を最大限味わおうと躍起になるのだ。
しかし、ただ尊ばれるというわけではなく、昨今は飛び交う花粉のせいで季節そのものの印象が悪くなっている節がある。
それでも春は美しい。
梅の終わりと桜の始まり。重なった日々は、バトンを渡すテイクオーバーゾーンのように映る。
暖かみのある風が衣服を軽く撫で、薄く、淡い色彩が天井を占める。薄まった青に、散りばめた白、鮮やかな緑。
慎ましやかな三月は人の心を落ち着かせる。同時に、次に訪れる月が齎す新たな幕開けに向けて、準備を万全へと導く。
何かを始めるも良し、人と出会い、仲を深めるも良し。
時折、雨だって降るだろう。けれどもそれは気分を落とすものでなく、汚れを落とし、新しい空を見渡すための余興。
風が何を運んできてくれるか、楽しみに私は今日も春を待つ。
ありがとうございます。 作家になるための糧にさせていただきます。必ず大成してみせます。後悔はさせません。