《週末アート》 理屈を超えて真実への道を切り開いちゃったアンリ・ルソー
《週末アート》マガジン
いつもはデザインについて書いていますが、週末はアートの話。
アンリ・ルソー
名前:アンリ・ルソー(Henri Rousseau)(1844-1910)(没66歳)
国:フランス(フランス王国ーフランス共和国)
19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの素朴派(「ナイーヴ・アート(Naïve Art)」とも呼ばれる。画家を職業としない者が、正式な美術教育を受けぬまま、絵画を制作しているもの)の画家。
20数年間、パリ市の税関の職員を務め、仕事の余暇に絵を描いていた「日曜画家」であったことから「ドゥアニエ(税関吏)・ルソー」とも呼ばれていました。ただしそのの代表作の大部分はルソーが税関を退職した後の50歳代に描かれています。
遠近法が使えない、人物像を描けば足が地面から浮いてしまう、大きさが不自然、顔が変(特に赤ん坊が可愛くなさすぎる)という部分に注目すると笑ってしまう作品が多いのですが、「下手」と言い切れない魅力があります。
パブロ・ピカソ氏、カンディンスキー氏や藤田嗣治氏などにも強い影響を与えています。
それは、技法よりも「描きたい」というダイレクトで、独学ゆえのプリミティブな動機で描いた結果、「描きたいものを描く」結果となり、それは対象の本質に迫るものだったのではないかとわたしは思っています。その対象の本質を描くという抽象の姿勢として、たぶん他の画家の中で昇華し、キュビズム、ピュリズム、カンディンスキー氏やピート・モンドリアン氏らの抽象主義に萌芽に何らかの影響を及ぼしたのではないでしょうか。
本人がどこまで自覚していたのかは定かではないものの。アンリ・ルソー氏は、だからすごい。笑っちゃうのに心を掴まれます。そして、美しいんです。
代表作
『カーニバルの夜』(1886年)(42歳)
『自画像』(1890年)(46歳)
背景に見えるのは、パリ万国博覧会。パレットには二人の妻の名前(と好きだったけれど振られちゃった女性の名前が一度描かれて消された後も)が描かれています。
『眠るジプシー女』(1897年)(53歳)
『眠るジプシー女』(La Bohemienne endormie)
不毛の砂漠にライオンという特徴的な構図はアカデミック美術の画家ジャン=レオン・ジェローム( Jean-Léon Gérôme)氏の作品から影響を受けたもの。
ルソー氏が故郷の町ラバルに作品を寄贈しようとしたとき、彼は次のように解説しています。
しかし、寄贈は拒絶されてしまいます。当時、ルソー氏の作品を評価していたのは少数の批評家や画家のみだったため。
『飢えたライオン』(1905年)(61歳)
『夢』(1910)(66歳)
『ピエール・ロティの肖像』(1910)(66歳)
生涯
1844年 フランスのマイエンヌ県ラヴァルで錫細工師の家に生まれ、幼い頃からそこで働かされていました。高校の科目は平凡だったが、絵と音楽で賞を獲得しています。
高校卒業後、弁護士のもとで働きながら法律を学ぶも、小さな偽証を試み、軍隊に避難するのですが、有罪になりmす。1863年から4年間兵役についた。父の死により、ルソーは1868年(24歳)にパリに移り住み、公務員として未亡人となった母を支えます。
1868年(24歳) 大家の15歳の娘クレマンス・ボワタールと結婚し、6人の子供をもうける(生存者は1人のみ)。
1871年(27歳) パリのオクトロワの徴収官に任命され、パリに入る商品にかかる税金を徴収するようになりました。
1888年(44歳) 妻クレマンスを亡くす。
1893年(49歳) 職を引退し、その後は少ない年金をアルバイトや街頭でのヴァイオリン演奏などで補う。
1898年(54歳) ジョゼフィーヌ・ヌリーと結婚。
1910年3月(65歳) サロン・デ・アンデパンダンで最後の作品『夢』を発表。
1910年8月(66歳) 息子が亡くなったパリのネッケル病院に入院し、脚に壊疽があることが判明。手術の後、1910年9月2日に血栓で死亡。
まとめ
ルソー氏の作品は、生前はロートレック、ゴーギャン、ピカソ、アポリネール(詩人)など少数の理解者に評価されるだけでした。1908年にピカソが古物商でルソーの『女性の肖像』をわずか5フランで購入したのを機に、アポリネールらが中心となって、パリの「洗濯船」(バトー・ラヴォワール)で「アンリ・ルソーの夕べ」という会を開いていました。アポリネールは、ルソーの墓碑も書いています。
知れば知るほど、ルソーを好きになるのですが、その魅力がどういうものなのかうまく説明できないんです。しかしできることなら短いに彼の作品をおいておきたい、それくらい強く惹かれます。
ところでヘレン・フィッシャー博士の『愛はなぜ終わるのか』という科学で愛の寿命を解説した本があるのですが、その表紙がアンリ・ルソー氏の『詩人に霊感を与えるミューズ』というもので、詩人のアポリネール氏と彼の恋人マリー・ローランサンを描いたものでした。この本では愛の寿命が4〜5年だと説いているのですが、アポリネールとローランサンの関係もまさに5年で終わりました。奥深い表紙です。
参照
※1
https://en.wikipedia.org/wiki/Henri_Rousseau
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%82%BD%E3%83%BC
https://en.wikipedia.org/wiki/Henri_Rousseau
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