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「特色」ってにゃに? ブランディングには必要な知識

ビジネスに使えるデザインの話

ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています


「特色」ってにゃに?

TOYOはあまり使わないなぁ。

印刷につかうインクには「特色」というものがあります。企業やブランドにとって、これが何かはちょっとしっておく必要があります。なぜ必要なのかというとブランディングを行う場合、重要なのが「印象の固定」と「そのコントロール」だからです。喩えて言うなら、マクドナルドの黄色のアーチのロゴ(シンボルマーク)がありますが、あの形が微妙に違っていたり、色が違っていたら、ちょっと不安になりますよね。

Mcdonald's Logo

いつも同じ形、同じ色だから安心してします。これを「同定」と言います。英語だとアイデンティファイ(identify)になりますが、意味するところは、それをそれと認識する、ということになります。恋人が朝起きたらちょっと顔が違っていたり、声が違っているとびっくりしますよね(笑)。いつもと同じ顔、声なので、その人だと認識できる、これが同定です。そして同定することで安心します。そして「特色(とくしょく)」とは、いつも同じ色であるために必要なインクです。そんな特色のまえに、「普通のインク」についてお話します。

「普通のインク」CMYK

CMYK

現在のインクジェットプリンタは、進化しており、インクの数が4つ以上のものが多くなってきました。が、基本4色です。その4色とは、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)そして黒(K)です。なぜこの4色なのかというとCMYを混ぜることでだいたいの色をなんとなく表現できるからです。つまりフルカラーを表現できます。これらの色の混ぜ具合で、緑でも紫でもオレンジでも表現できるんです。CMYを全部まぜると理屈では黒になるんですが、実際にはならないので、黒は黒のインクがあるのですが、それを示す記号の「K」は、黒(Kuro)のKでも、Blackの「K」でもなくって、Key-Plateの「K」です。Plateは版を意味してます。現在の印刷は各色を点で表現していて(昔のテレビも同じ)その掛け合わせで濃淡や色を表現しているのですが、明暗を表現するには黒色が必要になってきます。そんなこんなで黒がキーにある版となり、K-plateと呼ばれています。

余談ですが、景色の本質を3原色と濃淡と縦と横に集約して表現しようとしたアーティストがいます。その名は、ピート・モンドリアン。彼の代表的な作品『コンポジション』で使われるのも、青、黄、赤、そして黒です。

ピート・モンドリアン『コンポジション2 赤、青、黄』(1930年)
画像引用:Artpedia

もしピート・モンドリアンに興味がある場合は、こちらの記事で詳しく書いています。


なぜCMYKじゃいけないのか?

「CMYKでフルカラーを表現できるなら特色なんていらないじゃないのか?」そう疑問に思うかもしれません。CMYKは、微妙にフルカラーではない、というかちょいちょい弱点があるんです。どんな弱点があるのでしょうか。

(1)ちょっとブレる

じつは印刷のインクは絶対ではなく、インクの量や温度や印刷会社紙やなんやで微妙に変化します。そのため、こだわる必要があるとき、印刷の立ち会いを行って、現場で最終確認をすることもあります。いつも同じ色を出したい場合や出したい色が明確にある場合は、CMYKだけでは心もとない。うえに他の弱点もあります。

(2)ばっちりこれ!って色が出せない

たとえばCMYKではオレンジの発色が悪くなります。それだけではなくて、掛け合わせて作る色なので、微妙な色を明確には再現できません。またCMYKでは出せない色というものもあります。蛍光色や銀や金など。

蛍光色は蛍光色インクじゃないと出せない。(紙そのものはある)
画像引用:でざいんのひきだし製作日誌

冒頭の方でもブランディングには同定させる必要があるという話をしましたが、ブレとこれって色を再現できないというのは、ブランディングおいてはけっこう致命的な問題になります。たとえばコーポレートカラーの設定でちょっとくすんでいたり、場合によって色が微妙に違っていたら、かなり問題です。どう問題か?気持ち悪いんです。マクドナルドの黄色がドイツに行ったら、ちょっとオレンジだったら、安心して入られないかもしれません。いつもと違う地域を訪れて、吉野家で腹ごしらえをしようとしたら、看板の色が緑がかっていたら「やめておこう」と思うかもしれません。すくなくとも「ほんとうに吉野家かなぁ」という不安が去来するのではないでしょうか。 そんなわけで特色というインクは必要になってきます。

その他にある特色の使い方

蛍光ピンクを加えると肌色が色鮮やかになる
画像引用:コーシン出版

通常にCMYKに蛍光ピンクを加えると肌色が色鮮やかになります。このように特色をうまく使うことで、伝えたいイメージに近づけることが可能になることがあります。肌色に限らず、蛍光インクを掛け合わせることでCMYKだけでは難しい発色が可能になります。

「しかしイメージがつかない……」と思うかもしれません。こればっかりはやってみないとどんな掛け合わせがどんな色になるのかわかりません。ということで、かけ合わせた見本が本になって販売されています。


特色の種類

特色は、いくつかのインクのメーカーがあります。有名であり、対応している印刷会社が多いのは、DIC。ついでパントーン(Pantone)です。


DICカラーガイド

DICカラーガイド
画像引用:Netshop.Too

いろいろありますが、第1巻から第3巻まであれば、通常は事足ります。税抜で13,800円。購入はネットからでもできます。ちなみにDIC株式会社は日本国内の企業です。なので海外で印刷では色指定に使うのは難しい。

余談ですが、DICには、DIC川村美術館というところがあって、こちらも楽しいです。なかでもマーク・ロスコの常設が圧巻。(また行きたいなぁ。)千葉県佐倉市にあります。要予約。


Pantone

Pantoneのソリッドガイド・セット
画像引用:Pantone

Pantoneは、アメリカの会社で、こちらは色の幅がDICよりちょっと広い。たとえば蛍光色や金銀系も多い。しかし対応している国内印刷会社はDICより少ないです。ソリッドガイドセットで税込みで65,340円。

ほかにもありますが、(たとえばTOYOインキなど)とりあえず、この2種類を知っておくと良いでしょう。

蛍光色は食べ物のパッケージに使えない?

いちぶの印刷会社は、食べ物のパッケージに蛍光色を使うことを拒否するところがあります。これは昔、蛍光色は体に悪いという情報が広まったからです。しかし現在そんなことないので、印刷会社と確認のうえ、必要があれば使うとアドバンテージになるかもです。すでに使っているお菓子もあります。

Press Butter Sandでは封に蛍光オレンジを使っています。
画像引用:https://www.topawardsasia.com/winners/press-butter-sand


まとめ

印刷の細かい原理までは理解しなくても、以下のことを特色というものの存在とともに覚えておくとビジネスには役立ちます。

●ブランドや商品の色がブレると不安が増えて、信頼や安心感が減る
●色をブレさせないために特色というものがある
●特色にはDICとPantonemなどがある
●特色を使うと肌色などの再現がより鮮やかになる
●食品パッケージにも使える
●海外でも印刷するならPantoneのほうが良い


参照



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