スカンジナビアン・デザインの哲学と代表的な15ブランド
ビジネスに使えるデザインの話
今回の話は、ちょいちょい出てくる「北欧家具」、「北欧デザイン」という言葉がどういうものなのか、その本質を知っておくと、なんとなくわかっているだけでは使えなかったこの概念を参照したり、利用したりできるようになるので、ビジネスに使える、と言えそうなデザインの話です。
スカンジナビアってどこ?
まずはスカンジナビアがどこで、どの国を含んだ地域なのか、おさらいしておきます。
スカンジナビア(スカンディナヴィア)(英語: Scandinavia)は、ヨーロッパ北部のスカンディナヴィア半島周辺の地域。
スカンジナビアの語源ははっきりしていませんが、その名が出てくる最古のものは、大プリニウス(Gaius Plinius Secundus/23-79)の『博物誌』(Naturalis historia)の中。
その名は、スコーネ(Skaane)に由来していると考えられています。「Scandi-」が「Skåne」(スウェーデンのスコーネ地方、スコーネ)を意味し、「-avia」はラテン語表記された言葉で「島」を意味しています。またゲルマン人の故地として知られており、東ゴート王国の研究家ヨルダネス(Jordanis/6世紀の東ローマ帝国の官僚)が「ゴート人は海の向こうのスカンザ(Scandza)から来た」と伝えています。古ノルド語で「暗い島」とも言われています。「暗い」はskad, 「島」はaujo(da:ø, sv:ö, no:øy)。
スカンジナビア諸国は、以下の三カ国。
スウェーデン
ノルウェー
デンマーク
スカンジナビアン・デザイン
スカンジナビアン・デザインとは、20世紀初頭に生まれ、1950年代以降になって北欧の5カ国で盛んになったデザイン運動です。北欧5カ国とは、
スウェーデン
ノルウェー
デンマーク
フィンランド
アイスランド
スカンジナビアン・デザインの特徴は、シンプル、ミニマル、機能性。スカンジナビアン・デザインは、家具、テキスタイル、陶器、家電、自動車などの工業デザインにまで広がっています。
1914年、デンマークの装飾芸術協会(Selskabet for Dekorativ Kunst)が雑誌『Skønvirke [da]』(「優美な仕事」)を創刊しました。そのタイトルは、アールヌーボーやユーゲントシュティルに対抗する、オブジェや建築におけるデンマークの新しい美術工芸様式の名称となっていきました。
1930年代からは、アルヴァ・アアルト(Alvar Aalto/建築、家具、テキスタイル)、アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen/椅子)、ボーゲ・モーエンセン(Borge Mogensen/家具)、ハンス・J・ウェグナー(Hans J. Wegner/椅子)、バーナー・パントン(Verner Panton /プラスチック椅子)、ポール・ヘニングセン(Poul Henningsen/ランプ)、マイヤ・イソラ(Maija Isola/プリントテキスタイル)などデザイナーが「北欧デザイン黄金時代(golden age of Scandinavian design)」を築く嚆矢となりました。
20世紀初頭、スカンジナビアのテキスタイル・アーティストはパイル地のラグで知られるようになり、第二次世界大戦後、色鮮やかなスカンジナビアのテキスタイルは西欧諸国全域で人気を博していきました。
1951年から1970年にかけて、優れたスカンジナビアのデザイナーに贈られたラニング賞は、スカンジナビアのデザインを商品として認知させ、そのプロフィールを定義するのに役立った[6]。
1954年、ブルックリン美術館で「スカンジナビアのデザイン」(Design in Scandinavia)展が開催され、アメリカで「スカンジナビアンモダン」の家具が流行します。バングアンドオルフセンなどの家電製品、ノキアなどの携帯電話、ボルボなどの自動車などの工業デザインにも応用されていきました。
スカンジナビアン・デザインの概念
冬が長く、あまつさえ太陽さえ登らない季節のある北欧では、家の中で長い間過ごさなくてはいけないため、できるだけ快適に過ごすという工夫を余儀なくされてきました。そのため、普遍性の高いデザインを求め、その結果、できるだけシンプルで飽きの来ないもの、そして機能的なものを追求してきました。
デンマークには、ヒュッゲ(Hygge)という言葉があり、「居心地の良い楽しい空間と時間」という概念を示しています。この快適さの追求が、世界中でスカンジナビアン・デザインが好まれる理由です。
スカンジナビアン・デザインの代表的なブランド
イケア(IKEA)(スウェーデン)
1943年に創業した家具の量販店。IKEAの名前は、創業者の名前、Ingvar Kamprad(イングヴァル・カンプラード)、 彼が育った農場の名称、Elmtaryd(エルムタリッド)、 彼の出身地の都市名、Agunnaryd(アグナリッド)の頭字語。
Design House Stockholm(デザインハウスストックホルム社)(スウェーデン)
1992年に設立されたDesign House Stockholm(デザインハウスストックホルム社)は、スウェーデンのデザイン制作・販売会社。
アルテック(Artek)(フィンランド)
アルテック(Artek)は、1935年に建築家のアルヴァ・アアルトとその妻アイノ・アアルト、ビジュアルアートプロモーターのメア・グーリクセン、美術史家のニルス・グスタフ・ハールによって設立されましたフィンランドの家具メーカーです。アートとテクノロジーの融合を目指し、フィンランド語ではない「Artek(アルテック)」という新語を採用しました。これは、バウハウスを中心とするインターナショナル・スタイル運動の思想汲んだデザイン思想を持っています。
ボルボ(Volvo)(スウェーデン)
1927年創業のスウェーデンのイエーテボリに本拠地を置く乗用車メーカー。
ノキア(Nokia)(フィンランド)
ノキアは、1865年、製紙会社として設立。1970年代より電気通信分野を主要事業とし、1980年代に携帯電話事業に進出したフィンランドの通信機器会社。
ルイス・ポールセン(Louis Poulsen)(デンマーク)
1874 年に設立されたデンマークの照明メーカー。アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)やポール・ヘニングセン(Poul Henningsen)が、ルイス・ポールセンの製品デザインをしています。
バングアンドオルフセン(Bang & Olufsen)(デンマーク)
1925年にPeter BangとSvend Olufsenによって設立されたデンマークの高級家電、オーディオ、テレビ、電話メーカー。
マリメッコ(Marimekko)(フィンランド)
マリメッコは、1951年にViljoとArmi Ratiaによってヘルシンキで設立されたフィンランドのテキスタイル、衣料、ホームファニシングのブランドです。マリメッコは、鮮やかな色彩のプリント生地とシンプルなスタイルで知られ、1960年代にファッション界に大きな影響を与えました。特に、ヴオッコ・ヌルメスニエミは大胆なストライプ、マイヤ・イソラのウニッコのケシなど大きな花柄のシンプルなプリントで、何百もの特徴ある柄を生み出し、マリメッコを世界的に有名なブランドにしました。
フリッツ・ハンセン(Fritz Hansen)(デンマーク)
フリッツ・ハンセンは、リパブリック・オブ・フリッツ・ハンセンとも呼ばれ、デンマークの家具ブランド。フリッツ・ハンセンでは、アルネ・ヤコブセン(1902-1971)、ポール・ケアホルム(1929-1980)、ハンス・J・ウェグナー(1914-2007)、ピート・ハイン(1905-1996)などのデザイナーが働いてきました。また、フリッツ・ハンセンは、今野弘道、セシリエ・マンズ、カスパー・サルトなどの現代家具建築家ともコラボレーションを行っています。
カールハンセンアンドサン(CARL HANSEN & SON)(デンマーク)
カールハンセンアンドサンは、デンマークのフュン島に本拠を置く家族経営の家具ブランド。
イッタラ(Iittala)(フィンランド)
1881年にガラス工房として創業したイッタラは、デザインオブジェ、テーブルウェア、調理器具を専門とするフィンランドのデザインブランドです。イッタラの公式i-logoは、1956年にティモ・サルパネヴァによってデザインされました。
アラビア(Arabia)(フィンランド)
アラビアは、1873年にRörstrandによって設立されたフィンランドの陶磁器ブランド。現在はFiskarsの傘下。
ロールストランド(Rörstrand)(スウェーデン)
ロールストランドは、1726年創業のスウェーデンを代表する磁器メーカー。当初はストックホルムのビルカスタンにあるカールベルグスカーレンで生産していました。
グスタフスベリ(Gustavsberg porcelain)(スウェーデン)
グスタフスベリは、1826年創業のスウェーデンの磁器ブランド。1990年代に解散し、グスタフスベリ地区の住民を落胆させながらも、職人たちはグスタフスベリの伝統に則った陶器や家庭用磁器の生産を続けています。
ロイヤルコペンハーゲン(Royal Copenhagen)(デンマーク)
1775年にデンマーク皇太后ジュリアン・マリーの保護のもとコペンハーゲンで設立された陶磁器メーカー。デンマークの3つの海峡を象徴する3本の波線を上に配したファクトリーマークで知られています。
参照
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