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【読書感想文】太宰治「人間失格」
私の太宰デビューは「人間失格」に決まった。
太宰と言えば鬱鬱とした文学、灰色の世界、社会不適合者。というぼんやりした認識だけ持って生きてきた。人間失格も「恥の多い生涯を、」の一文だけなんか知ってるけど、まア、なんか有名なやつだよね……くらいの認識。
しかし腐っても日本語話者として生まれ、日本語の読み書きに苦労しない人間として生きているのに太宰を読んだことがないってどういうことなんよ。
というわけで読んだ。
太宰とかその辺の文豪の作品は既に著作権切れしてるので青空文庫で読める。貧乏学生には優しい社会だ。
で、感想なんだけど、共感50%恐怖50%って感じ。
ストーリーを簡潔に説明するとすれば、社会不適合者の転落劇だ。起承転結というより転落転落って感じ。なにそれ。とにかく主人公は生まれた時からどん底にいて(客観的にはそんなことないけど)、そこから更に順当に真っ直ぐに落ちていって人間失格の烙印を押されるというわけだ。
で、さっき主人公のことを社会不適合者って呼んだけど、この表現は流石に陳腐すぎる。主人公は社会に適合できないんじゃない。社会を信じられないのだ。社会も、自分も、何もかも。信じられないから怖い。太宰は彼の感情を「人間恐怖」と表現している。
今の時代って社不、みたいな感じで社会に溶け込めない自分の心情をカジュアルにユーモアぽく表現することが多いけど、その内側にあるものって結局「人間恐怖」なんじゃないかと思うのだ。社会も他人も自分も怖くて仕方ないが、それを晒すことすら怖い。だから冗談めかして言葉のフィルターをかける。みんなそうじゃない? 少なくとも私はそう。
だから私は主人公の感情に50%は共感出来た。残りの50%は「ここまで行っちゃうの……」っていう1歩引いた恐怖。私は主人公ほど演じるのが上手くなかったから50%の共感で済んだのかな。
人が怖い。人が信じられない。だから陽気に振る舞う。人に笑われている間は恐怖に対する麻酔が効く。でも麻酔が切れる日は当然あって、その時に自殺を試みるか薬物に溺れるか酒に呑まれるかは運次第。私は主人公の生き様をそう読み取った。そしてそんな生き様は彼特有の性質によるものでなく、人間誰しもが持つなにかによるものなのだ、たぶん。
太宰が「人間失格」で描いたのはフィクションではなく、他人ではなく、わたしたち。
でもさ、どれだけ頑張って演じたって、生きたって、そんなことじゃ幸福になれないんだよ。それじゃ人間じゃないんだ。きっとこの主人公だって本当はありのままの演じていない己を愛して欲しくて仕方なかったんだ。
だから彼はみすぼらしい女や純真故に愚かすぎる女ばかり愛したんだから。
でもそんな彼の人生の最後を締め括るのは絶望の言葉。
「神様みたいないい子でした」
結局彼の本質を見通せる誰かなんて現れなくて、彼は人間失格の烙印を押される。最後の最後まで絶望がみっちりのいい話だった。
以下蛇足。
この話、とある人におすすめの本って言われて読んだんだけど、これをおすすめって表現できるの凄くない?
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