アーケードゲーム『MAPPY』とアール・デコをつなぐ書体“Broadway”
ファミコンゲーム『MAPPY』
『マッピー』というアーケードゲームが1983年(今からやく40年前)にナムコ(現・バンダイナムコエンターテインメント)よりリリースされました。1984似にはファミリーコンピュータ(いわゆるファミコン)に移植されています。どんなゲームかというと動画はこんな感じ。
このゲームのタイトルロゴに使われている書体はBroadway(ブロードウェイ)という書体です。1927年にアメリカ合衆国で誕生しました。この書体はデザインも時代もアール・デコを体現したものでした。
Brandwayという書体
Broadwayという書体は、1927年にモリス・フュラー・ベントン(Morris Fuller Benton)という方(天才)がデザインしました。ちなみにベントンがデザインしたのは大文字で、小文字は、あとからソル・ヘス(Sol Hess)という方がデザインしています。ヘスはこの書体のEngravedというバージョンもデザインしています。
モリス・フュラー・ベントンをどうして、天才と呼ぶのかというととても多作だからです。天才が概して多作です。そして彼がデザインした書体は今でもよく使われています。彼の作った書体はこちらでリストになっています。
Broadwayという書体は、非常にアール・デコ的なデザインです。アール・デコ(仏: Art Déco)とは、アール・ヌーヴォーの反動でアメリカ合衆国のニューヨークを中心にして始まった美術様式で、幾何学図形をモチーフにした記号的表現が特徴的で派手です。アール・デコを象徴する建築にニューヨークのクライスラービルがあります。
アール・デコやアール・ヌーヴォーにもっと詳しい話はこちらの記事に書いています。
ほかにもAtlasという書体がとてもアール・デコ的です。
アール・デコはジャズ・エイジというアメリカの20年代の文化と時代がかぶるため、この気配、美術様式、デザインはジャズ・エイジを体現するものとして疲れることがあります。例えば、バズ・ラーマン監督の『グレートギャッツビー』。タイトルに使われているのが、Atlasです。
話をBroadwayに戻しましょう。
Broadwayは”アメリカっぽい“
アール・デコという美術様式がニューヨークを中心として広まったこともあり、アール・デコ=アメリカ、ニューヨークっぽさがあります。アール・デコがフランス語なのにどうしてアメリカっぽいのかというとこのアール・デコという言葉は、1925年にパリで開催されたパリ万国装飾美術博覧会(Exposition internationale des arts décoratifs et industriels modernes)が通称「アール・デコ博」と呼ばれており、それが名前の由来です。アール・デコ博で花開き、ニューヨークで結実したものが多くありました。結実とは何かというと建造物で、先のクライスラービルもそうですが、それ以外にもエンパイア・ステート・ビルディングやウォルドルフ=アストリア、エセックスハウス、ラジオシティ・ミュージックホールなどニューヨークにある著名な建造物がアール・デコ様式です。そもそも書体名がブロードウェイですものね。
なぜ、ゲーム『Mappy』にBroadwayが使われたのか?
さして難しい話ではなく、観ての通り、キャラクターのマッピーが、マウスとポリスをかけ合わせたもので、そしてポリスが意味するものがアメリカ合衆国の警察官だから。バッチがや帽子がまさにそれを反映したものです。またロゴがカラフルに彩られているのも、アール・デコっぽくあり、かつニューヨークっぽい。幾何学的で派手なのがアール・デコ。たとえば、先にあげたラジオシティ・ミュージックホールはこのような出で立ち(エクステリア)。
どことなく、マッピーのロゴの気配に同じものを感じませんか?
まとめ
こんなふうに「なぜ、この書体を使っているのだろう?」と疑問に思って深堀りしてみるだけで、デザイナーや造り手が何を意図しているのかを推測したり、逆に自分が伝達する側にまわったときに、アイデアとして参照できたりして、おもしろいのではないでしょうか。そして掘っていくと国、歴史、美術などと大きく関わってきます。大恐慌前のお祭り騒ぎのにぎやかさが、この書体やアール・デコに含まれており、その時代の気配を切り取った意匠が、日本のゲームに施されたりします。
Youtubeでもデザインの解説をしています
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