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はじめに:歯科医師・歯科衛生士の体の歪みや筋肉のこりは「職業病」

歯科診療は,背中を捻って丸め,首を傾けた姿勢を長時間続けているため,筋肉や関節に負担がかかり,体に“ゆがみ”や“こり”が生じています.
そんな歯科医療従事者の体の不調や悩みを解消するために,スキマ時間でできる即効ストレッチ&エクササイズを紹介した『診療前後の1分でできる! 歯科医師・歯科衛生士のための体のゆがみセルフコンディショニング』が9月1日に発刊します.
ぜひ,歯科医院の皆さまで実践し,「毎日,健康で快適に診療をするために」お役立てください!

田口直人/姿勢改善トレーナー,あん摩マッサージ指圧師


歯科医師・歯科衛生士の体の歪みや筋肉のこりは「職業病」

私は歯科医院と連携する治療院の院長として姿勢改善を専門にしている治療家です.
歯科で顎関節や嚙み合わせに問題があり,肩こりや骨格の歪みなど全身姿勢からの影響が疑われる患者さんに対し,歯科医師と連携して施術を行っています.
治療家として25年間,約15万人の職業の患者さんを診てきましたが,それぞれの職業の作業環境によって特徴的な筋肉の“こり”や体の歪みが見られることがわかってきました.その中でも,とりわけ日々の作業環境が筋肉・骨・関節といった運動器に大きく影響を及ぼしているのが,歯科医師・歯科衛生士の診療姿勢です.

歯科診療の多くの時間は,患者さんの右側から口腔内を覗き込むため,背中を捻って丸め,首を前に傾けた不自然な姿勢をとり続けています.さらに,その体勢で超精密な手作業を一日中行わなければなりません.
こういった歯科診療特有の作業姿勢を続けていれば,体が歪まないほうが不思議です.歯科医師・歯科衛生士の体の歪みや筋肉のこりは職業病と言えます.

1991年の文献になりますが,“歯科医師の主な自覚症状として「眼が疲れやすい」「肩がこる」「腰が痛い」「下肢・足がだるい」などが多く,「脊柱側弯症の傾向あり」が全体の約18%にみられた”との報告もあります.当時と比べて診療機器や環境は改善されましたが,これらの症状に悩まされている方は依然として少なくないのではないでしょうか.

関節・筋肉は運動をするよりも,長時間同じ姿勢を保つことのほうが負担がかかります.同じ姿勢をとり続けるということは,常に局所的な筋肉・関節を使い続けることになり,使い過ぎ(オーバーユース)となってしまうのです.
こういった生活習慣が長期間続くことで,筋肉と関節は硬化し,骨格の歪みも固定化し,全身の代謝も落ち,体の老化が進んでいくのです.デスクワークでのパソコン使用時の不良姿勢が慢性的な肩こりや腰痛の原因となっていることは多くの方が知っている事実ですが,その何倍も悪条件が揃っているのが歯科医師・歯科衛生士という職業なのです.
この不自然な姿勢による体の歪みやこりを防ぐ唯一の方法は,こまめに筋肉や関節の疲労をリセットするしかありません.

本書で紹介する「ほぐす」「伸ばす」「動かす」は診療所のみならず,いつでも,どこでも,行うことができます.たとえば,20頁にある“胸鎖乳突筋つまみ”や23頁にある“後頭下筋リリース”などは,湯船につかりながら行えますし,そのほうがリラックスした状態でできますので,効果的です.

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私は16年間,姿勢の専門家として歯科医師・歯科衛生士とともに仕事をしてきて,歯科診療現場の忙しさはよく理解しているつもりです.

そこで,多くの歯科医師・歯科衛生士が「自分の体のケアに時間を取れない……」という現状を考慮した上で,シンプルかつ短時間ででき,最も効果の高い,歯科医師・歯科衛生士の体に適したセルフコンディショニング法(ストレッチ・エクササイズ)をまとめました.

医療に携わる歯科医師・歯科衛生士だからこそ,自らの職業的問題を考え,日々の健康管理に役立てていただきたいと願っています.

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